芥川賞のすべて・のようなもの
第132回
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平成16年/2004年下半期
(平成17年/2005年1月13日決定発表/『文藝春秋』平成17年/2005年3月号選評掲載)
選考委員  高樹のぶ子
女58歳
池澤夏樹
男59歳
石原慎太郎
男72歳
古井由吉
男67歳
黒井千次
男72歳
宮本輝
男57歳
河野多恵子
女78歳
村上龍
男52歳
山田詠美
女45歳
三浦哲郎
男73歳
選評総行数  41 55 74 45 42 49 48 55 43  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
阿部和重 「グランド・フィナーレ」
196
男36歳
21 13 30 0 20 34 3 52 6    
石黒達昌 「目をとじるまでの短かい間」
105
男43歳
11 0 18 27 0 0 0 0 5    
井村恭一 「不在の姉」
108
男37歳
0 9 0 8 0 0 0 0 4    
白岩玄 「野ブタ。をプロデュース」
273
男21歳
3 8 10 0 8 5 26 0 7    
田口賢司 「メロウ1983」
186
男44歳
0 17 0 0 0 0 0 0 7    
中島たい子 「漢方小説」
183
女35歳
0 5 0 0 5 7 17 0 8    
山崎ナオコーラ 「人のセックスを笑うな」
118
女26歳
6 0 11 0 5 6 13 0 6    
                  欠席
書面回答
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年3月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
高樹のぶ子女58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
異常者の内面 総行数41 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
21 「少女偏愛性癖者の内面にこもる熱が、ひんやりと伝わってくる、明るくて無邪気で無気味な小説である。」「人間の内側に寄り添って見る場合にしか経験できない、汗ばみ息苦しくなるような怖さがある。これは文学にしか果せないことだ。」「肩パットが入ったような勢い込んだ文章が、読み進むにつれて主人公の病的な匂いを支えていることに気がついた。」
石黒達昌
男43歳
11 「悪意の存在しない世界は医者の目に映るヒューマニズムにほぼ重なっていて、それが心地良いと同時に物足りなくもあった。好印象を持ったが強くは押せなかった。」
井村恭一
男37歳
0  
白岩玄
男21歳
3 「お話づくりに夢中で、饒舌な文章に勢いはあるけれど幼い。」
田口賢司
男44歳
0  
中島たい子
女35歳
0  
山崎ナオコーラ
女26歳
6 「ユリという女に存在感があり、最近の若い男は果してこんなに透明で薄味だろうかと疑いつつも、年齢の離れた恋愛に納得させられた。」
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他の選考委員
池澤夏樹
石原慎太郎
古井由吉
黒井千次
宮本輝
河野多恵子
村上龍
山田詠美
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選考委員
池澤夏樹男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
13 「今から受賞作として広く読まれるべきは何か。阿部和重さんの「グランド・フィナーレ」以外にはないだろう。」「これは受賞に価する作品である(本当は前回の候補作の「ニッポニアニッポン」で受賞できればよかったのだが)。」
石黒達昌
男43歳
0  
井村恭一
男37歳
9 「幻想小説では(引用者中略)奔放な展開の意味を最後には読者に納得させなければならない。ここには広げる力はあるけれども、それを凝縮して意味づける力が働いていない。」
白岩玄
男21歳
8 「とても上手だが、このうまさはむしろエンターテインメントのそれだ。」「みごとに構築されているが、しかし作者は冒険をしていない。」
田口賢司
男44歳
17 「ぼくの好みに叶うものだった。伝書鳩サムの話なんて哀切でうっとりする。」「だからまずはこれを推したけれど、それはぼくの好みの表明であって、これが受賞するとは思わなかった。他の委員からの支援もほとんどなかった。」
中島たい子
女35歳
5 「巧みにまとまった作品だが、小説というもの、読者を癒すよりは危機へ誘い出してほしいと思う。」
山崎ナオコーラ
女26歳
0  
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
古井由吉
黒井千次
宮本輝
河野多恵子
村上龍
山田詠美
