芥川賞のすべて・のようなもの
第142回
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平成21年/2009年下半期
(平成22年/2010年1月14日決定発表/『文藝春秋』平成22年/2010年3月号選評掲載)
選考委員  池澤夏樹
男64歳
小川洋子
女47歳
石原慎太郎
男77歳
高樹のぶ子
女63歳
黒井千次
男77歳
宮本輝
男62歳
山田詠美
女50歳
村上龍
男57歳
川上弘美
女51歳
選評総行数  83 79 60 85 81 83 83 78 71
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
大森兄弟 「犬はいつも足元にいて」
172
男男34歳33歳
4 27 13 34 8 5 18 0 20
羽田圭介 「ミート・ザ・ビート」
160
男24歳
3 18 7 0 4 5 18 0 17
藤代泉 「ボーダー&レス」
207
女27歳
2 20 8 0 40 8 22 0 12
舞城王太郎 「ビッチマグネット」
303
不明36歳
83 20 10 29 15 8 11 25 16
松尾スズキ 「老人賭博」
253
男47歳
0 14 7 12 14 5 14 16 18
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成22年/2010年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
池澤夏樹男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
キャラからの自立 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
4 「(引用者注:「ミート・ザ・ビート」「ボーダー&レス」と共に)青春=生活路線」
羽田圭介
男24歳
3 「(引用者注:「犬はいつも足元にいて」「ボーダー&レス」と共に)青春=生活路線」
藤代泉
女27歳
2 「(引用者注:「犬はいつも足元にいて」「ミート・ザ・ビート」と共に)青春=生活路線」
舞城王太郎
不明36歳
83 「いろいろな意味で新しい面のある優れた小説であり、その新しさは正に時代が必要としているものだ。」「精神の成長と自立という主題が堂々と中心にある。」「かつて芥川賞は村上春樹、吉本ばなな、高橋源一郎、島田雅彦に賞を出せなかった。今の段階で舞城王太郎がいずれ彼らに並ぶことを保証するつもりはない。(引用者中略)それでも、今回の授賞作なしという結果の失点は大きいと思う。」
松尾スズキ
男47歳
0  
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他の選考委員
小川洋子
石原慎太郎
高樹のぶ子
黒井千次
宮本輝
山田詠美
村上龍
川上弘美
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選考委員
小川洋子女47歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
どこかに甘えが 総行数79 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
27 「唯一の丸をつけた。主人公僕の幼い語り口とは対照的に、彼がとらえる世界のありようはあまりにもいびつで入り組んでいて、死臭に満ちている。(引用者中略)言葉を持たない者が一人ぽつんと取り残された時、本来そこにあるべきでない何かを掘り返してしまうのではないか。犬が広場で腐敗した肉を掘り起こすように。そんな恐怖が見事に描かれている。」
羽田圭介
男24歳
18 「もしこれが、改造車で田舎の産業道路を時速百キロで飛ばしているような、疾走感あふれる文体で書かれていたとしたら、もっと本来の魅力を発揮できたのに、と残念に思う。」
藤代泉
女27歳
20 「(引用者注:「ビッチマグネット」と共に)語り手たちはなぜか、肝心なところにくると自問をはじめる。(引用者中略)この自問の繰り返しが私には受け入れがたかった。問い掛けの声の響きには、書き手として、どこか甘えがあると思う。」
舞城王太郎
不明36歳
20 「(引用者注:「ボーダー&レス」と共に)語り手たちはなぜか、肝心なところにくると自問をはじめる。(引用者中略)この自問の繰り返しが私には受け入れがたかった。問い掛けの声の響きには、書き手として、どこか甘えがあると思う。」
松尾スズキ
男47歳
14 「登場人物たちは皆生き生きとしているのに、なぜか生身の人間として動いていない。あらかじめ脚本を渡された役者たちが演じている人物のようにしか見えない。」「結局、人物もエピソードも、この小説をおもしろくするためにある役割を負わされた駒にしかなれなかったのだろう。」
