芥川賞のすべて・のようなもの
第140回
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平成20年/2008年下半期
(平成21年/2009年1月15日決定発表/『文藝春秋』平成21年/2009年3月号選評掲載)
選考委員  宮本輝
男61歳
小川洋子
女46歳
山田詠美
女49歳
村上龍
男56歳
川上弘美
女50歳
黒井千次
男76歳
高樹のぶ子
女62歳
池澤夏樹
男63歳
石原慎太郎
男76歳
選評総行数  56 54 53 59 65 58 50 45 39
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
津村記久子 「ポトスライムの舟」
140
女30歳
15 4 10 18 16 32 20 28 20
鹿島田真希 「女の庭」
110
女32歳
17 4 10 25 12 4 0 0 0
墨谷渉 「潰玉」
94
男36歳
0 19 7 0 10 9 0 0 0
田中慎弥 「神様のいない日本シリーズ」
171
男36歳
12 12 9 0 16 19 15 11 0
山崎ナオコーラ 「手」
118
女30歳
12 8 10 16 8 4 9 0 0
吉原清隆 「不正な処理」
131
男38歳
0 7 7 0 13 4 0 0 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
宮本輝男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
機微のうねり 総行数56 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
15 「大仕掛けではない小説だけに、機微のうねりを活写する手腕の裏には、まだ三十歳の作者が内蔵する世界の豊かさを感じざるを得ない。春秋に富む才能だと思う。」
鹿島田真希
女32歳
17 「(引用者注:「ポトスライムの舟」に次いで)二番手の評価点をつけた。」「主人公の正気なのか狂気なのか判然としない境界を行きつ戻りつする不気味さに惹かれた。」「しかし、その緊張感は、後半に入ると同じことの繰り返しとなってしまって、小説として退屈になった。」
墨谷渉
男36歳
0  
田中慎弥
男36歳
12 「作品のなかにたくさんの材料を用意したが、それらは別々のものとしてばら撒かれただけで、融合して化学反応を起こさないまま終わってしまったという印象である。」
山崎ナオコーラ
女30歳
12 「小説の文章としてはこれまでよりもこなれているが、逆に、山崎氏独特の刺のひっかかりは失われてしまった。」「今後において氏がなにも芥川賞にこだわることはないのではないか、そのほうがより持ち味が生かされるのではないかと感じさせる。」
吉原清隆
男38歳
0  
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他の選考委員
小川洋子
山田詠美
村上龍
川上弘美
黒井千次
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
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選考委員
小川洋子女46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
間違いないこと 総行数54 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
4 「津村さんはこれからどんどん書いてゆくだろう。それは間違いないことであるし、一番大事なことである。」
鹿島田真希
女32歳
4 「「女の庭」の“私”にくっついて、混沌とした穴に落ちてみたかった。あくまでも“私”の理屈は真当だった。」
墨谷渉
男36歳
19 「最も興味深く読んだ。内面を表現する手段としての暴力ではなく、単なる肉体的運動としての暴力を描写している点がユニークだった。」「最も魅力的なのは、亜佐美が陰嚢の断面図を思い浮かべている場面だった。「潰玉」が真に意味を持つためには、この冷やかに光る医学用語に対抗できる文章が必要だったのだろう。」
田中慎弥
男36歳
12 「アンバランスな気持の悪さが、最後まで気になった。」
山崎ナオコーラ
女30歳
8 「前に候補になった「カツラ美容室別室」に出てくる、人の握ったおにぎりを食べられない男、が今でも忘れられない。今回の作品にはそういう出会いがなかった。」
吉原清隆
男38歳
7 「久賀が死んだあと、一気にパワーダウンしてしまった。」
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他の選考委員
宮本輝
山田詠美
村上龍
川上弘美
黒井千次
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
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選考委員
山田詠美女49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「選評」 総行数53 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
