芥川賞のすべて・のようなもの
第141回
候補作家の群像 トップページ
直木賞・芥川賞受賞作一覧
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
選考委員の群像
選評の概要
マップ

候補作家の一覧へ
前の回へ後の回へ
Last Update[H28]2016/11/9

戌井昭人
Inui Akito
生没年月日【注】 昭和46年/1971年10月22日~
経歴 東京都生まれ。玉川大学文学部演劇専攻卒、文学座付属研究所卒。
受賞歴・候補歴
  • |候補| 第141回芥川賞(平成21年/2009年上期)「まずいスープ」
  • |候補| 第31回野間文芸新人賞(平成21年/2009年)『まずいスープ』
  • |候補| 第145回芥川賞(平成23年/2011年上期)「ぴんぞろ」
  • |候補| 第33回野間文芸新人賞(平成23年/2011年)『ぴんぞろ』
  • |候補| 第147回芥川賞(平成24年/2012年上期)「ひっ」
  • |候補| 第149回芥川賞(平成25年/2013年上期)「すっぽん心中」
  • 第40回川端康成文学賞(平成26年/2014年)「すっぽん心中」
  • |候補| 第151回芥川賞(平成26年/2014年上期)「どろにやいと」
  • |候補| 第36回野間文芸新人賞(平成26年/2014年)『どろにやいと』
  • |候補| 第31回織田作之助賞(平成26年/2014年)『どろにやいと』
  • 第38回野間文芸新人賞(平成28年/2016年)『のろい男 俳優・亀岡拓次』
備考
  - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


芥川賞 第141回候補  一覧へ
「まずいスープ」(『新潮』平成21年/2009年3月号)
媒体・作品情報
誌名 「新潮」  別表記表紙 「今年105年目の文芸誌」「The Shincho Monthly」併記
巻号 第106巻 第3号  別表記1250号
印刷/発行年月日 発行 平成21年/2009年3月1日
発行者等 編集兼発行者 矢野 優 印刷者 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社(東京都)
発行所 株式会社新潮社(東京都)
総ページ数 324 表記上の枚数 表紙・目次 150枚 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×24行
×2段
本文ページ 81~127
(計47頁)
測定枚数 146
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
書誌
>>平成21年/2009年9月・新潮社刊『まずいスープ』所収
>>平成24年/2012年3月・新潮社/新潮文庫『まずいスープ』所収
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
候補者 戌井昭人 男37歳
選考委員 評価 行数 評言
山田詠美
女50歳
8 「いい味出してます。しかし、冗漫。途中で飽きちゃった。」
小川洋子
女47歳
10 「(引用者注:「よもぎ学園高等学校蹴球部」「あの子の考えることは変」と共に)私にとっては少々にぎやかすぎた。自分はこんなにも普通でない人々を描けるのだ、と声高に叫ばれると、それだけで白けてしまう。」
石原慎太郎
男76歳
10 「一番面白く読んだ。」「一種のニヒリズムに裏打ちされた、ひっちゃかめっちゃかな群像は、実はそれぞれ芯のある人間たちである種の存在感もある。それにしても題名が安易で良くない。」
黒井千次
男77歳
7 「形の崩れてしまった家族がなぜか崩壊せずに低空を飛行しつつ、逆に絶対的家族像とでもいったものを掴み出そうとする気配に興味を引かれた。」
高樹のぶ子
女63歳
0  
川上弘美
女51歳
13 「こまかで具体的な事々の書きぶり、すなわち選ぶ言葉やリズムが、とても好きでした。好き、の先に、さらに手ごわい何ものかがあればと、惜しみます。」「(引用者注:「終の住処」と共に)最終的に推しました。」
宮本輝
男62歳
19 「(引用者注:「あの子の考えることは変」と共に)他の候補作より少し高い点をつけた。」「文字どおり面白く小説が進んでいく。しかし、それだけなのだ。」「しかし、(引用者中略)戌井氏の技量も、どこにでも転がっているものではなく、新しい書き手としての跳躍力は横溢している。」
村上龍
男57歳
15 「巧みな作品で、作者はきわどい題材を上手に処理する技術と、おそらくきわどい体験も、持っている。だが惜しいことに、その技術が、作品からリアルな恐ろしさを奪ってしまっている。」
池澤夏樹
男64歳
0  
選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年9月号
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -



芥川賞 第145回候補  一覧へ
「ぴんぞろ」(『群像』平成23年/2011年6月号)
媒体・作品情報
誌名 「群像」  別表記表紙 「GUNZO」併記
巻号 第66巻 第6号
印刷/発行年月日 印刷 平成23年/2011年5月5日 発行 平成23年/2011年6月1日
発行者等 編集人 松沢賢二 発行人 市田厚志 印刷人 金子眞吾 印刷所 凸版印刷株式会社(東京都)
発行所 株式会社講談社(東京都)
総ページ数 372 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×24行
×2段
本文ページ 130~171
(計42頁)
測定枚数 132
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
書誌
>>『文藝春秋』平成23年/2011年9月号
>>平成23年/2011年8月・講談社刊『ぴんぞろ』
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
候補者 戌井昭人 男39歳
選考委員 評価 行数 評言
小川洋子
女49歳
12 「(引用者注:「あめりかむら」のきんたろうさんと共に)ルリ婆さんは、忘れ難い存在感を放っていた。」「なぜあそこで座間は死ななければならなかったのか。違和感が残った。」
山田詠美
女52歳
13 「的確な言葉を丁寧に選んで、好きでたまらない人間を真面目に描けば、おのずと場所も物語も付いて来るという小説の当り前に、久々に出会った気がする。この作者の小説世界の住人とならやって行けそうだなーという、今回は、そのシンパシー故に票を投じた次第。」
石原慎太郎
男78歳
11 「主人公の男と田舎の場末のストリップ小屋の踊り手のリッちゃんの間のアフェクションは何だったのかよくわからない。それを書き込めば作品は平凡に堕すのか、それとも別の活路もあったのか知れないが。」
黒井千次
男79歳
36 「(引用者注:主人公の「おれ」が後半に)出会う人もやはり浅草に縁のある老女であり、親のいない孫娘ともども温泉場の劇場で働く人達の人物像がふっくらと描き出され総じて人間が生きているといった体温が伝わってくる。」「ただ、受賞作として押し出すには何かが足りない。話の運びにどこかゆとりがあり過ぎるのだろうか。」
宮本輝
男64歳
8 「登場人物それぞれの水底に最も近づいていたが、話をおもしろくしようとして滑稽譚になってしまった。最後の五枚に戌井さんの作家として依って立つ何物かが刻印されていたらと惜しまれる。」
高樹のぶ子
女65歳
16 「アクの強い人物たちが繰り広げる下町や温泉場での出来事を描いて、飽きさせずに読ませる力量があるけれど、どことなく既視感もあり、何より「サイコロの目には意味がある……宇宙に繋がっている」という哲学的なテーマが、作品中で充分な説得力を持たなかったのが残念だ。」「(引用者注:「あめりかむら」と共に)私の中では得点が高かった。」
池澤夏樹
男66歳
0  
島田雅彦
男50歳
13 「獲得票は高かったものの、○はわずかに一つ。」「以前に似たような話を読んだことがあるという印象を受けてしまう。エンターテイメントを目指すなら、別にそれでいいのかもしれないが……。」
村上龍
男59歳
0  
川上弘美
女53歳
18 「魅力的な小説でした。」「いくらでも極端に書くことはできるだろうに、腰のすわらない書きようで登場人物や風俗を描写した、その腰のすわらなさが、この小説のよさだと思ったのです。」「「強く推す」と「少し推す」の半ばほどの力で推しました。」
選評出典:『文藝春秋』平成23年/2011年9月号
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -



芥川賞 第147回候補  一覧へ
「ひっ」(『新潮』平成24年/2012年6月号)
媒体・作品情報
誌名 「新潮」  別表記表紙 「今年108年目の文芸誌」「The Shincho Monthly」併記
巻号 第109巻 第6号  別表記1289号
印刷/発行年月日 発行 平成24年/2012年6月7日 発売 平成24年/2012年5月7日
発行者等 編集兼発行者 矢野 優 印刷者 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社(東京都)
発行所 株式会社新潮社(東京都)
総ページ数 308 表記上の枚数 表紙・目次 160枚 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×24行
×2段
本文ページ 147~196
(計50頁)
測定枚数 151
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
書誌
>>平成24年/2012年8月・新潮社刊『ひっ』
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
候補者 戌井昭人 男40歳
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女66歳
5 「社会からこぼれ落ちた人物たちを魅力的に造形しているが、それ自体が目的になり、何のための人物造形なのかが見えてこない。」
堀江敏幸
男48歳
14 「一見どたばたしているけれど、全体としては良い意味でも悪い意味でも、凸凹がきれいに均されている。」
小川洋子
女50歳
7 「出てくる人物たちは皆滑稽だ。しかしそれは作者の器用さによって計算された滑稽さだった。着想の面白さに留まらない、否応なくあぶり出される哀切さが、必要なのではないだろうか。」
奥泉光
男56歳
10 「(引用者注:「河童日誌」と共に)方法がどうだこうだといったことが小賢しく思えるほどの、可笑しみや発見が欲しかった。」
川上弘美
女54歳
14 「語り手の伯父であるひっさん、この小説の題のもとともなっているひっさんと、語り手に、なぜか同じような印象をもってしまい、読後感が散漫になってしまいました。いい水質の井戸をもっている作者だと思うのですが。」
山田詠美
女53歳
9 「候補作品に間に合わせようとあせって書きませんでしたか? 味のある風変わりな人物を慌てて配置した感じ。」「この作者は、もっと長いものをじっくり書いて、直木賞候補になるべき。」
島田雅彦
男51歳
25 「作者の持ち味を十分に生かせるお馴染みの「場末の低空飛行」を展開していて、面白く読める。」「エンターティンメントとしてはまずまずだが、小説としてどうか、というと、へたれの語り手と「ひっさん」なる忘れ得ぬ人物との交流の描き方が表面的で物足りず、人情噺を越えるプラスαを求めたくなる。」
宮本輝
男65歳
23 「(引用者注:「河童日誌」「ギッちょん」と共に)みな達者な文章力を持っている。(引用者中略)だが、今回の候補作は、小説を創りだすためにむりやり寄せ集めたエピソードと一風変わった登場人物たちを動かして、小説のようなものをでっちあげてしまっている。それは、いわば劇画やコミックを文章化したにすぎないのだ。」
村上龍
男60歳
0  
選評出典:『文藝春秋』平成24年/2012年9月号
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -



