芥川賞のすべて・のようなもの
第139回
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平成20年/2008年上半期
(平成20年/2008年7月15日決定発表/『文藝春秋』平成20年/2008年9月号選評掲載)
選考委員  石原慎太郎
男75歳
高樹のぶ子
女62歳
池澤夏樹
男63歳
村上龍
男56歳
川上弘美
女50歳
黒井千次
男76歳
宮本輝
男61歳
小川洋子
女46歳
山田詠美
女49歳
選評総行数  71 46 42 64 55 52 51 49 54
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
楊逸 「時が滲む朝」
189
女44歳
13 46 35 64 7 32 29 21 10
磯崎憲一郎 「眼と太陽」
110
男43歳
0 0 0 0 7 7 10 22 8
岡崎祥久 「ctの深い川の町」
121
男39歳
0 0 0 0 7 6 0 0 5
小野正嗣 「マイクロバス」
155
男37歳
0 0 0 0 9 0 0 6 6
木村紅美 「月食の日」
124
女32歳
23 0 0 0 13 0 0 0 7
津村記久子 「婚礼、葬礼、その他」
100
女30歳
8 0 0 0 5 4 11 0 7
羽田圭介 「走ル」
188
男22歳
23 0 0 0 4 0 0 0 11
欠席
書面回答
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年9月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
石原慎太郎男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
不思議な疾走感 総行数71 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
13 「彼ら(引用者注:中国の学生たち)の人生を左右する政治の不条理さ無慈悲さという根源的な主題についての書きこみが乏しく、単なる風俗小説の域を出ていない。文章はこなれて来てはいても、書き手がただ中国人だということだけでは文学的評価には繋がるまい。」
磯崎憲一郎
男43歳
0  
岡崎祥久
男39歳
0  
小野正嗣
男37歳
0  
木村紅美
女32歳
23 「通常の人間の立場から盲人の周囲の物事に対する感覚的な反応について憶測する部分が面白い。」「作品の芯に座るもの、たとえば身障者故の悲哀、あるいはしたたかさといったものが希薄で小説としての魅力が乏しい。」
津村記久子
女30歳
8 「一種の現代風俗を描いた作品だが、それにしても題名に、『その他』とつける神経はいかなることか。」
羽田圭介
男22歳
23 「実に面白く読んだ。」「読んだ、というよりも作品を読みながら味合った不思議な快感、臨場感というべきものか、」「ともかくも、読みながら辺りの風景が次々に流れて変わっていくという一種の快感は希有なるものだった。」「ただ物置に長くほうりこんであった中古のロードレーサーで青森まで走って、途中パンクなどのトラブルが無い訳はなさそうだ。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
村上龍
川上弘美
黒井千次
宮本輝
小川洋子
山田詠美
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選考委員
高樹のぶ子女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二十年 総行数46 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
46 「久しぶりに人生という言葉を文学の中に見出し、高揚した。」「前回の候補作と全く違う素材で、前作より締まった日本語で書ききった力は信頼できる。何より書きたいことを持っている。」「中国の経済はいまや否応なく日本に大波をもたらしているが、経済だけではなく、文学においても、閉ざされた行動範囲の中で内向し鬱屈する小説や、妄想に逃げた作品は、生活実感と問題意識を搭載した中国の重戦車の越境に、どう立ち向かえるのか。今回の受賞が日本文学に突きつけているものは大きい。」
磯崎憲一郎
男43歳
0  
岡崎祥久
男39歳
0  
小野正嗣
男37歳
0  
木村紅美
女32歳
0  
津村記久子
女30歳
0  
羽田圭介
男22歳
0  
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他の選考委員
石原慎太郎
池澤夏樹
村上龍
川上弘美
黒井千次
宮本輝
小川洋子
山田詠美
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選考委員
池澤夏樹男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
書きたいことがある 総行数42 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