10 「目新しい風俗など何も描写されていないのに、今の時代を感じさせる。と、同時に普遍性もまた獲得し得た上等な仕事。『蟹工船』より、こっちでしょう。」
鹿島田真希
女32歳
10 「この作者は、自分にとっての重要な観念的課題に、毎回、真摯に挑戦しているように思われる。しかしながら、今回は、主題が練られていないのか、妙に文学少女然としたまま。」
墨谷渉
男36歳
7 「フェティッシュな欲望を、ありがちなトラウマと切り離したところは良かった。」「少しのユーモアさえあれば。」
田中慎弥
男36歳
9 「ドラマティックな仕掛けが過ぎて大失敗している。しかし、ドアの向こう側に、実は息子がいなかったとしたら、大成功だったような気もする。」
山崎ナオコーラ
女30歳
10 「主人公が好きなのは「ただのおじさん」ではなく、「都合の良いおじさん」。書かれるべきは「都合の悪いおじさん」なのに。」
吉原清隆
男38歳
7 「小説の中の無駄死には、時に価値を与えられるが、この場合、いくらなんでも無駄死に過ぎる。あ、イヌ死にか。」
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他の選考委員
宮本輝
小川洋子
村上龍
川上弘美
黒井千次
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
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選考委員
村上龍男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数59 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
18 「よく書けていると思ったので受賞には反対しなかったが、推さなかった。コントロールできる世界だけを描いていると思ったからだ。」
鹿島田真希
女32歳
25 「興味深い作品だった。ただし、作品として優れているということではない。文学のモチーフとしての、狂気というものを考えるときの例題として興味深いというだけだ。」「致命的な欠点は、作品に含まれた狂気や妄想を、作者がコントロールできていないということに尽きる。」
墨谷渉
男36歳
0  
田中慎弥
男36歳
0  
山崎ナオコーラ
女30歳
16 「わたしは(引用者中略)推したが、同じ作者の前作の水準を越えるものではなく、受賞には至らなかった。」「『手』の作者は、少なくとも、コントロールできそうにないものを何とかコントロールしたいという意思を持っているように思った。」
吉原清隆
男38歳
0  
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他の選考委員
宮本輝
小川洋子
山田詠美
川上弘美
黒井千次
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
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選考委員
川上弘美女50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
揺籃 総行数65 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
16 「揺れていない。「このように書こう」として、ちゃんと「このように書いている」。」「どんなことを書こうという時も、ごまかさず最後まで詰めて考え、書き表しているから、だと思います。」「わたしは「女の庭」と「ポトスライムの舟」を、少しずつ推しました。」
鹿島田真希
女32歳
12 「語り手が、ときどき利口になってしまっていて、せっかくの気持ち悪い揺れが、正しい揺れになってしまう。魅力的な小説を書く作者だと思います。」「わたしは「女の庭」と「ポトスライムの舟」を、少しずつ推しました。」
墨谷渉
男36歳
10 「たくみである。たくみであることに、作中の女たちが、奉仕してしまっていたのではないか? 作者は、勤勉なのだと思う。たまにその勤勉さは、愉快さを引き寄せる。一つも愉快なことは書かれていないのに。」
田中慎弥
男36歳
16 「この作品は揺れているとみえて、存外揺れていない。「このように書こう」と、作者は思っているようにみえる。」「死んだウサギを、作中の人たちは食べなかった。ただ捨ててしまった。わたしはここで、作者の魔術の世界から、はずれてしまいました。」
山崎ナオコーラ
女30歳
8 「うまい。」「語り手が揺れない。繊細に揺れているようで、けれどとても確かだ。」
吉原清隆
男38歳
13 「この先どこに連れていってくれるのだろう、と期待させてくれる一瞬がある。でもそれはまた揺れの中に消える(消えていってしまうけれど、わたしはこの小説の、ある種の愚直さに惹かれるところがありました)。」
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他の選考委員
宮本輝
小川洋子
山田詠美