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選考委員
石原慎太郎男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
不毛の時間 総行数74 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
30 「私は全く評価出来なかった。」「主人公の少女への偏愛という異常性の所以が、自分の子供の裸の写真を撮って離婚されたという説明に終わっているだけで、小説としての怖さがどこにもない。」「複数の選考委員の間で、多少瑕瑾はあっても、この作者にはもうそろそろこの賞を与えてもいいのではないかという声があったが、そうした発想はこの伝統ある文学賞の本質を損なうものではないかと危惧している。」
石黒達昌
男43歳
18 「一番不安気なく読んだ。」「小振りな作品だが、作者自身が医師のせいだろう扱い慣れた世界を描いている感じで文体もしっかりしている。」「未だに保持している亡妻の肉体の組織の扱いなどもっと膨らむ素材がありながら、作品に重みが感じられなく惜しい気がする。」
井村恭一
男37歳
0  
白岩玄
男21歳
10 「高校生の自意識をかなり巧みなタッチで描いているが、会話の終わりにつけられている(笑)といった注釈は当節流行の漫画の手法に似ていて軽すぎる。しかしまだ二十一歳という作者の若さは、近い将来もっと大きく確かな花を咲かせるに違いない。」
田口賢司
男44歳
0  
中島たい子
女35歳
0  
山崎ナオコーラ
女26歳
11 「年上の女との交情を描きながら一向にセンシュアルではなく、例えばラディゲの「肉体の悪魔」のようなセンシュアルならずしてのリリスムも伝わってこない。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
古井由吉
黒井千次
宮本輝
河野多恵子
村上龍
山田詠美
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選考委員
古井由吉男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
尚早の老い 総行数45 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
0  
石黒達昌
男43歳
27 「老境小説と読める。それらしい香りさえする。ところが主人公の医師は、どう読んでも、男盛り働き盛りの年齢にある。」「医療とは限らぬことだ。働き盛りの人間はつねに先端の場に、先端のつもりはなくても立たされ、そこに尚早の老いが迫る。さらに追うべきテーマだ。」
井村恭一
男37歳
8 「存在と不在の境もぼやけて、肉親三人寄って物を食べる場面のなまなましさは、読後の印象に遺った。」
白岩玄
男21歳
0  
田口賢司
男44歳
0  
中島たい子
女35歳
0  
山崎ナオコーラ
女26歳
0  
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
黒井千次
宮本輝
河野多恵子
村上龍
山田詠美
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選考委員
黒井千次男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数42 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
20 「欲望そのものより結果として与えられる苦痛にウェイトが置かれ、暗い衝動の辿る道程が浮き彫りにされるところに重量感がある。」「自分の娘に対する心情と他の少女に向う欲求との違いなど必ずしも描き切れていない恨みはあるものの、生の捩れを追う筆に確かな手応えを覚えた。」
石黒達昌
男43歳
0  
井村恭一
男37歳
0  
白岩玄
男21歳
8 「自己を演出し他人をプロデュースする高校生の日常に興味を惹かれるものの、冗漫で長過ぎるとの印象が残る。」
田口賢司
男44歳
0  
中島たい子
女35歳
5 「独身女性の日々の起伏に漢方医療の視点を導入し、精神を物質的に眺めようとする姿勢に斬新なものを感じた。」
山崎ナオコーラ
女26歳
5 「作品の短かさに美点がある。それでいて言いたいことはしっかり伝わってくる。」
  「受賞には至らなかったものの、次作を待ちたいとの思いを強くする候補作が今回は特に多かった。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
古井由吉
宮本輝
河野多恵子
村上龍
山田詠美
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選考委員
宮本輝男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