35 「授賞は、この人が書くものを我々はもっと読みたいという意思の表明である。」「その意味で、今回の候補作の中で最も授賞に値する」「巧拙を問うならば、これは最も完成度の高い作品ではなかったかもしれない。」「しかし、ここには書きたいという意欲がある。」「この二十年ほどの中国の庶民史を日本語で語ることに魅力があって、この人の書くものをもっと読みたいと思わせる。」
磯崎憲一郎
男43歳
0  
岡崎祥久
男39歳
0  
小野正嗣
男37歳
0  
木村紅美
女32歳
0  
津村記久子
女30歳
0  
羽田圭介
男22歳
0  
  「(引用者注:「時が滲む朝」以外の)他の候補作はそれぞれに工夫を凝らして巧みに書かれている。必ずしも「時が滲む朝」の前だから色あせて見えたわけではないが、しかしどれも一定のレベルを超えていない。」
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他の選考委員
石原慎太郎
高樹のぶ子
村上龍
川上弘美
黒井千次
宮本輝
小川洋子
山田詠美
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選考委員
村上龍男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数64 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
64 「受賞にわたしは賛成しなかった。前作『ワンちゃん』のほうが、小説として優れていたと思った。」「主要登場人物の学生時代などに代表される「純粋さ」を評価するという意見もあった。だがわたしには、純粋さではなく、単なる無知に映った。」「『時が滲む朝』の受賞によって、たとえば国家の民主化とか、いろいろな意味で胡散臭い政治的・文化的背景を持つ「大きな物語」のほうが、どこにでもいる個人の内面や人間関係を描く「小さな物語」よりも文学的価値があるなどという、すでに何度も暴かれた嘘が、復活して欲しくないと思っている。」
磯崎憲一郎
男43歳
0  
岡崎祥久
男39歳
0  
小野正嗣
男37歳
0  
木村紅美
女32歳
0  
津村記久子
女30歳
0  
羽田圭介
男22歳
0  
  「今回の候補作は全体的にレベルが非常に低く、また例によって「どうしてこんなことを小説として書かなくてはならないのか」というような些末で閉鎖的なモチーフの作品が目立った」
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他の選考委員
石原慎太郎
高樹のぶ子
池澤夏樹
川上弘美
黒井千次
宮本輝
小川洋子
山田詠美
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選考委員
川上弘美女50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
逃げない 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
7 「見知らぬ人たちなのに、この小説に出てくる人たちを、どんどん好きになってしまった。それは、あるようでいて、実際にはめったにないことです。受賞をとても嬉しく思います。」
磯崎憲一郎
男43歳
7 「人の生は、矛盾をはらみつつとらえどころのないふうに動いてゆく。そのことを小説的に処理せずに小説にしようとしているところが、いいと思いました。文章に、むらがありませんか?」
岡崎祥久
男39歳
7 「少し恥ずかしいです、時々あらわれる箴言めいた文章が。惹かれたのは、文章を明瞭に書こうとしているところ。」
小野正嗣
男37歳
9 「この世界の見えかた。そのことをどう描くかということにおいて、この作者の選ぶやり方が好きです。主人公が「知恵の足りない」人であることが、物語をどこかあちらの方へ収斂させてしまった。残念です。」
木村紅美
女32歳
13 「今回一番に推しました。」「今ある小説の中でまだ言葉になっていない、そんな関係を、この作者は描き得ていると思った。逃げないで書いている人だと思う。」
津村記久子
女30歳
5 「始まりかた、好きです。決めた方向に進むことに関して、作者自身が几帳面すぎるのかもしれない。」
羽田圭介
男22歳
4 「作者は作中の自転車をよく走らせてくれていて、爽快。本田くんはでも、できすぎの青年だなあ。」
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他の選考委員
石原慎太郎
高樹のぶ子
池澤夏樹
村上龍
黒井千次
宮本輝
小川洋子
山田詠美
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選考委員
黒井千次男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
主題と長さ 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