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
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選考委員
黒井千次男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
水の勢い 総行数58 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
32 「(引用者注:「神様のいない日本シリーズ」と共に)特に印象に残った。」「とりわけ大きな出来事が起るわけでもないのに、澄んだ水が正面から勢いよくぶつかって来るような読後感が生れるのは、奈良にある築五十年の古い家に母親と暮す主人公の日々が、確かな筆遣いで捉えられているからだろう。」「二十九歳から三十歳になろうとする現代女性の結婚や離婚、仕事や家族達の様相がくっきりと浮かび上る作品となった。」
鹿島田真希
女32歳
4 「(引用者注:「潰玉」「手」「不正な処理」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」
墨谷渉
男36歳
9 「(引用者注:「女の庭」「手」「不正な処理」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」「これとは違った主題の作品を読んでみたいと思った。」
田中慎弥
男36歳
19 「(引用者注:「ポトスライムの舟」と共に)特に印象に残った。」「よく作られた小説でその工夫に感心させられた。ただ、中学生がベケットの「ゴドーを待ちながら」を上演するという話の運びには問題があるのではないか。」
山崎ナオコーラ
女30歳
4 「(引用者注:「女の庭」「潰玉」「不正な処理」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」
吉原清隆
男38歳
4 「(引用者注:「女の庭」「潰玉」「手」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」
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他の選考委員
宮本輝
小川洋子
山田詠美
村上龍
川上弘美
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
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選考委員
高樹のぶ子女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「そこそこ小説の終焉」 総行数50 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
20 「俯瞰せずひたすら地を這って生きる関西の女たちの視線が、切ない生活実感を生み出している。」「しかし舞台を東京に置いたなら、忍耐、がんばり、苦労、不条理への抗議などなど、ゴツゴツした問題提起の様相を帯びてくるだろうし、この作品の不思議なぬくもりは失われるに違いない。視線を低く保つ関西人の気質と言葉使いが、うまく時代を掴まえたとも言える。」
鹿島田真希
女32歳
0  
墨谷渉
男36歳
0  
田中慎弥
男36歳
15 「とりわけ語り手である主人公の、思春期における身体的なリアリティがいい。男三代の野球との関わりは、そのような鏡でもなければ世代を超えての男たちの繋がりを描けないと言う意味では企みを買うけれど、ここに「ゴドーを待ちながら」が入ってくると、観念の操作が透けて見えてしまう。」
山崎ナオコーラ
女30歳
9 「才気を感じさせる作品だ。」「小説が小さいと感じるのは、描かれるオジサンが、主人公の予想からはみ出さず、人間の怖さや滑稽さや悲しみにまで辿り着いていないからか。」
吉原清隆
男38歳
0  
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他の選考委員
宮本輝
小川洋子
山田詠美
村上龍
川上弘美
黒井千次
池澤夏樹
石原慎太郎
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選考委員
池澤夏樹男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
この内向的な姿勢 総行数45 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
28 「巧緻な作品である。」「ぼくには(引用者注:主人公の女性)ナガセが生活の優等生のように見えた。作者もまた細部まで計算の行き届いた優等生、というのは言い過ぎだろうか。問題はこの生きかたを肯定する今の社会の側にあるのだから。」「うまいことは認める。しかし、みんな、こんなに内向きでいいのか?」
鹿島田真希
女32歳
0  
墨谷渉
男36歳
0  
田中慎弥
男36歳
11 「およそ無謀な企てであり、いくつかの点で破綻している。」「いかになんでも盛り込み過ぎ・作り過ぎ。それを承知で敢えてこの蛮勇の作を推したが、敗退した。」
山崎ナオコーラ
女30歳
0  
吉原清隆
