芥川賞のすべて・のようなもの
第77回
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昭和52年/1977年上半期
(昭和52年/1977年7月14日決定発表/『文藝春秋』昭和52年/1977年9月号選評掲載)
選考委員  丹羽文雄
男72歳
中村光夫
男66歳
永井龍男
男73歳
大江健三郎
男42歳
吉行淳之介
男53歳
瀧井孝作
男83歳
井上靖
男70歳
安岡章太郎
男57歳
遠藤周作
男54歳
選評総行数  27 29 24 30 32 32 18 31 27
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
三田誠広 「僕って何」
240
男29歳
0 5 5 11 11 4 3 12 9
池田満寿夫 「エーゲ海に捧ぐ」
68
男43歳
0 12 6 13 6 6 7 12 16
高橋揆一郎 「観音力疾走」
70
男49歳
7 0 4 0 7 3 8 0 0
小林信彦 「八月の視野」
137
男44歳
0 5 1 0 0 0 0 0 3
上西晴治 「オコシップの遺品」
84
男52歳
21 0 2 0 0 0 0 0 0
寺久保友哉 「こころの匂い」
135
男40歳
0 0 5 0 0 13 0 11 0
高橋三千綱 「五月の傾斜」
108
男29歳
0 0 3 11 0 0 0 0 0
光岡明 「奥義」
121
男44歳
0 0 1 0 0 4 0 0 0
  欠席
書面回答
             
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年9月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
丹羽文雄男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
0  
池田満寿夫
男43歳
0  
高橋揆一郎
男49歳
7 「前半は素直に読めたが、後半にいたって作者の解釈がつよく現われて、それまでの女主人公のイメージをこわしてしまった。」
小林信彦
男44歳
0  
上西晴治
男52歳
21 「いちばん気持よく読んだ。当然この作品を推したが、他の選者は抹殺した。」「アイヌの生活が描かれていて、しばらく忘れていたアイヌの社会的な問題が新しく思い出された。」「人物では母親のサトがよく描かれていた。そのわりに父親の描写は一面的であるが、幼い子供の目を通しての両親は、そう映るであろうかと思われた。」
寺久保友哉
男40歳
0  
高橋三千綱
男29歳
0  
光岡明
男44歳
0  
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他の選考委員
中村光夫
永井龍男
大江健三郎
吉行淳之介
瀧井孝作
井上靖
安岡章太郎
遠藤周作
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選考委員
中村光夫男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「エーゲ海に捧ぐ」を推す 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
5 「素朴な語り口」「ものものしい題名のわりに、主人公の心理が浅くしか把握されていないので、内面の展開がなく、冗長の感をあたえるのは惜しまれます。」
池田満寿夫
男43歳
12 「抜群の出来です。」「氏を芥川賞の対象になる「新人」と見てよいかについては、多少の疑問がありますが、その点が問題ないとすれば、これを当選作としたいと思います。」「きらびやかな、稀に見る才能には違いなくとも、それが外面的でぎらぎらしすぎること、シチュエーションの設定は巧みでも、人物の把握がやや粗笨な点などが気にかかります。」「しかしそれは氏にとっても将来の問題」
高橋揆一郎
男49歳
0  
小林信彦
男44歳
5 「主人公の内面が深くやわらか味のある筆致で捕えられ、たんなる時代の記録や風俗小説を越えた感銘をあたえます。」
上西晴治
男52歳
0  
寺久保友哉
男40歳
0  
高橋三千綱
男29歳
0  
光岡明
男44歳
0  
  「全体として、思春期の少年を主人公としたものが眼立ち、古風な男くさい世界をわざと扱ったのが多かったのは、時勢を微妙に反映しているようです。」
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他の選考委員
丹羽文雄
永井龍男
大江健三郎
吉行淳之介
瀧井孝作
井上靖
安岡章太郎
遠藤周作
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選考委員
永井龍男男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「前衛的な作品」 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
5 「若さ、群集を書きまくるエネルギーに将来性を感じた。」「欠点も多い代りスケールは(引用者中略・注:「五月の傾斜」より)大きかった。」
池田満寿夫
男43歳
6 「精密な素材の配置と文章で組立てられていたが、緻密な描写が拡がるにしたがって、端から文章が死んで行き、これは文学ではないと思った。」「遠い日本妻の述懐が浄瑠璃風な陰湿な伴奏を繰返し、空虚な痴態だけが延々と続く。」
高橋揆一郎
男49歳
4 「短篇小説としては一番すぐれていると思った。題名が余りに直接的で、そぐわないのは残念である。」
小林信彦
男44歳
1 「確りした作品だった。」
上西晴治
男52歳
2 「長篇の発端というのが読後感であった。」