32 「他の候補作とは質の異なる作品である、との印象を受けた。」「荒削りではあっても、そこには書きたいこと、書かれねばならぬものが充満しているのを感じる。」「ただ、激動する時代を生きる人間の歳月をこのような書き方で描くとしたら、それは長篇小説がふさわしかったろう。その素材を中篇といった長さに押し込んでしまったところに構成上の無理がある。」
磯崎憲一郎
男43歳
7 「このアメリカ生活の全体から伝わって来るものがうまく掴めなかった。」
岡崎祥久
男39歳
6 「どこか惚けたような味わいに独得なものがあり、単なる作り物には止まらぬ面白さがあると感じたのだが、他の支持は全く得られなかった。」
小野正嗣
男37歳
0  
木村紅美
女32歳
0  
津村記久子
女30歳
4 「ドタバタのエネルギーとユーモアに興味を覚える。」
羽田圭介
男22歳
0  
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他の選考委員
石原慎太郎
高樹のぶ子
池澤夏樹
村上龍
川上弘美
宮本輝
小川洋子
山田詠美
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選考委員
宮本輝男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
言語感覚の差異 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
29 「前作の「ワンちゃん」よりも優れているとは思えない。小説の造りという点においても、あまりにも陳腐で大時代的な表現においても、前作とさして差はないと思った。」「後半になればなるほど陰影は薄くなり、類型的な風俗小説と化していく。どうにも異和感をぬぐえない日本語と併わせて、私は授賞に賛成できなかった。」「楊逸氏が現代の日本人と比して、書くべき多くの素材を内包していることは確かである。」
磯崎憲一郎
男43歳
10 「(引用者注:「婚礼、葬礼、その他」と共に)多少の高い点をつけたが、あくまでも多少であって、受賞作に推せるほどではなかった。」「ペダンチックな小説にありがちな曖昧さに終始して、そこからひろがるものがなく、」
岡崎祥久
男39歳
0  
小野正嗣
男37歳
0  
木村紅美
女32歳
0  
津村記久子
女30歳
11 「(引用者注:「眼と太陽」と共に)多少の高い点をつけたが、あくまでも多少であって、受賞作に推せるほどではなかった。」「律儀でお人好しな主人公が一日のうちに経験する婚礼と葬礼は丁寧に描かれているのに、肝腎の「その他」に筆が届いていないのだ。」
羽田圭介
男22歳
0  
  「(引用者注:候補作の)なかにはなぜこれが芥川賞の候補作かと驚いてしまうものもあった。」
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他の選考委員
石原慎太郎
高樹のぶ子
池澤夏樹
村上龍
川上弘美
黒井千次
小川洋子
山田詠美
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選考委員
小川洋子女46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
21 「浩遠の苦悩は、内側に深まってゆかない。(引用者中略)外へ外へと拡散する方向にのみ動いてゆく。最初、その点が不満だったが、国家に踏みにじられる状況をただ単に嘆くのではなく、一歩でもそこから脱出しようとする彼の生気のあらわれだとすれば、納得できると思った。」「平成の日本文学では書き表すことが困難なさまざまな風景が、楊さんの中には蓄えられているに違いない。」
磯崎憲一郎
男43歳
22 「磯崎さんの作り出す世界から立ち上ってくる現実は、不条理などという便利な言葉でくくれない不気味さをはらんでいる。偶然の恩恵を拒否し、すべてを敢えて宙吊りにしておく勇気に、私は才能を感じた。」「受賞に相応しいと、一生懸命奮闘したつもりだが、力及ばず、残念だった。」
岡崎祥久
男39歳
0  
小野正嗣
男37歳
6 「丁寧に作り上げられた場所の魅力に引っ張られて読んだ。海と山に潜む死の記憶に閉ざされ、時間の淀みに取り残された町の感触が生々しく残った。」
木村紅美
女32歳
0  
津村記久子
女30歳
0  
羽田圭介
男22歳
0  
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他の選考委員
石原慎太郎
高樹のぶ子
池澤夏樹
村上龍
川上弘美
黒井千次
宮本輝
山田詠美
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選考委員
山田詠美女49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「選評」 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
楊逸
女44歳
10 「女の子の瞳に〈泉にたゆたう大粒の葡萄〉などという大時代的な比喩を使われては困る。この、ページをめくらずにはいられないリーダブルな価値は、どちらかと言えば、直木賞向きかと思う。」