素材の肉厚化 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
34 「これまでの氏の作品と比して、その素材も文章も構成も機微が増し、登場人物それぞれの存在感が肉厚化したと感じて、私は受賞作に推した。」「けれども、受賞に反対する委員の意見は辛辣で、一時は受賞作なしという流れにもなりかけた。」「阿部氏の小説が「時代」の流れに沿った創造物としての土台しか見せていないからかもしれない。」
石黒達昌
男43歳
0  
井村恭一
男37歳
0  
白岩玄
男21歳
5 「票数のうえでは惜しくも受賞を逸した」「(引用者注:「人のセックスを笑うな」と共に)私にはどうしても幼さが目についてしまって、」
田口賢司
男44歳
0  
中島たい子
女35歳
7 「魅力を感じて受賞作に推した。軽さが表に出ているが、どうしてなかなか練達な筆であり、したたかな書き手だと思う。」
山崎ナオコーラ
女26歳
6 「(引用者注:「野ブタ。をプロデュース」と共に)私にはどうしても幼さが目についてしまって、」
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
古井由吉
黒井千次
河野多恵子
村上龍
山田詠美
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選考委員
河野多恵子女78歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三作者の次作に関心 総行数48 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
3 「残念ながら根本的な古めかしさを感じるにとどまった。」
石黒達昌
男43歳
0  
井村恭一
男37歳
0  
白岩玄
男21歳
26 「興味深く読んだ。表現しようとしていることが、感じとして、なかなかよく伝わってくる。会話の最後に「(笑)」とした箇所が幾つもあるが、その有無にも選択の心くばりが窺える。仮りにも青春小説の類いの作ではない。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
田口賢司
男44歳
0  
中島たい子
女35歳
17 「小説の枚数がいたく寛大に扱われているらしい今日、脂肪太りの作品によく出会うが、この小説では実に大小の省略の効果があがっている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
山崎ナオコーラ
女26歳
13 「専門学校生の主人公と二十歳年長の女性との関係が、苦笑でも軽いニヒルでもない微妙な特色のある客観視で捉えられている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
古井由吉
黒井千次
宮本輝
村上龍
山田詠美
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選考委員
村上龍男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
52 「推した。肝心な部分が書かれていない中途半端な小説だと思ったが、今回の候補作の中で「伝えるべき情報」を持っているのは『グランド・フィナーレ』だけだった。少女に対する偏愛という、いろいろな意味で危険なモチーフについて、作者が踏み込んで書いていないのが最大の不満だった。」「それでもわたしは阿部氏の作品を推した。その理由はただ一つ、小説にしかできないことに作者が挑戦しているように感じたからだ。」
石黒達昌
男43歳
0  
井村恭一
男37歳
0  
白岩玄
男21歳
0  
田口賢司
男44歳
0  
中島たい子
女35歳
0  
山崎ナオコーラ
女26歳
0  
  「(引用者注:「グランド・フィナーレ」以外の)他の候補作は、たとえば作文でも漫画でもエッセイでも表現可能だと思えるものばかりだった。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
古井由吉
黒井千次
宮本輝
河野多恵子
山田詠美
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選考委員
山田詠美女45歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数43 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男36歳
6 「微妙な境界線がいくつも交錯し、大きな境界線を作り出した丹念な作品。」「欠点はあるけれども筆力を感じて、祝、受賞。」
石黒達昌
男43歳
5 「病人は病人のように、医者は医者のように、子供は子供のように描かれていて何の驚きもない。」
井村恭一
男37歳
4 「意味不明の比喩多発。〈ふぐりの裏側についた蛭のような人物〉とか。」