芥川賞 第149回候補  一覧へ

しんじゅう
「すっぽん 心中」(『新潮』平成25年/2013年1月号)
媒体・作品情報
誌名 「新潮」  別表記表紙 「今年109年目の文芸誌」「The Shincho Monthly」併記
巻号 第110巻 第1号  別表記1296号
印刷/発行年月日 発行 平成25年/2013年1月7日 発売 平成24年/2012年12月7日
発行者等 編集兼発行者 矢野 優 印刷者 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社(東京都)
発行所 株式会社新潮社(東京都)
総ページ数 420 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×25行
×2段
本文ページ 79~99
(計21頁)
測定枚数 65
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
書誌
>>平成25年/2013年8月・新潮社刊『すっぽん心中』所収
>>平成26年/2014年4月・講談社刊『文学2014』所収
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
候補者 戌井昭人 男41歳
選考委員 評価 行数 評言
小川洋子
女51歳
8 「すっぽんを殺す場面は秀逸だった。モモに隠された黒々としたエネルギーが一気に噴出している。しかしモモの存在感に比べ、田野の魅力が希薄だった。情けない田野の姿をもっと読みたかった。」
島田雅彦
男52歳
10 「個人的にはこの手の現代落語風のやさぐれ徘徊記は大好きで、戌井氏は確固たる芸風を確立している。しかし、以前の候補作「ひっ」や「ぴんぞろ」の方がはるかに作品完成度は高かった。」
堀江敏幸
男49歳
16 「《心中》とは、天然のスッポンを捕まえに行った奇妙な男女の《心中(ルビ:しんちゅう)》と、甲羅を砕かれて無駄死にしたその個体をあらわすのに過不足ない言葉だが、スッポンは養殖のほうが、やわらかくて美味らしい。ここに書かれているのは、養殖のふりをした天然である。」
高樹のぶ子
女67歳
0  
宮本輝
男66歳
9 「読みやすくてわかりやすい小品で、うまい書き手だ。だがなぜ「心中」なのかが解せない。街で知り合った男と女の、つかのまの道行きから生まれてくる世界をもっと見せてもらいたかったというのが私の感想である。」
川上弘美
女55歳
16 「濃密にも描くことのできる材料を、淡く描きつつ、それでいて奥底にうごめく不穏なものも表現されていて、わたしはこの作品に好意をいだきました。」「「短くて面白い話」に終わってしまっている、という意見もありましたが、短篇は短くていいと思うのです。」「ただし、短いからという油断が作者にあると、それはやはり「短くて面白い話」に終わってしまう。難しいです。」
山田詠美
女54歳
17 「〈物凄くスタイルが良くて、年齢は三〇歳くらいだろうか、若くして金を持っているマダム風だった〉……(引用者中略)せっかく自分だけの小説世界を作って行く冒頭で、いったい何故に、こんなにも怠惰なやり方で女を描写するのか。私には、まったく理解出来ない。ここには、そうした手抜きの文章がいくつもあって呆気に取られる。」
村上龍
男61歳
6 「(引用者注:候補作のなかで)わたしが、興味を持って読めたのは『すっぽん心中』だけだったが、作品の質と完成度は低く、積極的に推すには至らなかった。」
奥泉光
男57歳
17 「楽しく読めたが、やや重量感を欠く印象があった。これは長さの問題ではない。」「たとえば「どこが、とはいえないけれど、なんだかイイ感じがする」小説が目指されているのだとすれば、私自身がそういう小説の方法を持っていないので、もっとユーモアを、くらいのことしかとりあえずは云えない。」
選評出典:『文藝春秋』平成25年/2013年9月号
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -



芥川賞 第151回候補  一覧へ
「どろにやいと」(『群像』平成26年/2014年1月号)
媒体・作品情報
誌名 「群像」  別表記表紙 「GUNZO」併記
巻号 第69巻 第1号
印刷/発行年月日 印刷 平成25年/2013年12月7日 発行 平成26年/2014年1月1日
発行者等 編集人 佐藤とし子 発行人 唐木 厚 印刷人 金子眞吾 印刷所 凸版印刷株式会社(東京都)
発行所 株式会社講談社(東京都)
総ページ数 324 表記上の枚数 目次 130枚 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×24行
×2段
本文ページ 56~102
(計47頁)
測定枚数 147
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
書誌
>>平成26年/2014年8月・講談社刊『どろにやいと』所収
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
候補者 戌井昭人 男42歳
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女68歳
13 「土着ファンタジーとして面白かった。」「最後にカタルシスも用意されて、これまでの候補作中もっとも完成度が高かった。受賞作にしたかったが不遇な土砂崩れに巻き込まれ、一命を取り止めたものの受賞ならず。」
宮本輝
男67歳
19 「(引用者注:「メタモルフォシス」と共に)文章のうまさや安定感は評価できる。だが両作とも小説の最後のところで腰くだけとなってしまっている。」「どちらも作者の逃げだと私は感じて、まったく推せなかった。」
村上龍
男62歳
26 「わたしは三作(引用者注:「春の庭」「メタモルフォシス」と共に)いずれも評価できなかった。」「(引用者注:三作には)共通点があったように思う。作品の最後の部分、つまりラスト近くで、劇的なことが起こる。」
山田詠美
女55歳
11 「いつもながら、とんまな人々を描くのが本当に上手なんだなあ、と感心した。でも、この「いつもながら」というのが注意ポイントで、これが「真骨頂」と呼ばれるまでに成熟するのか、あるいは「マンネリ」に堕して片付けられるのか、非常に微妙なところ。」
奥泉光
男58歳
16 「(引用者注:「春の庭」と共に)作品の狙いは或る程度理解できたものの、当の狙いがいまひとつ実現できていない印象をもった。結果、両作者の力量は十分に認めながらも、作品の面白さは掴み損ねた。」
小川洋子
女52歳
40 「力みのない、とぼけた味わいを装いながら、実は丁寧に組み立てられた小説だ。」「この作品が成功した一番の要因は、救いようのない駄目な自分を抑制し、老人にお灸を売りつけている善人ぶりを、語り手が十分に意識している点にあると思う。」「以前の候補作に見られた、人の愚かさを生のまま放置する、これみよがしなところが消え、今回こそ受賞にふさわしいと思ったが、かなわなかった。残念でならない。」
島田雅彦
男53歳
18 「ろくでなしの自分探しは今や戌井昭人の確立された芸になっている」「ゆっくりではあるが確実にバージョンアップしており、受賞にふさわしいと私も思ったが、選考会の歯車がやや狂い、残念な結果になった。この次こそはおのがうちに隠しているエディプス的なものを全面的に曝け出すべきではないか。」
川上弘美
女56歳
18 「(引用者注:「春の庭」「メタモルフォシス」と共に)それぞれに香るものがありました。」「小説としての手ざわりがあるし、笑いがあるし(これはとっても大事なことです)、最後のばたばただって、なかなかうまい幕切れなのです。ただ……、と、何かひとこと言いたくなってしまうのはなぜなのだろう。」「でもやっぱり、何かが足りない。いったい何が? わたしにもわかりません。」
堀江敏幸
男50歳
20 「父が遺した顧客名簿を頼りに小さな村の古い顧客を訪ねる展開は、堂に入っている。まさしくそのお堂の光を背負った女性の、太もものトンネルに頭を突っ込む馬鹿らしさもいい。ただ、彼女の正体が明らかになり、兄と主人公を襲うあたりで、火を久しく保つはずのお灸が不意に半減期を迎えた気がする。」
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年9月号
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -



ページの先頭へ

トップページ直木賞・芥川賞受賞作一覧受賞作・候補作一覧受賞作家の群像選考委員の群像
選評の概要マップ || 候補作家の一覧へ前の回へ次の回へ