寺久保友哉
男40歳
5 「医師同士の葛藤で盛り上りを見せたが、主題に比べて作者の眼は、それほど深いところへは及んでいなかった。」
高橋三千綱
男29歳
3 「若さ、群集を書きまくるエネルギーに将来性を感じた。」「爽快であった」
光岡明
男44歳
1 「確りした作品だった。」
  「二篇の授賞作のうちの一篇(引用者注:「エーゲ海に捧ぐ」)を、まったく認めなかったということは、委員の一人として重要な問題である。」「当然委員の資格について検討されなければなるまいと考えた。」
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
大江健三郎
吉行淳之介
瀧井孝作
井上靖
安岡章太郎
遠藤周作
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選考委員
大江健三郎男42歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
対立を対立のままに 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
11 「方法として単調だし、イメージのつくり方も、しばしば通俗的な風俗性に流れている。しかし、それなりに不安定な対象に密着しつづけて、ともかくも一時代の青春の一局面を、散文の世界に囲いこみえている。」「小説一篇読みおえての面白さをいえば、この作品が授賞作に選ばれて自然だった。」
池田満寿夫
男43歳
13 「情況設定も、電話の向うの立派な女も、デクノボーの主人公も、独特かつ効果的である。しかし二人の外国人の女はあいまいで、重ね塗りされるイメージも、そのひとつひとつは確実にしあげられていない。」「しかし強力な支持者たちがあり、僕は反対者としておおいに討論した後、授賞に賛成した。」
高橋揆一郎
男49歳
0  
小林信彦
男44歳
0  
上西晴治
男52歳
0  
寺久保友哉
男40歳
0  
高橋三千綱
男29歳
11 「氏のこれまでのいかなる作品よりも、作者と主人公との距離が安定して、完成度も力もあった。」「このように構想の奥行きをはっきりさせながら創作をかさねてゆくことで、氏がひとつの飛躍をとげることはありえよう。」
光岡明
男44歳
0  
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
永井龍男
吉行淳之介
瀧井孝作
井上靖
安岡章太郎
遠藤周作
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選考委員
吉行淳之介男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
難航また難航 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
11 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「「僕って何」とは同年代に向って「君って何」という問いかけの批評を含んでいて、このあたりの年齢の周辺を私小説風に描いて過大に評価されてきたこれまでのいろいろの作品より、ずっと良かった。ユーモアにもとぼけているようで、批評がある。」
池田満寿夫
男43歳
6 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「池田氏の作品についての評価は予想どおりだったが、その反対意見は二作授賞を許さない、という強烈さだった。」「道具立てが華やかで、作者の感性がきらめくのだが(その点も、私は好きだ)、むしろオーソドックスな小説といえる。」「また、池田氏はしたたかな技巧家であるが、あるいは本人自身気付いていないかもしれない素朴な心が、その裏側にある。」
高橋揆一郎
男49歳
7 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「語り手の女主人公も、その亭主になった炭坑夫も、魅力的に描けている。パターンになりかかる話の筋を、ふっくらとして同時に勁いところのある文章で救っている。」
小林信彦
男44歳
0  
上西晴治
男52歳
0  
寺久保友哉
男40歳
0  
高橋三千綱
男29歳
0  
光岡明
男44歳
0  
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
永井龍男
大江健三郎
瀧井孝作
井上靖
安岡章太郎
遠藤周作
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選考委員
瀧井孝作男83歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
短篇を望む 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
4 「おしゃべりのズラズラしゃべりまくる筆で、このおしゃべりが特長かもしれないが、私はもっと簡潔に書いてほしいと思った。」
池田満寿夫
男43歳
6 「小説として構図は新しいようだが、内容はとりとめがなく、まとまりのない作だと思った。」
高橋揆一郎
男49歳
3 「この予選作を六月中に私は一番はじめに読んで、銓衡会のときは何が書いてあったか記憶がうすれていた。」
小林信彦
男44歳
0  
上西晴治
男52歳
0  
寺久保友哉
男40歳
13 「前半はやわらかい筆にてこまかい心持が出て、(引用者中略)後半のヒドイ目にあう場面は自ずと急迫した筆にて、私はひきこまれた。人の心のあやふやな所がテーマと見えた。」
高橋三千綱
男29歳
0  
光岡明
男44歳
4 「前半はくだくだしく長すぎて、後半になって小説らしくなったと見た。」