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他の選考委員
池澤夏樹
石原慎太郎
高樹のぶ子
黒井千次
宮本輝
山田詠美
村上龍
川上弘美
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選考委員
石原慎太郎男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
どうにも、こうにも 総行数60 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
13 「兄弟二人して事前にメディアのインタビューにも応じているそうな。小説はあくまで一人で書くものとはいわぬが、こうした姿勢は何やら世間への当てこみ、おもねりを感じさせるが。」「(引用者注:「ミート・ザ・ビート」と共に)論外として最初から選から外された」
羽田圭介
男24歳
7 「(引用者注:「犬はいつも足元にいて」と共に)論外として最初から選から外された」
藤代泉
女27歳
8 「今一つ問題の核心に触れてこない。作品中しきりに吸われる煙草もいかなるメタファなのかよくわからない。
舞城王太郎
不明36歳
10 「だらだら長いだけで、小説として本質何をいいたいのかわからない。」「終盤の普通活字の四倍の大きさで書きこまれたカタカナの無意味さは作者の言葉の未熟さを露呈させているだけだ。」
松尾スズキ
男47歳
7 「物語としては一応読ませるが印象はいかにも薄い。」
  「これがこの国の現代における新しい文学の可能性の表示なのだろうか。何かがおかしい、何かが衰弱している、何かが見当違いだ。」「現代における風俗の情報が氾濫膾炙している状況の中で、新しい文学を志す新人たちが一種のマイナス・スパイラルに落ちこみ低迷しているとの観を免れ得ない。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
高樹のぶ子
黒井千次
宮本輝
山田詠美
村上龍
川上弘美
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選考委員
高樹のぶ子女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「愛と覆面の共作」 総行数85 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
34 「陰湿で卑屈な人間たちを、暗い腐臭の中に物思わし気に描いていて、妙にまとまりが良かった。」「小説は衝動と抑制、懐疑と肯定、言葉の放出とそれを外側から見る目、破壊衝動と構築本能という、相反する力を無意識のうちにコントロールしながら書くものだ。共作を文学として認めることは、この真反対の力を別々の人間が受け持つことを認めることでもある。(引用者中略)こうした方法でたとえ出来映えの良い作品が生まれたとしても、どれほどの意味があるのだろう。」
羽田圭介
男24歳
0  
藤代泉
女27歳
0  
舞城王太郎
不明36歳
29 「裏の裏は表、という屈折した回路をとりながら、少女の成長が語られる。けなげな家族小説になっているし、(引用者中略)自己確立の小説にもなっている。ただ、このタイトルは矮小でつまらない。もっと大きいものが描かれているのではないか。モラリストの本性は見えたのだから、作者も陽の下に顔を出して欲しい。」
松尾スズキ
男47歳
12 「安心して面白く読めたけれど、映画作りの裏を書きたかったのか老俳優の哀れを書きたかったのか。」「最後に老人の圧倒的な凄みと逆襲が欲しかった。そう感じるのは、この作品がエンタテインメントになっているからだろう。」
  「今回、候補作の多くで、依存関係、共犯意識、加虐的な衝動、損得勘定で人と人の繋がりが描かれていた。こうした関係性はどんなに鋭く執拗に描かれていても、作品としては厚味に欠けて弱い。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
石原慎太郎
黒井千次
宮本輝
山田詠美
村上龍
川上弘美
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選考委員
黒井千次男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新鮮な一作 総行数81 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
8 「色々な仕掛けや工夫はあってもそれがうまく焦点を結ばず、思わせばりなままで結局何が書きたかったのかがわからぬまま終ってしまった感がある。」