白岩玄
男21歳
7 「これは、また、なんと古風な王道を行くエンポリオ人間失格。会話の味つけが、かもし出す愉快さと言ったら! 内輪の記号に、もう少し普遍性を持たせたら、もっといい。」
田口賢司
男44歳
7 「読み終わって全体を見渡すとかなり良い感じながら、細部には少し古いものは一番古臭いと言いたくなる描写が点在している。」
中島たい子
女35歳
8 「手馴れていてテンポも良い。登場人物も生き生きしている。ただし、漢方を抜いた部分が散漫に思える。」
山崎ナオコーラ
女26歳
6 「〈布団の国の王様とお姫さまの気分で眠った。〉そうなのだ、この不思議ちゃんたちは。笑うな、と言われても……はなから笑えないんですけど。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
池澤夏樹
石原慎太郎
古井由吉
黒井千次
宮本輝
河野多恵子
村上龍
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受賞者・作品
阿部和重男36歳×各選考委員 
「グランド・フィナーレ」
中篇 196
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女58歳
21 「少女偏愛性癖者の内面にこもる熱が、ひんやりと伝わってくる、明るくて無邪気で無気味な小説である。」「人間の内側に寄り添って見る場合にしか経験できない、汗ばみ息苦しくなるような怖さがある。これは文学にしか果せないことだ。」「肩パットが入ったような勢い込んだ文章が、読み進むにつれて主人公の病的な匂いを支えていることに気がついた。」
池澤夏樹
男59歳
13 「今から受賞作として広く読まれるべきは何か。阿部和重さんの「グランド・フィナーレ」以外にはないだろう。」「これは受賞に価する作品である(本当は前回の候補作の「ニッポニアニッポン」で受賞できればよかったのだが)。」
石原慎太郎
男72歳
30 「私は全く評価出来なかった。」「主人公の少女への偏愛という異常性の所以が、自分の子供の裸の写真を撮って離婚されたという説明に終わっているだけで、小説としての怖さがどこにもない。」「複数の選考委員の間で、多少瑕瑾はあっても、この作者にはもうそろそろこの賞を与えてもいいのではないかという声があったが、そうした発想はこの伝統ある文学賞の本質を損なうものではないかと危惧している。」
古井由吉
男67歳
0  
黒井千次
男72歳
20 「欲望そのものより結果として与えられる苦痛にウェイトが置かれ、暗い衝動の辿る道程が浮き彫りにされるところに重量感がある。」「自分の娘に対する心情と他の少女に向う欲求との違いなど必ずしも描き切れていない恨みはあるものの、生の捩れを追う筆に確かな手応えを覚えた。」
宮本輝
男57歳
34 「これまでの氏の作品と比して、その素材も文章も構成も機微が増し、登場人物それぞれの存在感が肉厚化したと感じて、私は受賞作に推した。」「けれども、受賞に反対する委員の意見は辛辣で、一時は受賞作なしという流れにもなりかけた。」「阿部氏の小説が「時代」の流れに沿った創造物としての土台しか見せていないからかもしれない。」
河野多恵子
女78歳
3 「残念ながら根本的な古めかしさを感じるにとどまった。」
村上龍
男52歳
52 「推した。肝心な部分が書かれていない中途半端な小説だと思ったが、今回の候補作の中で「伝えるべき情報」を持っているのは『グランド・フィナーレ』だけだった。少女に対する偏愛という、いろいろな意味で危険なモチーフについて、作者が踏み込んで書いていないのが最大の不満だった。」「それでもわたしは阿部氏の作品を推した。その理由はただ一つ、小説にしかできないことに作者が挑戦しているように感じたからだ。」
山田詠美
女45歳
6 「微妙な境界線がいくつも交錯し、大きな境界線を作り出した丹念な作品。」「欠点はあるけれども筆力を感じて、祝、受賞。」
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他の候補作
石黒達昌
「目をとじるまでの短かい間」
井村恭一
「不在の姉」
白岩玄
「野ブタ。をプロデュース」
田口賢司
「メロウ1983」
中島たい子
「漢方小説」
山崎ナオコーラ
「人のセックスを笑うな」
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候補者・作品
石黒達昌男43歳×各選考委員 
「目をとじるまでの短かい間」
短篇 105
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女58歳
11 「悪意の存在しない世界は医者の目に映るヒューマニズムにほぼ重なっていて、それが心地良いと同時に物足りなくもあった。好印象を持ったが強くは押せなかった。」
池澤夏樹
男59歳
0  
石原慎太郎
男72歳