  「大体にどれもくだくだと長すぎて、私は、もっと簡潔な引緊った、短篇を望む。」
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
永井龍男
大江健三郎
吉行淳之介
井上靖
安岡章太郎
遠藤周作
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選考委員
井上靖男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読後の感想 総行数18 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
3 「若さがよく出ている明快な作品で、好意を以て読んだ。」
池田満寿夫
男43歳
7 「私は、氏の場合、芥川賞によって推し出される必要もないであろうと思ったし、この作品に於ける限りは人間関係を一つのカンバスに嵌め込んだ新しい試みはあるにしても、読後、その試み以上のものは出ていないと思った。」
高橋揆一郎
男49歳
8 「一番面白く、読みごたえのあるものであった。人間の業を取り扱っているが、最後までその主題にしぼって作り、構成し、書いているところはみごとだと思った。無知と貧しさと悲惨さの中にいる女主人公の、周囲の者に対するそれぞれの気持も、まあ過不足なく書けていると言っていい。」
小林信彦
男44歳
0  
上西晴治
男52歳
0  
寺久保友哉
男40歳
0  
高橋三千綱
男29歳
0  
光岡明
男44歳
0  
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
永井龍男
大江健三郎
吉行淳之介
瀧井孝作
安岡章太郎
遠藤周作
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選考委員
安岡章太郎男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新しいパターン古い情念 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
12 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「前半部がとくにダラシのない文章で退屈であった。しかし読みすすめるにつれて、当今学生気質といったものが過不足なく描かれたシタタカなところがあり、なかなかヤルじゃないか、という気がした。」
池田満寿夫
男43歳
12 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「倉庫の中の裸の女というのは、前衛的なパターンであり、それに黄色人種の男と女の古めかしい情念がからめ合わせてある点に、新しさがあるわけだが、これが効果を上げるのは一回こっきりのことである。」
高橋揆一郎
男49歳
0  
小林信彦
男44歳
0  
上西晴治
男52歳
0  
寺久保友哉
男40歳
11 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「私の好みからいえば、「こころの匂い」であるが、これにも弱点は多かった。たとえば、長岡という主人公のライヴァルの医師が、ほんの少しでも具体的に表現されていれば、作品の骨格は余程シッカリしたものになりえたであろう。」「心理的なサスペンスは面白かった。」
高橋三千綱
男29歳
0  
光岡明
男44歳
0  
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
永井龍男
大江健三郎
吉行淳之介
瀧井孝作
井上靖
遠藤周作
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選考委員
遠藤周作男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作家の受賞を悦ぶ 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
三田誠広
男29歳
9 「授賞作になることに反対しなかった。ただ、この作品にはやや新人らしい独自の冒険がなく、安全な書きかたをしているのが多少、物足りなかった。(たとえばトシオが学生たちにからむ気持の描写などは、安全な書きかたであり、もっと複雑なものがあるような気がする)」
池田満寿夫
男43歳
16 「真向から意見が二つに分れたところにこの作品の性格がある。私はこの作品を支持した。」「決して前衛的な小説ではない。」「耳で聞える声と眼に見えるものの描写しかない。にもかかわらず電話に反応する二人の白人の女のなまなましい嫉妬は、彼女たちの動きでなまなましく伝わってくる。」「いずれにしろ、この作者の資質を否定することはできない筈である。」
高橋揆一郎
男49歳
0  
小林信彦
男44歳
3 「私は(引用者中略)次点としていたが、小林氏が既に作家活動を盛んにされていることから、対象外になった」
上西晴治
男52歳
0  
寺久保友哉
男40歳
0  
高橋三千綱
男29歳
0  
光岡明
男44歳
0  
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
永井龍男
大江健三郎
吉行淳之介
瀧井孝作
井上靖
安岡章太郎
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受賞者・作品
三田誠広男29歳×各選考委員 
「僕って何」
中篇 240
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
0  
中村光夫
男66歳
