芥川賞のすべて・のようなもの
第141回
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平成21年/2009年上半期
(平成21年/2009年7月15日決定発表/『文藝春秋』平成21年/2009年9月号選評掲載)
選考委員  山田詠美
女50歳
小川洋子
女47歳
石原慎太郎
男76歳
黒井千次
男77歳
高樹のぶ子
女63歳
川上弘美
女51歳
宮本輝
男62歳
村上龍
男57歳
池澤夏樹
男64歳
選評総行数  56 52 59 54 54 62 52 63 47
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
磯崎憲一郎 「終の住処」
108
男44歳
10 24 7 32 15 23 23 11 41
戌井昭人 「まずいスープ」
146
男37歳
8 10 10 7 0 13 19 15 0
シリン・ネザマフィ 「白い紙」
108
女29歳
8 8 0 4 0 9 9 19 6
藤野可織 「いけにえ」
117
女29歳
10 10 0 4 0 12 0 18 0
松波太郎 「よもぎ学園高等学校蹴球部」
142
男27歳
9 10 0 4 0 8 0 0 0
本谷有希子 「あの子の考えることは変」
180
女30歳
11 10 0 8 16 9 20 0 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年9月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
山田詠美女50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「選評」 総行数56 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
10 「過去が、まるでゾンビのように立ち上がり、絡まり、蠢いて、主人公を終の住処に追い詰めて行くようで恐しかった。けれど、その合間合間の太陽の描写が綺麗な息つぎになっている。大人の企みの交錯するこの作品以外に私の推すべきものはなかった。」
戌井昭人
男37歳
8 「いい味出してます。しかし、冗漫。途中で飽きちゃった。」
シリン・ネザマフィ
女29歳
8 「未来ある若者が、お国のために戦争に志願せざるを得ない悲劇は、語り継がれるべきでしょうけど、文章がたどたどし過ぎて、既視感ゼロ。故に説得力もゼロ。」
藤野可織
女29歳
10 「読んでいる内に、こちらまで美術館の片隅から動けなくなりそうな重苦しい空気に満ちている。悪魔が登場するまでが長過ぎて、その重苦しさに息が詰まりそう。」
松波太郎
男27歳
9 「サッカーがこんなにもつまらないスポーツだとは知りませんでした。ごめんなさい。」
本谷有希子
女30歳
11 「目で読むおもしろさではなく、耳で聞くおもしろさのような気がする。」「日田の気持の悪さは秀逸だが、境界例の不思議ちゃんの話には、もう辟易。」
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他の選考委員
小川洋子
石原慎太郎
黒井千次
高樹のぶ子
川上弘美
宮本輝
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
小川洋子女47歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人格の拒否 総行数52 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
24 「あらゆる出来事は、まるであらかじめ定められていたかのように起こるべくして起こる。人間の人格など何の役にも立たない。その当然の摂理が描かれると、こんなにも恐ろしいものなのか、と立ちすくむ思いがする。」
戌井昭人
男37歳
10 「(引用者注:「よもぎ学園高等学校蹴球部」「あの子の考えることは変」と共に)私にとっては少々にぎやかすぎた。自分はこんなにも普通でない人々を描けるのだ、と声高に叫ばれると、それだけで白けてしまう。」
シリン・ネザマフィ
女29歳
8 「騒々しい候補作が多い中で、『白い紙』に流れる静けさは救いだった。」「紅茶に添えられたナツメヤシの種の描写が忘れられない。」
藤野可織
女29歳
10 「久子さんは全候補作の登場人物の中で最も印象深い存在だった。」「悪魔や高野豆腐など持ち出さなくても、彼女の魅力は十分伝わったのに、と残念でならない。」
松波太郎
男27歳
10 「(引用者注:「まずいスープ」「あの子の考えることは変」と共に)私にとっては少々にぎやかすぎた。自分はこんなにも普通でない人々を描けるのだ、と声高に叫ばれると、それだけで白けてしまう。」
本谷有希子
女30歳
10 「(引用者注:「まずいスープ」「よもぎ学園高等学校蹴球部」と共に)私にとっては少々にぎやかすぎた。自分はこんなにも普通でない人々を描けるのだ、と声高に叫ばれると、それだけで白けてしまう。」
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他の選考委員