羽田圭介
男24歳
4 「主人公が予備校に通う浪人中の若者であるとの設定に無理がある。」
藤代泉
女27歳
40 「最も強い読後感を与えられた」「テーマの重さと、それに愚直なまでに対決しようとする姿勢に注目した。」「隠されがちな歴史的課題ともいえるものの一つを、現在の光のもとに描こうとしている点に新鮮さを感じた。」「ただ、主人公の女性に対する甘えと身勝手は、どこかで「在日」の趙成佑に対する態度と重なるところがある筈なのに、それが平行線のまま終っているのは残念である。」
舞城王太郎
不明36歳
15 「これだけの長さが必要か、と疑問が残る。意図は伝わって来るし、そのための人物の出し入れなどにも心は配られているが、語られる話の中身から受ける印象があまり豊かとはいえない。」
松尾スズキ
男47歳
14 「映画制作の現場に生きる人達の姿をスピード感のある文体で描き出した活気のある作品である。」「登場する人物が多く、その描きわけも認められるが、小説の作りがやや乱暴に過ぎるのではないか、とも感じた。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
石原慎太郎
高樹のぶ子
宮本輝
山田詠美
村上龍
川上弘美
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選考委員
宮本輝男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
行間のない文学 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
5 「犬と土のなかの肉についての暗喩がつまらなかった。観念の幼稚さ、という代物だ。」
羽田圭介
男24歳
5 「作者の幼さだけでなく、実人生からの体験の少なさが、はからずも小説のなかに露呈されていた。」
藤代泉
女27歳
8 「作者の才を感じさせるが、主人公と在日韓国人の友だちとの関係に血肉がない。(引用者中略)だが、材に恵まれれば、もっといいものが書ける人だと思う。」
舞城王太郎
不明36歳
8 「これまでの氏の作品のなかでは、私はもっとも高く評価できると思う。それぞれの人間がよく書けているが、書かれてあるもの以上の何かが行間から湧き出てこない。」
松尾スズキ
男47歳
5 「上手な書きっぷりではあるが、一種のドタバタ喜劇以上のものを与えてくれない。」
  「委員ひとりひとりは、言葉は違っても、どの候補作に対しても「何かが足りない」という意味の、それもかなり辛辣な評価をした。(引用者中略)自分にとって決定的に足りない何かがいったい何であるのかについて、結局は自分で考え抜いて掴んだものしか現場では役に立たないのだ。」「えらそうにこれを書いている私も、一篇の小説を仕上げたあと、いつも何かが足りないと頭をかかえている。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
石原慎太郎
高樹のぶ子
黒井千次
山田詠美
村上龍
川上弘美
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選考委員
山田詠美女50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「選評」 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
18 「全体に漂う不穏さが綺麗に統一されているのは比喩が上手いからかもしれない。でもねえ……〈フィリピンのジャングル〉なんか出して来ちゃうところが、これまた勘違いに「文学的」だなあと感じたのでした。」「物議を醸した共作云々より、受賞作に値しないということの方が重要だ、などとも思ったりしたのです。」
羽田圭介
男24歳
18 「この作者が、「文学的」描写と思い込んでいる箇所は、すべて、おおいなる勘違い。どこぞの編集者に入れ知恵されたのではないかと勘ぐりたくもなって来る。全部外すべき。あ、それだと〈すべてのものが、無に返〉っちゃうか。」
藤代泉
女27歳
22 「主人公の頼りない、けれども確固たるNGとOKのはざまにある価値観のラインを、丁寧に描いている。」「しかしながら、若い世代の新しい在日の価値観を提示したとまでは思わない。〈ただ自分の塗られた色を見つめ続けるソンウの孤独〉などと思ってしまう日本人の主人公はステレオタイプで、またもや、手っ取り早く「文学的」だなあ、と呆気に取られたのでした。」
舞城王太郎
不明36歳
11 「安達哲の漫画の「バカ姉弟」が、舞城版倫理社会の教科書を読みながら成長すると、こうなるのではないか。」「この作品は壮大な物語の助走のように思えてならない。」