男38歳
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他の選考委員
宮本輝
小川洋子
山田詠美
村上龍
川上弘美
黒井千次
高樹のぶ子
石原慎太郎
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選考委員
石原慎太郎男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
無劇性の劇のくり上げ当選 総行数39 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
津村記久子
女30歳
20 「無劇性の劇ともいうべき、盛りをすぎた独身女性の日々の生活の根底に漂う空しさを淡々と描いていて、」「私としてはこの作者の次の作品を見て評価を決めたいと思っていたが、他の作品のあまりの酷さに、相対的に繰り上げての当選ということにした。」
鹿島田真希
女32歳
0  
墨谷渉
男36歳
0  
田中慎弥
男36歳
0  
山崎ナオコーラ
女30歳
0  
吉原清隆
男38歳
0  
  「今回の受賞作以外の作品に、反発をも含めて、読む者の感性に触れてくる何があるというのだろうか。どれも所詮は作者一人の空疎な思いこみ、中には卑しいとしかいえない当てこみばかりで、うんざりさせられる。」「一方の直木賞候補作品たちに比べてみても、今日の純文学とか称されるカテゴリーの作品の不人気衰退が相対的にいかにもうなずける。」
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他の選考委員
宮本輝
小川洋子
山田詠美
村上龍
川上弘美
黒井千次
高樹のぶ子
池澤夏樹
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受賞者・作品
津村記久子女30歳×各選考委員 
「ポトスライムの舟」
短篇 140
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
宮本輝
男61歳
15 「大仕掛けではない小説だけに、機微のうねりを活写する手腕の裏には、まだ三十歳の作者が内蔵する世界の豊かさを感じざるを得ない。春秋に富む才能だと思う。」
小川洋子
女46歳
4 「津村さんはこれからどんどん書いてゆくだろう。それは間違いないことであるし、一番大事なことである。」
山田詠美
女49歳
10 「目新しい風俗など何も描写されていないのに、今の時代を感じさせる。と、同時に普遍性もまた獲得し得た上等な仕事。『蟹工船』より、こっちでしょう。」
村上龍
男56歳
18 「よく書けていると思ったので受賞には反対しなかったが、推さなかった。コントロールできる世界だけを描いていると思ったからだ。」
川上弘美
女50歳
16 「揺れていない。「このように書こう」として、ちゃんと「このように書いている」。」「どんなことを書こうという時も、ごまかさず最後まで詰めて考え、書き表しているから、だと思います。」「わたしは「女の庭」と「ポトスライムの舟」を、少しずつ推しました。」
黒井千次
男76歳
32 「(引用者注:「神様のいない日本シリーズ」と共に)特に印象に残った。」「とりわけ大きな出来事が起るわけでもないのに、澄んだ水が正面から勢いよくぶつかって来るような読後感が生れるのは、奈良にある築五十年の古い家に母親と暮す主人公の日々が、確かな筆遣いで捉えられているからだろう。」「二十九歳から三十歳になろうとする現代女性の結婚や離婚、仕事や家族達の様相がくっきりと浮かび上る作品となった。」
高樹のぶ子
女62歳
20 「俯瞰せずひたすら地を這って生きる関西の女たちの視線が、切ない生活実感を生み出している。」「しかし舞台を東京に置いたなら、忍耐、がんばり、苦労、不条理への抗議などなど、ゴツゴツした問題提起の様相を帯びてくるだろうし、この作品の不思議なぬくもりは失われるに違いない。視線を低く保つ関西人の気質と言葉使いが、うまく時代を掴まえたとも言える。」
池澤夏樹
男63歳
28 「巧緻な作品である。」「ぼくには(引用者注:主人公の女性)ナガセが生活の優等生のように見えた。作者もまた細部まで計算の行き届いた優等生、というのは言い過ぎだろうか。問題はこの生きかたを肯定する今の社会の側にあるのだから。」「うまいことは認める。しかし、みんな、こんなに内向きでいいのか?」
石原慎太郎
男76歳
20 「無劇性の劇ともいうべき、盛りをすぎた独身女性の日々の生活の根底に漂う空しさを淡々と描いていて、」「私としてはこの作者の次の作品を見て評価を決めたいと思っていたが、他の作品のあまりの酷さに、相対的に繰り上げての当選ということにした。」
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他の候補作
鹿島田真希
「女の庭」
墨谷渉
「潰玉」
田中慎弥
「神様のいない日本シリーズ」
山崎ナオコーラ
「手」
吉原清隆
「不正な処理」
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候補者・作品
鹿島田真希女32歳×各選考委員 
「女の庭」
短篇 110