山田詠美
石原慎太郎
黒井千次
高樹のぶ子
川上弘美
宮本輝
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
石原慎太郎男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
未知の戦慄をもとめてはいるが 総行数59 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
7 「結婚という人間の人生のある意味での虚構の空しさとアンニュイを描いているのだろうが的が定まらぬ印象を否めない。」
戌井昭人
男37歳
10 「一番面白く読んだ。」「一種のニヒリズムに裏打ちされた、ひっちゃかめっちゃかな群像は、実はそれぞれ芯のある人間たちである種の存在感もある。それにしても題名が安易で良くない。」
シリン・ネザマフィ
女29歳
0  
藤野可織
女29歳
0  
松波太郎
男27歳
0  
本谷有希子
女30歳
0  
  「文学賞もやたらに増えはしたが、新人作家なるものがどれほど、狂おしいほどの衝動で小説という自己表現に赴いているかはかなり怪しい気がする。」「それは、作家の登竜門ともいわれている芥川賞の候補作品なるものが、年ごとに駄作の羅列に終わっているのを見てもいえそうだ。」
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他の選考委員
山田詠美
小川洋子
黒井千次
高樹のぶ子
川上弘美
宮本輝
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
黒井千次男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
堰止められた時間 総行数54 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
32 「流れる時間ではなく、堰止められた時間が層をなして重なっている。」「自分には知らされていないものを探り、手の届かぬものに向けて懸命に手を伸ばしながら時間の層を登っていく主人公の姿が、黒い影を曳いて目に残る。」
戌井昭人
男37歳
7 「形の崩れてしまった家族がなぜか崩壊せずに低空を飛行しつつ、逆に絶対的家族像とでもいったものを掴み出そうとする気配に興味を引かれた。」
シリン・ネザマフィ
女29歳
4 「お話の段階にとどまって現代小説にはまだ遠く、」
藤野可織
女29歳
4 「(引用者注:「よもぎ学園高等学校蹴球部」と共に)作者の意図が鮮明に伝わって来ない不満が残った。」
松波太郎
男27歳
4 「(引用者注:「いけにえ」と共に)作者の意図が鮮明に伝わって来ない不満が残った。」
本谷有希子
女30歳
8 「同居する二人の若い女性が周囲にあるものに対して能動的、積極的、攻撃的に挑む姿勢に好感を抱いたが、その生理的スピードの底に残るものをもう少し見せて欲しいと感じた。」
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他の選考委員
山田詠美
小川洋子
石原慎太郎
高樹のぶ子
川上弘美
宮本輝
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
高樹のぶ子女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「記憶」 総行数54 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
15 「主人公がどんな男かが読後の印象として薄い。何十年を語り尽くした主人公が見えない。空白なら其れもよし、空白を見せて欲しい。」
戌井昭人
男37歳
0  
シリン・ネザマフィ
女29歳
0  
藤野可織
女29歳
0  
松波太郎
男27歳
0  
本谷有希子
女30歳
16 「(引用者注:候補作の中で)一番はっきりと人間に触れることが出来た」「ただこれは受賞作には押せなかった。会話が反射神経で書かれていて文学の会話というより、舞台上の台詞に近い。」「非(原文傍点)社会性でなく、反(原文傍点)や超(原文傍点)がつけば、この悪臭に満ちた女性たちが、文学としての魅力を持ったのに残念。」
  「小説が書かれる目的は、「人間に触れる」ことだと思う。」「読み終えて人間に触れた実感が無いか希薄なときは、作品そのものが記憶に残らない。」「読者に記憶されるには「説明を越える、あるいは説明を必要としないシーン」が必要になる。」
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他の選考委員
山田詠美
小川洋子
石原慎太郎
黒井千次
川上弘美
宮本輝
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
川上弘美女51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
時間 総行数62 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