松尾スズキ
男47歳
14 「やっぱりなあ、こう来なくっちゃ! これこそ年の功ですよ、このくどさ。」「哀しくてやり切れないあまりに笑っちゃう。私には、この作品が一番おもしろかった。でも、芥川賞より、むしろ直木賞?」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
石原慎太郎
高樹のぶ子
黒井千次
宮本輝
村上龍
川上弘美
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選考委員
村上龍男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数78 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
0  
羽田圭介
男24歳
0  
藤代泉
女27歳
0  
舞城王太郎
不明36歳
25 「巧みな作品で、情景描写と心理描写が極端に少なく、身近な人との会話と、主人公の心象や印象や独白で物語が進んでいくという独特の構造を持った小説だった。」「つかみどころがなく、かつ閉塞した社会と人間関係を描く上で効果的だと思う。」「(引用者注:「老人賭博」と共に)わたしは受賞作として推すことができなかった。物語そのものがつまらなかったからだ。」「技術が巧み(引用者中略)という長所は、作家の「偏愛」が感じられない場合には退屈の源泉となる。」
松尾スズキ
男47歳
16 「大勢の登場人物の書き分けや、映画制作の現場の混乱などが破綻なく面白おかしく描かれていた。」「(引用者注:「ビッチマグネット」と共に)わたしは受賞作として推すことができなかった。物語そのものがつまらなかったからだ。」「破綻なく面白おかしく読めるという長所は、作家の「偏愛」が感じられない場合には退屈の源泉となる。」
  「今回は全般的に低調で、選考会も盛り上がりに欠けた。」「本来文学は、切実な問いを抱えてサバイバルしようとしている人に向けて、公正な社会と精神の自由の可能性を示し、「その問いと、サバイバルするための努力は間違っていない」というメッセージを物語に織り込んで届けるものだった。ダメな文学は、「切実な問いを抱える必要はない」という「体制的な」メッセージを結果的に送りつけてしまい、テレビのバラエティのような悲惨な媒体に堕してしまう。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
石原慎太郎
高樹のぶ子
黒井千次
宮本輝
山田詠美
川上弘美
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選考委員
川上弘美女51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ほんの少し、ぐず 総行数71 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大森兄弟
男男34歳33歳
20 「読んでいる間に何回か頭に浮かんだのは「問題提起」という言葉でした。」「「問題」が、小説の中で提起されているとしても、小説はそれらの問いに答える必要など、まったくありません。それはよく知っているのです。でもやっぱり何回も思ってしまった。この「問題提起」に、作者自身はどう答える心づもりがあるのだろうなあ、と。」
羽田圭介
男24歳
17 「問題は、「売春婦っぽい」という言葉の使いようです。そのような流通している「売春婦っぽさ」に対して、いちいち「あれ?」と思いながら書いてゆくのが、小説を書くということなのではないかと思うのです。たとえある種の典型的な登場人物たちを書く場合でも、です。」
藤代泉
女27歳
12 「作者が作中の人物たちに選ばせた距離のとりよう。そのとりようを表現する作中のさまざまなやりかたが、とても洗練されていました。でも洗練は、ちょっとこわい。作者にそのつもりがなくとも、小説の中のものごとが二項対立的にみえてしまうことがあるからです。」
舞城王太郎
不明36歳
16 「チャーミングな小説だと思いました。異常さを異常視しない腰のすわりかたがいいと思いました。」「(引用者注:「老人賭博」と共に)わたしは少しずつ推しました。少しずつだったのは、両小説とも、なんとはなしに気弱だったから。気弱でチャーミングでほんの少し、ぐず。」
松尾スズキ
男47歳
18 「登場人物たち全員に幸がある。よかったよねえ、と、小説が終わったあと、登場人物たち全員と打ち上げをして、(引用者中略)夜遅くまで騒いで名残を惜しみたい気持ちになりました。」「(引用者注:「ビッチマグネット」と共に)わたしは少しずつ推しました。少しずつだったのは、両小説とも、なんとはなしに気弱だったから。気弱でチャーミングでほんの少し、ぐず。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