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
宮本輝
男61歳
17 「(引用者注:「ポトスライムの舟」に次いで)二番手の評価点をつけた。」「主人公の正気なのか狂気なのか判然としない境界を行きつ戻りつする不気味さに惹かれた。」「しかし、その緊張感は、後半に入ると同じことの繰り返しとなってしまって、小説として退屈になった。」
小川洋子
女46歳
4 「「女の庭」の“私”にくっついて、混沌とした穴に落ちてみたかった。あくまでも“私”の理屈は真当だった。」
山田詠美
女49歳
10 「この作者は、自分にとっての重要な観念的課題に、毎回、真摯に挑戦しているように思われる。しかしながら、今回は、主題が練られていないのか、妙に文学少女然としたまま。」
村上龍
男56歳
25 「興味深い作品だった。ただし、作品として優れているということではない。文学のモチーフとしての、狂気というものを考えるときの例題として興味深いというだけだ。」「致命的な欠点は、作品に含まれた狂気や妄想を、作者がコントロールできていないということに尽きる。」
川上弘美
女50歳
12 「語り手が、ときどき利口になってしまっていて、せっかくの気持ち悪い揺れが、正しい揺れになってしまう。魅力的な小説を書く作者だと思います。」「わたしは「女の庭」と「ポトスライムの舟」を、少しずつ推しました。」
黒井千次
男76歳
4 「(引用者注:「潰玉」「手」「不正な処理」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」
高樹のぶ子
女62歳
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池澤夏樹
男63歳
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石原慎太郎
男76歳
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他の候補作
津村記久子
「ポトスライムの舟」
墨谷渉
「潰玉」
田中慎弥
「神様のいない日本シリーズ」
山崎ナオコーラ
「手」
吉原清隆
「不正な処理」
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候補者・作品
墨谷渉男36歳×各選考委員 
「潰玉」
短篇 94
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
宮本輝
男61歳
0  
小川洋子
女46歳
19 「最も興味深く読んだ。内面を表現する手段としての暴力ではなく、単なる肉体的運動としての暴力を描写している点がユニークだった。」「最も魅力的なのは、亜佐美が陰嚢の断面図を思い浮かべている場面だった。「潰玉」が真に意味を持つためには、この冷やかに光る医学用語に対抗できる文章が必要だったのだろう。」
山田詠美
女49歳
7 「フェティッシュな欲望を、ありがちなトラウマと切り離したところは良かった。」「少しのユーモアさえあれば。」
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
10 「たくみである。たくみであることに、作中の女たちが、奉仕してしまっていたのではないか? 作者は、勤勉なのだと思う。たまにその勤勉さは、愉快さを引き寄せる。一つも愉快なことは書かれていないのに。」
黒井千次
男76歳
9 「(引用者注:「女の庭」「手」「不正な処理」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」「これとは違った主題の作品を読んでみたいと思った。」
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
石原慎太郎
男76歳
0  
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他の候補作
津村記久子
「ポトスライムの舟」
鹿島田真希
「女の庭」
田中慎弥
「神様のいない日本シリーズ」
山崎ナオコーラ
「手」
吉原清隆
「不正な処理」
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候補者・作品
田中慎弥男36歳×各選考委員 
「神様のいない日本シリーズ」
中篇 171
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
宮本輝
男61歳
12 「作品のなかにたくさんの材料を用意したが、それらは別々のものとしてばら撒かれただけで、融合して化学反応を起こさないまま終わってしまったという印象である。」
小川洋子
女46歳
12 「アンバランスな気持の悪さが、最後まで気になった。」
山田詠美
女49歳
9 「ドラマティックな仕掛けが過ぎて大失敗している。しかし、ドアの向こう側に、実は息子がいなかったとしたら、大成功だったような気もする。」
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