磯崎憲一郎
男43歳
8 「後半の先輩の語りの部分は長過ぎる。」「登場人物たちのそれぞれの時間軸が、薄紙に重ねたグラフのように思えた。時々、ものすごく、美しい。」
岡崎祥久
男39歳
5 「フリルの制服を着たタクシー社員同様、本文にも無駄なフリルが多過ぎる。章タイトルの思わせぶりとか。セッちゃんは、いい。」
小野正嗣
男37歳
6 「言葉による濃密なトリックアートを目の当たりにしたような読後感。けれども、そう感じて推したのは私だけ。やはり、猛暑には、くど過ぎたか。」
木村紅美
女32歳
7 「意図的に視点をころころ変えるのなら、もう少し文章力を付けてからにしないと、読み手には、誰が誰だかさっぱり解らない。」
津村記久子
女30歳
7 「これは、そこらで良くある話。すったもんだよりも、むしろ題名にある「その他」に重点を置いたら、本当の特別な小説になった。」
羽田圭介
男22歳
11 「こういうのを、青春の輝きとみずみずしさに満ちている、と評する親切な大人に、私はなりたい……なりたいのだが、長過ぎて、お疲れさまと言うしかない。」「突き当たり(稚内)まで行った「ハチミツとクローバー」の竹本くんの方が、もっと偉くて魅力的だ。」
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他の選考委員
石原慎太郎
高樹のぶ子
池澤夏樹
村上龍
川上弘美
黒井千次
宮本輝
小川洋子
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受賞者・作品
楊逸女44歳×各選考委員 
「時が滲む朝」
中篇 189
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石原慎太郎
男75歳
13 「彼ら(引用者注:中国の学生たち)の人生を左右する政治の不条理さ無慈悲さという根源的な主題についての書きこみが乏しく、単なる風俗小説の域を出ていない。文章はこなれて来てはいても、書き手がただ中国人だということだけでは文学的評価には繋がるまい。」
高樹のぶ子
女62歳
46 「久しぶりに人生という言葉を文学の中に見出し、高揚した。」「前回の候補作と全く違う素材で、前作より締まった日本語で書ききった力は信頼できる。何より書きたいことを持っている。」「中国の経済はいまや否応なく日本に大波をもたらしているが、経済だけではなく、文学においても、閉ざされた行動範囲の中で内向し鬱屈する小説や、妄想に逃げた作品は、生活実感と問題意識を搭載した中国の重戦車の越境に、どう立ち向かえるのか。今回の受賞が日本文学に突きつけているものは大きい。」
池澤夏樹
男63歳
35 「授賞は、この人が書くものを我々はもっと読みたいという意思の表明である。」「その意味で、今回の候補作の中で最も授賞に値する」「巧拙を問うならば、これは最も完成度の高い作品ではなかったかもしれない。」「しかし、ここには書きたいという意欲がある。」「この二十年ほどの中国の庶民史を日本語で語ることに魅力があって、この人の書くものをもっと読みたいと思わせる。」
村上龍
男56歳
64 「受賞にわたしは賛成しなかった。前作『ワンちゃん』のほうが、小説として優れていたと思った。」「主要登場人物の学生時代などに代表される「純粋さ」を評価するという意見もあった。だがわたしには、純粋さではなく、単なる無知に映った。」「『時が滲む朝』の受賞によって、たとえば国家の民主化とか、いろいろな意味で胡散臭い政治的・文化的背景を持つ「大きな物語」のほうが、どこにでもいる個人の内面や人間関係を描く「小さな物語」よりも文学的価値があるなどという、すでに何度も暴かれた嘘が、復活して欲しくないと思っている。」
川上弘美
女50歳
7 「見知らぬ人たちなのに、この小説に出てくる人たちを、どんどん好きになってしまった。それは、あるようでいて、実際にはめったにないことです。受賞をとても嬉しく思います。」
黒井千次
男76歳
32 「他の候補作とは質の異なる作品である、との印象を受けた。」「荒削りではあっても、そこには書きたいこと、書かれねばならぬものが充満しているのを感じる。」「ただ、激動する時代を生きる人間の歳月をこのような書き方で描くとしたら、それは長篇小説がふさわしかったろう。その素材を中篇といった長さに押し込んでしまったところに構成上の無理がある。」
宮本輝
男61歳
29 「前作の「ワンちゃん」よりも優れているとは思えない。小説の造りという点においても、あまりにも陳腐で大時代的な表現においても、前作とさして差はないと思った。」「後半になればなるほど陰影は薄くなり、類型的な風俗小説と化していく。どうにも異和感をぬぐえない日本語と併わせて、私は授賞に賛成できなかった。」「楊逸氏が現代の日本人と比して、書くべき多くの素材を内包していることは確かである。」
小川洋子
女46歳
21 「浩遠の苦悩は、内側に深まってゆかない。(引用者中略)外へ外へと拡散する方向にのみ動いてゆく。最初、その点が不満だったが、国家に踏みにじられる状況をただ単に嘆くのではなく、一歩でもそこから脱出しようとする彼の生気のあらわれだとすれば、納得できると思った。」「平成の日本文学では書き表すことが困難なさまざまな風景が、楊さんの中には蓄えられているに違いない。」