23 「自分の記憶を、もしも巻き戻して見ようとするならば、このような状態になるのかもしれないと、読んでいる間じゅう思っていました。」「「物語」を作りあげるという利便に与しないこの作者の書いた「物語」を、いつか読んでみたいものだと思いました。」「(引用者注:「まずいスープ」と共に)最終的に推しました。」
戌井昭人
男37歳
13 「こまかで具体的な事々の書きぶり、すなわち選ぶ言葉やリズムが、とても好きでした。好き、の先に、さらに手ごわい何ものかがあればと、惜しみます。」「(引用者注:「終の住処」と共に)最終的に推しました。」
シリン・ネザマフィ
女29歳
9 「主人公たちの周囲の人たちにも、ちゃんと影ぼうしがある感じだった。「私」と「ハサン」だけに、その影ぼうしがないようで、それはたぶん「物語」にその二人が奉仕してしまっているからだと思いました。」
藤野可織
女29歳
12 「「白いバラ」の扱いが、いい。そして主人公の久子の、「ふてぶてしい虚無」とも言うべき内実。書けそうで存外書くことが難しいことを表現していると思いました。」「「(引用者注:「終の住処」「まずいスープ」と共に)殊に惹かれ、」
松波太郎
男27歳
8 「何かを試みようとしていた。けれどその試みは、小説という表現でおこなうのが最も適しているものなのか。という疑問は残りましたが、試みている姿を見るのは嬉しいことです。」
本谷有希子
女30歳
9 「活力ある書き手だと思います。ただ、主人公二人の「変」さがあまりに堅固なような気がするのです。その堅固さを維持するために、どこかに無理がいっているという印象を持ってしまいました。」
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他の選考委員
山田詠美
小川洋子
石原慎太郎
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
宮本輝男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
どう化けるか 総行数52 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
23 「観念というよりも屁理屈に近い主人公の思考はまことに得手勝手で、鼻もちならないペダンチストここにあり、といった反発すら感じたが、磯崎氏はこれから一皮も二皮も剥ける可能性を感じさせる。」「私は、磯崎氏の今回の候補作での受賞には賛成できなかったが、受賞によって無用な鎧兜が脱げたときの化け方が楽しみな書き手だと思う。」
戌井昭人
男37歳
19 「(引用者注:「あの子の考えることは変」と共に)他の候補作より少し高い点をつけた。」「文字どおり面白く小説が進んでいく。しかし、それだけなのだ。」「しかし、(引用者中略)戌井氏の技量も、どこにでも転がっているものではなく、新しい書き手としての跳躍力は横溢している。」
シリン・ネザマフィ
女29歳
9 「仕方のないこととはいえ、やはり小説の文章がぎごちなくて、作品そのものも拙い。」
藤野可織
女29歳
0  
松波太郎
男27歳
0  
本谷有希子
女30歳
20 「(引用者注:「まずいスープ」と共に)他の候補作より少し高い点をつけた。」「文字どおり面白く小説が進んでいく。しかし、それだけなのだ。」「しかし、本谷氏独特の才も、(引用者中略)どこにでも転がっているものではなく、新しい書き手としての跳躍力は横溢している。」
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他の選考委員
山田詠美
小川洋子
石原慎太郎
黒井千次
高樹のぶ子
川上弘美
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
村上龍男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数63 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
11 「感情移入できなかった。現代を知的に象徴しているかのように見えるが、作者の意図や計算が透けて見えて、わたしはいくつかの死語となった言葉を連想しただけだった。ペダンチック、ハイブロウといった、今となってはジョークとしか思えない死語である。」
戌井昭人
男37歳
15 「巧みな作品で、作者はきわどい題材を上手に処理する技術と、おそらくきわどい体験も、持っている。だが惜しいことに、その技術が、作品からリアルな恐ろしさを奪ってしまっている。」
シリン・ネザマフィ
女29歳
19 「イラン人が日本語で小説を書こうが、ペルシャ語で書こうが、日本人が日本語で書こうが、つまらないものはつまらない。今は外国人が日本語で小説を書くことが珍しいからメディアは話題にするが、今後は当たり前のことになっていって、話題にもならなくなる。だから、外国人が日本語で小説を書くことの意味や意義を加味して選考するべきではない。」
藤野可織
女29歳
18 「わたしは(引用者中略)推した。」「地元の薄幸な画家の常設展示室で、ある何かを待ちながらたたずむ初老の女性は、結果として現代を象徴していると思えた。」「自覚的に、また無意識のうちに、正確で抑制された情景および心理描写を武器に、ある情報を物語に織り込むことができた場合に限って、作品は結果的に現代を象徴するものとなる。」