石原慎太郎
高樹のぶ子
黒井千次
宮本輝
山田詠美
村上龍
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候補者・作品
大森兄弟男男34歳33歳×各選考委員 
「犬はいつも足元にいて」
中篇 172
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男64歳
4 「(引用者注:「ミート・ザ・ビート」「ボーダー&レス」と共に)青春=生活路線」
小川洋子
女47歳
27 「唯一の丸をつけた。主人公僕の幼い語り口とは対照的に、彼がとらえる世界のありようはあまりにもいびつで入り組んでいて、死臭に満ちている。(引用者中略)言葉を持たない者が一人ぽつんと取り残された時、本来そこにあるべきでない何かを掘り返してしまうのではないか。犬が広場で腐敗した肉を掘り起こすように。そんな恐怖が見事に描かれている。」
石原慎太郎
男77歳
13 「兄弟二人して事前にメディアのインタビューにも応じているそうな。小説はあくまで一人で書くものとはいわぬが、こうした姿勢は何やら世間への当てこみ、おもねりを感じさせるが。」「(引用者注:「ミート・ザ・ビート」と共に)論外として最初から選から外された」
高樹のぶ子
女63歳
34 「陰湿で卑屈な人間たちを、暗い腐臭の中に物思わし気に描いていて、妙にまとまりが良かった。」「小説は衝動と抑制、懐疑と肯定、言葉の放出とそれを外側から見る目、破壊衝動と構築本能という、相反する力を無意識のうちにコントロールしながら書くものだ。共作を文学として認めることは、この真反対の力を別々の人間が受け持つことを認めることでもある。(引用者中略)こうした方法でたとえ出来映えの良い作品が生まれたとしても、どれほどの意味があるのだろう。」
黒井千次
男77歳
8 「色々な仕掛けや工夫はあってもそれがうまく焦点を結ばず、思わせばりなままで結局何が書きたかったのかがわからぬまま終ってしまった感がある。」
宮本輝
男62歳
5 「犬と土のなかの肉についての暗喩がつまらなかった。観念の幼稚さ、という代物だ。」
山田詠美
女50歳
18 「全体に漂う不穏さが綺麗に統一されているのは比喩が上手いからかもしれない。でもねえ……〈フィリピンのジャングル〉なんか出して来ちゃうところが、これまた勘違いに「文学的」だなあと感じたのでした。」「物議を醸した共作云々より、受賞作に値しないということの方が重要だ、などとも思ったりしたのです。」
村上龍
男57歳
0  
川上弘美
女51歳
20 「読んでいる間に何回か頭に浮かんだのは「問題提起」という言葉でした。」「「問題」が、小説の中で提起されているとしても、小説はそれらの問いに答える必要など、まったくありません。それはよく知っているのです。でもやっぱり何回も思ってしまった。この「問題提起」に、作者自身はどう答える心づもりがあるのだろうなあ、と。」
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他の候補作
羽田圭介
「ミート・ザ・ビート」
藤代泉
「ボーダー&レス」
舞城王太郎
「ビッチマグネット」
松尾スズキ
「老人賭博」
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候補者・作品
羽田圭介男24歳×各選考委員 
「ミート・ザ・ビート」
中篇 160
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男64歳
3 「(引用者注:「犬はいつも足元にいて」「ボーダー&レス」と共に)青春=生活路線」
小川洋子
女47歳
18 「もしこれが、改造車で田舎の産業道路を時速百キロで飛ばしているような、疾走感あふれる文体で書かれていたとしたら、もっと本来の魅力を発揮できたのに、と残念に思う。」
石原慎太郎
男77歳
7 「(引用者注:「犬はいつも足元にいて」と共に)論外として最初から選から外された」
高樹のぶ子
女63歳
0  
黒井千次
男77歳
4 「主人公が予備校に通う浪人中の若者であるとの設定に無理がある。」
宮本輝
男62歳
5 「作者の幼さだけでなく、実人生からの体験の少なさが、はからずも小説のなかに露呈されていた。」
山田詠美
女50歳
18 「この作者が、「文学的」描写と思い込んでいる箇所は、すべて、おおいなる勘違い。どこぞの編集者に入れ知恵されたのではないかと勘ぐりたくもなって来る。全部外すべき。あ、それだと〈すべてのものが、無に返〉っちゃうか。」
村上龍
男57歳
0  
川上弘美
女51歳