山田詠美
女49歳
10 「女の子の瞳に〈泉にたゆたう大粒の葡萄〉などという大時代的な比喩を使われては困る。この、ページをめくらずにはいられないリーダブルな価値は、どちらかと言えば、直木賞向きかと思う。」
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他の候補作
磯崎憲一郎
「眼と太陽」
岡崎祥久
「ctの深い川の町」
小野正嗣
「マイクロバス」
木村紅美
「月食の日」
津村記久子
「婚礼、葬礼、その他」
羽田圭介
「走ル」
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候補者・作品
磯崎憲一郎男43歳×各選考委員 
「眼と太陽」
短篇 110
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石原慎太郎
男75歳
0  
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
7 「人の生は、矛盾をはらみつつとらえどころのないふうに動いてゆく。そのことを小説的に処理せずに小説にしようとしているところが、いいと思いました。文章に、むらがありませんか?」
黒井千次
男76歳
7 「このアメリカ生活の全体から伝わって来るものがうまく掴めなかった。」
宮本輝
男61歳
10 「(引用者注:「婚礼、葬礼、その他」と共に)多少の高い点をつけたが、あくまでも多少であって、受賞作に推せるほどではなかった。」「ペダンチックな小説にありがちな曖昧さに終始して、そこからひろがるものがなく、」
小川洋子
女46歳
22 「磯崎さんの作り出す世界から立ち上ってくる現実は、不条理などという便利な言葉でくくれない不気味さをはらんでいる。偶然の恩恵を拒否し、すべてを敢えて宙吊りにしておく勇気に、私は才能を感じた。」「受賞に相応しいと、一生懸命奮闘したつもりだが、力及ばず、残念だった。」
山田詠美
女49歳
8 「後半の先輩の語りの部分は長過ぎる。」「登場人物たちのそれぞれの時間軸が、薄紙に重ねたグラフのように思えた。時々、ものすごく、美しい。」
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他の候補作
楊逸
「時が滲む朝」
岡崎祥久
「ctの深い川の町」
小野正嗣
「マイクロバス」
木村紅美
「月食の日」
津村記久子
「婚礼、葬礼、その他」
羽田圭介
「走ル」
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候補者・作品
岡崎祥久男39歳×各選考委員 
「ctの深い川の町」
短篇 121
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石原慎太郎
男75歳
0  
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
7 「少し恥ずかしいです、時々あらわれる箴言めいた文章が。惹かれたのは、文章を明瞭に書こうとしているところ。」
黒井千次
男76歳
6 「どこか惚けたような味わいに独得なものがあり、単なる作り物には止まらぬ面白さがあると感じたのだが、他の支持は全く得られなかった。」
宮本輝
男61歳
0  
小川洋子
女46歳
0  
山田詠美
女49歳
5 「フリルの制服を着たタクシー社員同様、本文にも無駄なフリルが多過ぎる。章タイトルの思わせぶりとか。セッちゃんは、いい。」
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他の候補作
楊逸
「時が滲む朝」
磯崎憲一郎
「眼と太陽」
小野正嗣
「マイクロバス」
木村紅美
「月食の日」
津村記久子
「婚礼、葬礼、その他」
羽田圭介
「走ル」
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候補者・作品
小野正嗣男37歳×各選考委員 
「マイクロバス」
中篇 155
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石原慎太郎
男75歳
0  
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
9 「この世界の見えかた。そのことをどう描くかということにおいて、この作者の選ぶやり方が好きです。主人公が「知恵の足りない」人であることが、物語をどこかあちらの方へ収斂させてしまった。残念です。」
黒井千次
男76歳
0  
宮本輝
男61歳
0  
小川洋子
女46歳
6 「丁寧に作り上げられた場所の魅力に引っ張られて読んだ。海と山に潜む死の記憶に閉ざされ、時間の淀みに取り残された町の感触が生々しく残った。」
山田詠美
女49歳
6 「言葉による濃密なトリックアートを目の当たりにしたような読後感。けれども、そう感じて推したのは私だけ。やはり、猛暑には、くど過ぎたか。」
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他の候補作