16 「この作品は揺れているとみえて、存外揺れていない。「このように書こう」と、作者は思っているようにみえる。」「死んだウサギを、作中の人たちは食べなかった。ただ捨ててしまった。わたしはここで、作者の魔術の世界から、はずれてしまいました。」
黒井千次
男76歳
19 「(引用者注:「ポトスライムの舟」と共に)特に印象に残った。」「よく作られた小説でその工夫に感心させられた。ただ、中学生がベケットの「ゴドーを待ちながら」を上演するという話の運びには問題があるのではないか。」
高樹のぶ子
女62歳
15 「とりわけ語り手である主人公の、思春期における身体的なリアリティがいい。男三代の野球との関わりは、そのような鏡でもなければ世代を超えての男たちの繋がりを描けないと言う意味では企みを買うけれど、ここに「ゴドーを待ちながら」が入ってくると、観念の操作が透けて見えてしまう。」
池澤夏樹
男63歳
11 「およそ無謀な企てであり、いくつかの点で破綻している。」「いかになんでも盛り込み過ぎ・作り過ぎ。それを承知で敢えてこの蛮勇の作を推したが、敗退した。」
石原慎太郎
男76歳
0  
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他の候補作
津村記久子
「ポトスライムの舟」
鹿島田真希
「女の庭」
墨谷渉
「潰玉」
山崎ナオコーラ
「手」
吉原清隆
「不正な処理」
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候補者・作品
山崎ナオコーラ女30歳×各選考委員 
「手」
短篇 118
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
宮本輝
男61歳
12 「小説の文章としてはこれまでよりもこなれているが、逆に、山崎氏独特の刺のひっかかりは失われてしまった。」「今後において氏がなにも芥川賞にこだわることはないのではないか、そのほうがより持ち味が生かされるのではないかと感じさせる。」
小川洋子
女46歳
8 「前に候補になった「カツラ美容室別室」に出てくる、人の握ったおにぎりを食べられない男、が今でも忘れられない。今回の作品にはそういう出会いがなかった。」
山田詠美
女49歳
10 「主人公が好きなのは「ただのおじさん」ではなく、「都合の良いおじさん」。書かれるべきは「都合の悪いおじさん」なのに。」
村上龍
男56歳
16 「わたしは(引用者中略)推したが、同じ作者の前作の水準を越えるものではなく、受賞には至らなかった。」「『手』の作者は、少なくとも、コントロールできそうにないものを何とかコントロールしたいという意思を持っているように思った。」
川上弘美
女50歳
8 「うまい。」「語り手が揺れない。繊細に揺れているようで、けれどとても確かだ。」
黒井千次
男76歳
4 「(引用者注:「女の庭」「潰玉」「不正な処理」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」
高樹のぶ子
女62歳
9 「才気を感じさせる作品だ。」「小説が小さいと感じるのは、描かれるオジサンが、主人公の予想からはみ出さず、人間の怖さや滑稽さや悲しみにまで辿り着いていないからか。」
池澤夏樹
男63歳
0  
石原慎太郎
男76歳
0  
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他の候補作
津村記久子
「ポトスライムの舟」
鹿島田真希
「女の庭」
墨谷渉
「潰玉」
田中慎弥
「神様のいない日本シリーズ」
吉原清隆
「不正な処理」
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候補者・作品
吉原清隆男38歳×各選考委員 
「不正な処理」
短篇 131
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
宮本輝
男61歳
0  
小川洋子
女46歳
7 「久賀が死んだあと、一気にパワーダウンしてしまった。」
山田詠美
女49歳
7 「小説の中の無駄死には、時に価値を与えられるが、この場合、いくらなんでも無駄死に過ぎる。あ、イヌ死にか。」
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
13 「この先どこに連れていってくれるのだろう、と期待させてくれる一瞬がある。でもそれはまた揺れの中に消える(消えていってしまうけれど、わたしはこの小説の、ある種の愚直さに惹かれるところがありました)。」
黒井千次
男76歳
4 「(引用者注:「女の庭」「潰玉」「手」と共に)いかにも現代らしい風貌の作品だが、そこを突き抜けて独自の世界を作り出すに至っていない。」
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
石原慎太郎
男76歳
0  
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他の候補作
津村記久子
「ポトスライムの舟」
鹿島田真希
「女の庭」
墨谷渉
「潰玉」
田中慎弥
「神様のいない日本シリーズ」
山崎ナオコーラ
「手」
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