17 「問題は、「売春婦っぽい」という言葉の使いようです。そのような流通している「売春婦っぽさ」に対して、いちいち「あれ?」と思いながら書いてゆくのが、小説を書くということなのではないかと思うのです。たとえある種の典型的な登場人物たちを書く場合でも、です。」
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他の候補作
大森兄弟
「犬はいつも足元にいて」
藤代泉
「ボーダー&レス」
舞城王太郎
「ビッチマグネット」
松尾スズキ
「老人賭博」
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候補者・作品
藤代泉女27歳×各選考委員 
「ボーダー&レス」
中篇 207
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男64歳
2 「(引用者注:「犬はいつも足元にいて」「ミート・ザ・ビート」と共に)青春=生活路線」
小川洋子
女47歳
20 「(引用者注:「ビッチマグネット」と共に)語り手たちはなぜか、肝心なところにくると自問をはじめる。(引用者中略)この自問の繰り返しが私には受け入れがたかった。問い掛けの声の響きには、書き手として、どこか甘えがあると思う。」
石原慎太郎
男77歳
8 「今一つ問題の核心に触れてこない。作品中しきりに吸われる煙草もいかなるメタファなのかよくわからない。
高樹のぶ子
女63歳
0  
黒井千次
男77歳
40 「最も強い読後感を与えられた」「テーマの重さと、それに愚直なまでに対決しようとする姿勢に注目した。」「隠されがちな歴史的課題ともいえるものの一つを、現在の光のもとに描こうとしている点に新鮮さを感じた。」「ただ、主人公の女性に対する甘えと身勝手は、どこかで「在日」の趙成佑に対する態度と重なるところがある筈なのに、それが平行線のまま終っているのは残念である。」
宮本輝
男62歳
8 「作者の才を感じさせるが、主人公と在日韓国人の友だちとの関係に血肉がない。(引用者中略)だが、材に恵まれれば、もっといいものが書ける人だと思う。」
山田詠美
女50歳
22 「主人公の頼りない、けれども確固たるNGとOKのはざまにある価値観のラインを、丁寧に描いている。」「しかしながら、若い世代の新しい在日の価値観を提示したとまでは思わない。〈ただ自分の塗られた色を見つめ続けるソンウの孤独〉などと思ってしまう日本人の主人公はステレオタイプで、またもや、手っ取り早く「文学的」だなあ、と呆気に取られたのでした。」
村上龍
男57歳
0  
川上弘美
女51歳
12 「作者が作中の人物たちに選ばせた距離のとりよう。そのとりようを表現する作中のさまざまなやりかたが、とても洗練されていました。でも洗練は、ちょっとこわい。作者にそのつもりがなくとも、小説の中のものごとが二項対立的にみえてしまうことがあるからです。」
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他の候補作
大森兄弟
「犬はいつも足元にいて」
羽田圭介
「ミート・ザ・ビート」
舞城王太郎
「ビッチマグネット」
松尾スズキ
「老人賭博」
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候補者・作品
舞城王太郎不明36歳×各選考委員 
「ビッチマグネット」
中篇 303
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男64歳
83 「いろいろな意味で新しい面のある優れた小説であり、その新しさは正に時代が必要としているものだ。」「精神の成長と自立という主題が堂々と中心にある。」「かつて芥川賞は村上春樹、吉本ばなな、高橋源一郎、島田雅彦に賞を出せなかった。今の段階で舞城王太郎がいずれ彼らに並ぶことを保証するつもりはない。(引用者中略)それでも、今回の授賞作なしという結果の失点は大きいと思う。」
小川洋子
女47歳
20 「(引用者注:「ボーダー&レス」と共に)語り手たちはなぜか、肝心なところにくると自問をはじめる。(引用者中略)この自問の繰り返しが私には受け入れがたかった。問い掛けの声の響きには、書き手として、どこか甘えがあると思う。」
石原慎太郎
男77歳
10 「だらだら長いだけで、小説として本質何をいいたいのかわからない。」「終盤の普通活字の四倍の大きさで書きこまれたカタカナの無意味さは作者の言葉の未熟さを露呈させているだけだ。」
高樹のぶ子
女63歳
29 「裏の裏は表、という屈折した回路をとりながら、少女の成長が語られる。けなげな家族小説になっているし、(引用者中略)自己確立の小説にもなっている。ただ、このタイトルは矮小でつまらない。もっと大きいものが描かれているのではないか。モラリストの本性は見えたのだから、作者も陽の下に顔を出して欲しい。」