18 「一番不安気なく読んだ。」「小振りな作品だが、作者自身が医師のせいだろう扱い慣れた世界を描いている感じで文体もしっかりしている。」「未だに保持している亡妻の肉体の組織の扱いなどもっと膨らむ素材がありながら、作品に重みが感じられなく惜しい気がする。」
古井由吉
男67歳
27 「老境小説と読める。それらしい香りさえする。ところが主人公の医師は、どう読んでも、男盛り働き盛りの年齢にある。」「医療とは限らぬことだ。働き盛りの人間はつねに先端の場に、先端のつもりはなくても立たされ、そこに尚早の老いが迫る。さらに追うべきテーマだ。」
黒井千次
男72歳
0  
宮本輝
男57歳
0  
河野多恵子
女78歳
0  
村上龍
男52歳
0  
山田詠美
女45歳
5 「病人は病人のように、医者は医者のように、子供は子供のように描かれていて何の驚きもない。」
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他の候補作
阿部和重
「グランド・フィナーレ」
井村恭一
「不在の姉」
白岩玄
「野ブタ。をプロデュース」
田口賢司
「メロウ1983」
中島たい子
「漢方小説」
山崎ナオコーラ
「人のセックスを笑うな」
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候補者・作品
井村恭一男37歳×各選考委員 
「不在の姉」
短篇 108
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女58歳
0  
池澤夏樹
男59歳
9 「幻想小説では(引用者中略)奔放な展開の意味を最後には読者に納得させなければならない。ここには広げる力はあるけれども、それを凝縮して意味づける力が働いていない。」
石原慎太郎
男72歳
0  
古井由吉
男67歳
8 「存在と不在の境もぼやけて、肉親三人寄って物を食べる場面のなまなましさは、読後の印象に遺った。」
黒井千次
男72歳
0  
宮本輝
男57歳
0  
河野多恵子
女78歳
0  
村上龍
男52歳
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山田詠美
女45歳
4 「意味不明の比喩多発。〈ふぐりの裏側についた蛭のような人物〉とか。」
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他の候補作
阿部和重
「グランド・フィナーレ」
石黒達昌
「目をとじるまでの短かい間」
白岩玄
「野ブタ。をプロデュース」
田口賢司
「メロウ1983」
中島たい子
「漢方小説」
山崎ナオコーラ
「人のセックスを笑うな」
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候補者・作品
白岩玄男21歳×各選考委員 
「野ブタ。をプロデュース」
中篇 273
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女58歳
3 「お話づくりに夢中で、饒舌な文章に勢いはあるけれど幼い。」
池澤夏樹
男59歳
8 「とても上手だが、このうまさはむしろエンターテインメントのそれだ。」「みごとに構築されているが、しかし作者は冒険をしていない。」
石原慎太郎
男72歳
10 「高校生の自意識をかなり巧みなタッチで描いているが、会話の終わりにつけられている(笑)といった注釈は当節流行の漫画の手法に似ていて軽すぎる。しかしまだ二十一歳という作者の若さは、近い将来もっと大きく確かな花を咲かせるに違いない。」
古井由吉
男67歳
0  
黒井千次
男72歳
8 「自己を演出し他人をプロデュースする高校生の日常に興味を惹かれるものの、冗漫で長過ぎるとの印象が残る。」
宮本輝
男57歳
5 「票数のうえでは惜しくも受賞を逸した」「(引用者注:「人のセックスを笑うな」と共に)私にはどうしても幼さが目についてしまって、」
河野多恵子
女78歳
26 「興味深く読んだ。表現しようとしていることが、感じとして、なかなかよく伝わってくる。会話の最後に「(笑)」とした箇所が幾つもあるが、その有無にも選択の心くばりが窺える。仮りにも青春小説の類いの作ではない。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
村上龍
男52歳
0  
山田詠美
女45歳
7 「これは、また、なんと古風な王道を行くエンポリオ人間失格。会話の味つけが、かもし出す愉快さと言ったら! 内輪の記号に、もう少し普遍性を持たせたら、もっといい。」
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他の候補作
阿部和重
「グランド・フィナーレ」
石黒達昌
「目をとじるまでの短かい間」
井村恭一
「不在の姉」
田口賢司
「メロウ1983」
中島たい子
「漢方小説」
山崎ナオコーラ
「人のセックスを笑うな」
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候補者・作品