松波太郎
男27歳
0  
本谷有希子
女30歳
0  
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他の選考委員
山田詠美
小川洋子
石原慎太郎
黒井千次
高樹のぶ子
川上弘美
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
池澤夏樹男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
違う種類の文法 総行数47 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
磯崎憲一郎
男44歳
41 「小説には文法がある。敢えてそれを変えてみると、うまくいけばおもしろい結果が得られる。(引用者中略)その好例である。」「普通、小説の主人公は世界に向かって働きかけるものだが、『終の住処』では世界の方が彼の前でパフォーマンスを繰り広げる。」「この変わった文法の背後にガルシア=マルケスが隠れているのは間違いない。」
戌井昭人
男37歳
0  
シリン・ネザマフィ
女29歳
6 「技術的に未熟だが、これが日本語で書かれたことには文学とは異なる文化論の観点から意味がある。」
藤野可織
女29歳
0  
松波太郎
男27歳
0  
本谷有希子
女30歳
0  
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他の選考委員
山田詠美
小川洋子
石原慎太郎
黒井千次
高樹のぶ子
川上弘美
宮本輝
村上龍
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受賞者・作品
磯崎憲一郎男44歳×各選考委員 
「終の住処」
短篇 108
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山田詠美
女50歳
10 「過去が、まるでゾンビのように立ち上がり、絡まり、蠢いて、主人公を終の住処に追い詰めて行くようで恐しかった。けれど、その合間合間の太陽の描写が綺麗な息つぎになっている。大人の企みの交錯するこの作品以外に私の推すべきものはなかった。」
小川洋子
女47歳
24 「あらゆる出来事は、まるであらかじめ定められていたかのように起こるべくして起こる。人間の人格など何の役にも立たない。その当然の摂理が描かれると、こんなにも恐ろしいものなのか、と立ちすくむ思いがする。」
石原慎太郎
男76歳
7 「結婚という人間の人生のある意味での虚構の空しさとアンニュイを描いているのだろうが的が定まらぬ印象を否めない。」
黒井千次
男77歳
32 「流れる時間ではなく、堰止められた時間が層をなして重なっている。」「自分には知らされていないものを探り、手の届かぬものに向けて懸命に手を伸ばしながら時間の層を登っていく主人公の姿が、黒い影を曳いて目に残る。」
高樹のぶ子
女63歳
15 「主人公がどんな男かが読後の印象として薄い。何十年を語り尽くした主人公が見えない。空白なら其れもよし、空白を見せて欲しい。」
川上弘美
女51歳
23 「自分の記憶を、もしも巻き戻して見ようとするならば、このような状態になるのかもしれないと、読んでいる間じゅう思っていました。」「「物語」を作りあげるという利便に与しないこの作者の書いた「物語」を、いつか読んでみたいものだと思いました。」「(引用者注:「まずいスープ」と共に)最終的に推しました。」
宮本輝
男62歳
23 「観念というよりも屁理屈に近い主人公の思考はまことに得手勝手で、鼻もちならないペダンチストここにあり、といった反発すら感じたが、磯崎氏はこれから一皮も二皮も剥ける可能性を感じさせる。」「私は、磯崎氏の今回の候補作での受賞には賛成できなかったが、受賞によって無用な鎧兜が脱げたときの化け方が楽しみな書き手だと思う。」
村上龍
男57歳
11 「感情移入できなかった。現代を知的に象徴しているかのように見えるが、作者の意図や計算が透けて見えて、わたしはいくつかの死語となった言葉を連想しただけだった。ペダンチック、ハイブロウといった、今となってはジョークとしか思えない死語である。」
池澤夏樹
男64歳
41 「小説には文法がある。敢えてそれを変えてみると、うまくいけばおもしろい結果が得られる。(引用者中略)その好例である。」「普通、小説の主人公は世界に向かって働きかけるものだが、『終の住処』では世界の方が彼の前でパフォーマンスを繰り広げる。」「この変わった文法の背後にガルシア=マルケスが隠れているのは間違いない。」
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他の候補作
戌井昭人
「まずいスープ」
シリン・ネザマフィ
「白い紙」
藤野可織
「いけにえ」
松波太郎
「よもぎ学園高等学校蹴球部」
本谷有希子
「あの子の考えることは変」
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候補者・作品