楊逸
「時が滲む朝」
磯崎憲一郎
「眼と太陽」
岡崎祥久
「ctの深い川の町」
木村紅美
「月食の日」
津村記久子
「婚礼、葬礼、その他」
羽田圭介
「走ル」
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候補者・作品
木村紅美女32歳×各選考委員 
「月食の日」
短篇 124
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石原慎太郎
男75歳
23 「通常の人間の立場から盲人の周囲の物事に対する感覚的な反応について憶測する部分が面白い。」「作品の芯に座るもの、たとえば身障者故の悲哀、あるいはしたたかさといったものが希薄で小説としての魅力が乏しい。」
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
13 「今回一番に推しました。」「今ある小説の中でまだ言葉になっていない、そんな関係を、この作者は描き得ていると思った。逃げないで書いている人だと思う。」
黒井千次
男76歳
0  
宮本輝
男61歳
0  
小川洋子
女46歳
0  
山田詠美
女49歳
7 「意図的に視点をころころ変えるのなら、もう少し文章力を付けてからにしないと、読み手には、誰が誰だかさっぱり解らない。」
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他の候補作
楊逸
「時が滲む朝」
磯崎憲一郎
「眼と太陽」
岡崎祥久
「ctの深い川の町」
小野正嗣
「マイクロバス」
津村記久子
「婚礼、葬礼、その他」
羽田圭介
「走ル」
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候補者・作品
津村記久子女30歳×各選考委員 
「婚礼、葬礼、その他」
短篇 100
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石原慎太郎
男75歳
8 「一種の現代風俗を描いた作品だが、それにしても題名に、『その他』とつける神経はいかなることか。」
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
5 「始まりかた、好きです。決めた方向に進むことに関して、作者自身が几帳面すぎるのかもしれない。」
黒井千次
男76歳
4 「ドタバタのエネルギーとユーモアに興味を覚える。」
宮本輝
男61歳
11 「(引用者注:「眼と太陽」と共に)多少の高い点をつけたが、あくまでも多少であって、受賞作に推せるほどではなかった。」「律儀でお人好しな主人公が一日のうちに経験する婚礼と葬礼は丁寧に描かれているのに、肝腎の「その他」に筆が届いていないのだ。」
小川洋子
女46歳
0  
山田詠美
女49歳
7 「これは、そこらで良くある話。すったもんだよりも、むしろ題名にある「その他」に重点を置いたら、本当の特別な小説になった。」
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他の候補作
楊逸
「時が滲む朝」
磯崎憲一郎
「眼と太陽」
岡崎祥久
「ctの深い川の町」
小野正嗣
「マイクロバス」
木村紅美
「月食の日」
羽田圭介
「走ル」
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候補者・作品
羽田圭介男22歳×各選考委員 
「走ル」
中篇 188
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石原慎太郎
男75歳
23 「実に面白く読んだ。」「読んだ、というよりも作品を読みながら味合った不思議な快感、臨場感というべきものか、」「ともかくも、読みながら辺りの風景が次々に流れて変わっていくという一種の快感は希有なるものだった。」「ただ物置に長くほうりこんであった中古のロードレーサーで青森まで走って、途中パンクなどのトラブルが無い訳はなさそうだ。」
高樹のぶ子
女62歳
0  
池澤夏樹
男63歳
0  
村上龍
男56歳
0  
川上弘美
女50歳
4 「作者は作中の自転車をよく走らせてくれていて、爽快。本田くんはでも、できすぎの青年だなあ。」
黒井千次
男76歳
0  
宮本輝
男61歳
0  
小川洋子
女46歳
0  
山田詠美
女49歳
11 「こういうのを、青春の輝きとみずみずしさに満ちている、と評する親切な大人に、私はなりたい……なりたいのだが、長過ぎて、お疲れさまと言うしかない。」「突き当たり(稚内)まで行った「ハチミツとクローバー」の竹本くんの方が、もっと偉くて魅力的だ。」
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他の候補作
楊逸
「時が滲む朝」
磯崎憲一郎
「眼と太陽」
岡崎祥久
「ctの深い川の町」
小野正嗣
「マイクロバス」
木村紅美
「月食の日」
津村記久子
「婚礼、葬礼、その他」
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