黒井千次
男77歳
15 「これだけの長さが必要か、と疑問が残る。意図は伝わって来るし、そのための人物の出し入れなどにも心は配られているが、語られる話の中身から受ける印象があまり豊かとはいえない。」
宮本輝
男62歳
8 「これまでの氏の作品のなかでは、私はもっとも高く評価できると思う。それぞれの人間がよく書けているが、書かれてあるもの以上の何かが行間から湧き出てこない。」
山田詠美
女50歳
11 「安達哲の漫画の「バカ姉弟」が、舞城版倫理社会の教科書を読みながら成長すると、こうなるのではないか。」「この作品は壮大な物語の助走のように思えてならない。」
村上龍
男57歳
25 「巧みな作品で、情景描写と心理描写が極端に少なく、身近な人との会話と、主人公の心象や印象や独白で物語が進んでいくという独特の構造を持った小説だった。」「つかみどころがなく、かつ閉塞した社会と人間関係を描く上で効果的だと思う。」「(引用者注:「老人賭博」と共に)わたしは受賞作として推すことができなかった。物語そのものがつまらなかったからだ。」「技術が巧み(引用者中略)という長所は、作家の「偏愛」が感じられない場合には退屈の源泉となる。」
川上弘美
女51歳
16 「チャーミングな小説だと思いました。異常さを異常視しない腰のすわりかたがいいと思いました。」「(引用者注:「老人賭博」と共に)わたしは少しずつ推しました。少しずつだったのは、両小説とも、なんとはなしに気弱だったから。気弱でチャーミングでほんの少し、ぐず。」
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他の候補作
大森兄弟
「犬はいつも足元にいて」
羽田圭介
「ミート・ザ・ビート」
藤代泉
「ボーダー&レス」
松尾スズキ
「老人賭博」
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候補者・作品
松尾スズキ男47歳×各選考委員 
「老人賭博」
中篇 253
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男64歳
0  
小川洋子
女47歳
14 「登場人物たちは皆生き生きとしているのに、なぜか生身の人間として動いていない。あらかじめ脚本を渡された役者たちが演じている人物のようにしか見えない。」「結局、人物もエピソードも、この小説をおもしろくするためにある役割を負わされた駒にしかなれなかったのだろう。」
石原慎太郎
男77歳
7 「物語としては一応読ませるが印象はいかにも薄い。」
高樹のぶ子
女63歳
12 「安心して面白く読めたけれど、映画作りの裏を書きたかったのか老俳優の哀れを書きたかったのか。」「最後に老人の圧倒的な凄みと逆襲が欲しかった。そう感じるのは、この作品がエンタテインメントになっているからだろう。」
黒井千次
男77歳
14 「映画制作の現場に生きる人達の姿をスピード感のある文体で描き出した活気のある作品である。」「登場する人物が多く、その描きわけも認められるが、小説の作りがやや乱暴に過ぎるのではないか、とも感じた。」
宮本輝
男62歳
5 「上手な書きっぷりではあるが、一種のドタバタ喜劇以上のものを与えてくれない。」
山田詠美
女50歳
14 「やっぱりなあ、こう来なくっちゃ! これこそ年の功ですよ、このくどさ。」「哀しくてやり切れないあまりに笑っちゃう。私には、この作品が一番おもしろかった。でも、芥川賞より、むしろ直木賞?」
村上龍
男57歳
16 「大勢の登場人物の書き分けや、映画制作の現場の混乱などが破綻なく面白おかしく描かれていた。」「(引用者注:「ビッチマグネット」と共に)わたしは受賞作として推すことができなかった。物語そのものがつまらなかったからだ。」「破綻なく面白おかしく読めるという長所は、作家の「偏愛」が感じられない場合には退屈の源泉となる。」
川上弘美
女51歳
18 「登場人物たち全員に幸がある。よかったよねえ、と、小説が終わったあと、登場人物たち全員と打ち上げをして、(引用者中略)夜遅くまで騒いで名残を惜しみたい気持ちになりました。」「(引用者注:「ビッチマグネット」と共に)わたしは少しずつ推しました。少しずつだったのは、両小説とも、なんとはなしに気弱だったから。気弱でチャーミングでほんの少し、ぐず。」
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他の候補作
大森兄弟
「犬はいつも足元にいて」
羽田圭介
「ミート・ザ・ビート」
藤代泉
「ボーダー&レス」
舞城王太郎
「ビッチマグネット」
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