戌井昭人男37歳×各選考委員 
「まずいスープ」
中篇 146
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山田詠美
女50歳
8 「いい味出してます。しかし、冗漫。途中で飽きちゃった。」
小川洋子
女47歳
10 「(引用者注:「よもぎ学園高等学校蹴球部」「あの子の考えることは変」と共に)私にとっては少々にぎやかすぎた。自分はこんなにも普通でない人々を描けるのだ、と声高に叫ばれると、それだけで白けてしまう。」
石原慎太郎
男76歳
10 「一番面白く読んだ。」「一種のニヒリズムに裏打ちされた、ひっちゃかめっちゃかな群像は、実はそれぞれ芯のある人間たちである種の存在感もある。それにしても題名が安易で良くない。」
黒井千次
男77歳
7 「形の崩れてしまった家族がなぜか崩壊せずに低空を飛行しつつ、逆に絶対的家族像とでもいったものを掴み出そうとする気配に興味を引かれた。」
高樹のぶ子
女63歳
0  
川上弘美
女51歳
13 「こまかで具体的な事々の書きぶり、すなわち選ぶ言葉やリズムが、とても好きでした。好き、の先に、さらに手ごわい何ものかがあればと、惜しみます。」「(引用者注:「終の住処」と共に)最終的に推しました。」
宮本輝
男62歳
19 「(引用者注:「あの子の考えることは変」と共に)他の候補作より少し高い点をつけた。」「文字どおり面白く小説が進んでいく。しかし、それだけなのだ。」「しかし、(引用者中略)戌井氏の技量も、どこにでも転がっているものではなく、新しい書き手としての跳躍力は横溢している。」
村上龍
男57歳
15 「巧みな作品で、作者はきわどい題材を上手に処理する技術と、おそらくきわどい体験も、持っている。だが惜しいことに、その技術が、作品からリアルな恐ろしさを奪ってしまっている。」
池澤夏樹
男64歳
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他の候補作
磯崎憲一郎
「終の住処」
シリン・ネザマフィ
「白い紙」
藤野可織
「いけにえ」
松波太郎
「よもぎ学園高等学校蹴球部」
本谷有希子
「あの子の考えることは変」
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候補者・作品
シリン・ネザマフィ女29歳×各選考委員 
「白い紙」
短篇 108
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山田詠美
女50歳
8 「未来ある若者が、お国のために戦争に志願せざるを得ない悲劇は、語り継がれるべきでしょうけど、文章がたどたどし過ぎて、既視感ゼロ。故に説得力もゼロ。」
小川洋子
女47歳
8 「騒々しい候補作が多い中で、『白い紙』に流れる静けさは救いだった。」「紅茶に添えられたナツメヤシの種の描写が忘れられない。」
石原慎太郎
男76歳
0  
黒井千次
男77歳
4 「お話の段階にとどまって現代小説にはまだ遠く、」
高樹のぶ子
女63歳
0  
川上弘美
女51歳
9 「主人公たちの周囲の人たちにも、ちゃんと影ぼうしがある感じだった。「私」と「ハサン」だけに、その影ぼうしがないようで、それはたぶん「物語」にその二人が奉仕してしまっているからだと思いました。」
宮本輝
男62歳
9 「仕方のないこととはいえ、やはり小説の文章がぎごちなくて、作品そのものも拙い。」
村上龍
男57歳
19 「イラン人が日本語で小説を書こうが、ペルシャ語で書こうが、日本人が日本語で書こうが、つまらないものはつまらない。今は外国人が日本語で小説を書くことが珍しいからメディアは話題にするが、今後は当たり前のことになっていって、話題にもならなくなる。だから、外国人が日本語で小説を書くことの意味や意義を加味して選考するべきではない。」
池澤夏樹
男64歳
6 「技術的に未熟だが、これが日本語で書かれたことには文学とは異なる文化論の観点から意味がある。」
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他の候補作
磯崎憲一郎
「終の住処」
戌井昭人
「まずいスープ」
藤野可織
「いけにえ」
松波太郎
「よもぎ学園高等学校蹴球部」
本谷有希子
「あの子の考えることは変」
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候補者・作品
藤野可織女29歳×各選考委員 
「いけにえ」
短篇 117
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山田詠美
女50歳
10 「読んでいる内に、こちらまで美術館の片隅から動けなくなりそうな重苦しい空気に満ちている。悪魔が登場するまでが長過ぎて、その重苦しさに息が詰まりそう。」
小川洋子
女47歳
10 「久子さんは全候補作の登場人物の中で最も印象深い存在だった。」「悪魔や高野豆腐など持ち出さなくても、彼女の魅力は十分伝わったのに、と残念でならない。」
石原慎太郎
男76歳
0  
黒井千次
男77歳
4 「(引用者注:「よもぎ学園高等学校蹴球部」と共に)作者の意図が鮮明に伝わって来ない不満が残った。」