田口賢司男44歳×各選考委員 
「メロウ1983」
中篇 186
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女58歳
0  
池澤夏樹
男59歳
17 「ぼくの好みに叶うものだった。伝書鳩サムの話なんて哀切でうっとりする。」「だからまずはこれを推したけれど、それはぼくの好みの表明であって、これが受賞するとは思わなかった。他の委員からの支援もほとんどなかった。」
石原慎太郎
男72歳
0  
古井由吉
男67歳
0  
黒井千次
男72歳
0  
宮本輝
男57歳
0  
河野多恵子
女78歳
0  
村上龍
男52歳
0  
山田詠美
女45歳
7 「読み終わって全体を見渡すとかなり良い感じながら、細部には少し古いものは一番古臭いと言いたくなる描写が点在している。」
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他の候補作
阿部和重
「グランド・フィナーレ」
石黒達昌
「目をとじるまでの短かい間」
井村恭一
「不在の姉」
白岩玄
「野ブタ。をプロデュース」
中島たい子
「漢方小説」
山崎ナオコーラ
「人のセックスを笑うな」
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候補者・作品
中島たい子女35歳×各選考委員 
「漢方小説」
中篇 183
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女58歳
0  
池澤夏樹
男59歳
5 「巧みにまとまった作品だが、小説というもの、読者を癒すよりは危機へ誘い出してほしいと思う。」
石原慎太郎
男72歳
0  
古井由吉
男67歳
0  
黒井千次
男72歳
5 「独身女性の日々の起伏に漢方医療の視点を導入し、精神を物質的に眺めようとする姿勢に斬新なものを感じた。」
宮本輝
男57歳
7 「魅力を感じて受賞作に推した。軽さが表に出ているが、どうしてなかなか練達な筆であり、したたかな書き手だと思う。」
河野多恵子
女78歳
17 「小説の枚数がいたく寛大に扱われているらしい今日、脂肪太りの作品によく出会うが、この小説では実に大小の省略の効果があがっている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
村上龍
男52歳
0  
山田詠美
女45歳
8 「手馴れていてテンポも良い。登場人物も生き生きしている。ただし、漢方を抜いた部分が散漫に思える。」
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他の候補作
阿部和重
「グランド・フィナーレ」
石黒達昌
「目をとじるまでの短かい間」
井村恭一
「不在の姉」
白岩玄
「野ブタ。をプロデュース」
田口賢司
「メロウ1983」
山崎ナオコーラ
「人のセックスを笑うな」
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候補者・作品
山崎ナオコーラ女26歳×各選考委員 
「人のセックスを笑うな」
短篇 118
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女58歳
6 「ユリという女に存在感があり、最近の若い男は果してこんなに透明で薄味だろうかと疑いつつも、年齢の離れた恋愛に納得させられた。」
池澤夏樹
男59歳
0  
石原慎太郎
男72歳
11 「年上の女との交情を描きながら一向にセンシュアルではなく、例えばラディゲの「肉体の悪魔」のようなセンシュアルならずしてのリリスムも伝わってこない。」
古井由吉
男67歳
0  
黒井千次
男72歳
5 「作品の短かさに美点がある。それでいて言いたいことはしっかり伝わってくる。」
宮本輝
男57歳
6 「(引用者注:「野ブタ。をプロデュース」と共に)私にはどうしても幼さが目についてしまって、」
河野多恵子
女78歳
13 「専門学校生の主人公と二十歳年長の女性との関係が、苦笑でも軽いニヒルでもない微妙な特色のある客観視で捉えられている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
村上龍
男52歳
0  
山田詠美
女45歳
6 「〈布団の国の王様とお姫さまの気分で眠った。〉そうなのだ、この不思議ちゃんたちは。笑うな、と言われても……はなから笑えないんですけど。」
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他の候補作
阿部和重
「グランド・フィナーレ」
石黒達昌
「目をとじるまでの短かい間」
井村恭一
「不在の姉」
白岩玄
「野ブタ。をプロデュース」
田口賢司
「メロウ1983」
中島たい子
「漢方小説」
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