高樹のぶ子
女63歳
0  
川上弘美
女51歳
12 「「白いバラ」の扱いが、いい。そして主人公の久子の、「ふてぶてしい虚無」とも言うべき内実。書けそうで存外書くことが難しいことを表現していると思いました。」「「(引用者注:「終の住処」「まずいスープ」と共に)殊に惹かれ、」
宮本輝
男62歳
0  
村上龍
男57歳
18 「わたしは(引用者中略)推した。」「地元の薄幸な画家の常設展示室で、ある何かを待ちながらたたずむ初老の女性は、結果として現代を象徴していると思えた。」「自覚的に、また無意識のうちに、正確で抑制された情景および心理描写を武器に、ある情報を物語に織り込むことができた場合に限って、作品は結果的に現代を象徴するものとなる。」
池澤夏樹
男64歳
0  
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他の候補作
磯崎憲一郎
「終の住処」
戌井昭人
「まずいスープ」
シリン・ネザマフィ
「白い紙」
松波太郎
「よもぎ学園高等学校蹴球部」
本谷有希子
「あの子の考えることは変」
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候補者・作品
松波太郎男27歳×各選考委員 
「よもぎ学園高等学校蹴球部」
短篇 142
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山田詠美
女50歳
9 「サッカーがこんなにもつまらないスポーツだとは知りませんでした。ごめんなさい。」
小川洋子
女47歳
10 「(引用者注:「まずいスープ」「あの子の考えることは変」と共に)私にとっては少々にぎやかすぎた。自分はこんなにも普通でない人々を描けるのだ、と声高に叫ばれると、それだけで白けてしまう。」
石原慎太郎
男76歳
0  
黒井千次
男77歳
4 「(引用者注:「いけにえ」と共に)作者の意図が鮮明に伝わって来ない不満が残った。」
高樹のぶ子
女63歳
0  
川上弘美
女51歳
8 「何かを試みようとしていた。けれどその試みは、小説という表現でおこなうのが最も適しているものなのか。という疑問は残りましたが、試みている姿を見るのは嬉しいことです。」
宮本輝
男62歳
0  
村上龍
男57歳
0  
池澤夏樹
男64歳
0  
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他の候補作
磯崎憲一郎
「終の住処」
戌井昭人
「まずいスープ」
シリン・ネザマフィ
「白い紙」
藤野可織
「いけにえ」
本谷有希子
「あの子の考えることは変」
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候補者・作品
本谷有希子女30歳×各選考委員 
「あの子の考えることは変」
中篇 180
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山田詠美
女50歳
11 「目で読むおもしろさではなく、耳で聞くおもしろさのような気がする。」「日田の気持の悪さは秀逸だが、境界例の不思議ちゃんの話には、もう辟易。」
小川洋子
女47歳
10 「(引用者注:「まずいスープ」「よもぎ学園高等学校蹴球部」と共に)私にとっては少々にぎやかすぎた。自分はこんなにも普通でない人々を描けるのだ、と声高に叫ばれると、それだけで白けてしまう。」
石原慎太郎
男76歳
0  
黒井千次
男77歳
8 「同居する二人の若い女性が周囲にあるものに対して能動的、積極的、攻撃的に挑む姿勢に好感を抱いたが、その生理的スピードの底に残るものをもう少し見せて欲しいと感じた。」
高樹のぶ子
女63歳
16 「(引用者注:候補作の中で)一番はっきりと人間に触れることが出来た」「ただこれは受賞作には押せなかった。会話が反射神経で書かれていて文学の会話というより、舞台上の台詞に近い。」「非(原文傍点)社会性でなく、反(原文傍点)や超(原文傍点)がつけば、この悪臭に満ちた女性たちが、文学としての魅力を持ったのに残念。」
川上弘美
女51歳
9 「活力ある書き手だと思います。ただ、主人公二人の「変」さがあまりに堅固なような気がするのです。その堅固さを維持するために、どこかに無理がいっているという印象を持ってしまいました。」
宮本輝
男62歳
20 「(引用者注:「まずいスープ」と共に)他の候補作より少し高い点をつけた。」「文字どおり面白く小説が進んでいく。しかし、それだけなのだ。」「しかし、本谷氏独特の才も、(引用者中略)どこにでも転がっているものではなく、新しい書き手としての跳躍力は横溢している。」
村上龍
男57歳
0  
池澤夏樹
男64歳
0  
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他の候補作
磯崎憲一郎
「終の住処」
戌井昭人
「まずいスープ」
シリン・ネザマフィ
「白い紙」
藤野可織
「いけにえ」
松波太郎
「よもぎ学園高等学校蹴球部」
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