5 「素朴な語り口」「ものものしい題名のわりに、主人公の心理が浅くしか把握されていないので、内面の展開がなく、冗長の感をあたえるのは惜しまれます。」
永井龍男
男73歳
5 「若さ、群集を書きまくるエネルギーに将来性を感じた。」「欠点も多い代りスケールは(引用者中略・注:「五月の傾斜」より)大きかった。」
大江健三郎
男42歳
11 「方法として単調だし、イメージのつくり方も、しばしば通俗的な風俗性に流れている。しかし、それなりに不安定な対象に密着しつづけて、ともかくも一時代の青春の一局面を、散文の世界に囲いこみえている。」「小説一篇読みおえての面白さをいえば、この作品が授賞作に選ばれて自然だった。」
吉行淳之介
男53歳
11 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「「僕って何」とは同年代に向って「君って何」という問いかけの批評を含んでいて、このあたりの年齢の周辺を私小説風に描いて過大に評価されてきたこれまでのいろいろの作品より、ずっと良かった。ユーモアにもとぼけているようで、批評がある。」
瀧井孝作
男83歳
4 「おしゃべりのズラズラしゃべりまくる筆で、このおしゃべりが特長かもしれないが、私はもっと簡潔に書いてほしいと思った。」
井上靖
男70歳
3 「若さがよく出ている明快な作品で、好意を以て読んだ。」
安岡章太郎
男57歳
12 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「前半部がとくにダラシのない文章で退屈であった。しかし読みすすめるにつれて、当今学生気質といったものが過不足なく描かれたシタタカなところがあり、なかなかヤルじゃないか、という気がした。」
遠藤周作
男54歳
9 「授賞作になることに反対しなかった。ただ、この作品にはやや新人らしい独自の冒険がなく、安全な書きかたをしているのが多少、物足りなかった。(たとえばトシオが学生たちにからむ気持の描写などは、安全な書きかたであり、もっと複雑なものがあるような気がする)」
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他の候補作
池田満寿夫
「エーゲ海に捧ぐ」
高橋揆一郎
「観音力疾走」
小林信彦
「八月の視野」
上西晴治
「オコシップの遺品」
寺久保友哉
「こころの匂い」
高橋三千綱
「五月の傾斜」
光岡明
「奥義」
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受賞者・作品
池田満寿夫男43歳×各選考委員 
「エーゲ海に捧ぐ」
短篇 68
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
0  
中村光夫
男66歳
12 「抜群の出来です。」「氏を芥川賞の対象になる「新人」と見てよいかについては、多少の疑問がありますが、その点が問題ないとすれば、これを当選作としたいと思います。」「きらびやかな、稀に見る才能には違いなくとも、それが外面的でぎらぎらしすぎること、シチュエーションの設定は巧みでも、人物の把握がやや粗笨な点などが気にかかります。」「しかしそれは氏にとっても将来の問題」
永井龍男
男73歳
6 「精密な素材の配置と文章で組立てられていたが、緻密な描写が拡がるにしたがって、端から文章が死んで行き、これは文学ではないと思った。」「遠い日本妻の述懐が浄瑠璃風な陰湿な伴奏を繰返し、空虚な痴態だけが延々と続く。」
大江健三郎
男42歳
13 「情況設定も、電話の向うの立派な女も、デクノボーの主人公も、独特かつ効果的である。しかし二人の外国人の女はあいまいで、重ね塗りされるイメージも、そのひとつひとつは確実にしあげられていない。」「しかし強力な支持者たちがあり、僕は反対者としておおいに討論した後、授賞に賛成した。」
吉行淳之介
男53歳
6 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「池田氏の作品についての評価は予想どおりだったが、その反対意見は二作授賞を許さない、という強烈さだった。」「道具立てが華やかで、作者の感性がきらめくのだが(その点も、私は好きだ)、むしろオーソドックスな小説といえる。」「また、池田氏はしたたかな技巧家であるが、あるいは本人自身気付いていないかもしれない素朴な心が、その裏側にある。」
瀧井孝作
男83歳
6 「小説として構図は新しいようだが、内容はとりとめがなく、まとまりのない作だと思った。」
井上靖
男70歳
7 「私は、氏の場合、芥川賞によって推し出される必要もないであろうと思ったし、この作品に於ける限りは人間関係を一つのカンバスに嵌め込んだ新しい試みはあるにしても、読後、その試み以上のものは出ていないと思った。」
安岡章太郎
男57歳
12 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「倉庫の中の裸の女というのは、前衛的なパターンであり、それに黄色人種の男と女の古めかしい情念がからめ合わせてある点に、新しさがあるわけだが、これが効果を上げるのは一回こっきりのことである。」
遠藤周作
男54歳
16 「真向から意見が二つに分れたところにこの作品の性格がある。私はこの作品を支持した。」「決して前衛的な小説ではない。」「耳で聞える声と眼に見えるものの描写しかない。にもかかわらず電話に反応する二人の白人の女のなまなましい嫉妬は、彼女たちの動きでなまなましく伝わってくる。」「いずれにしろ、この作者の資質を否定することはできない筈である。」
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他の候補作
三田誠広
「僕って何」
高橋揆一郎
「観音力疾走」
小林信彦
「八月の視野」
上西晴治
「オコシップの遺品」
寺久保友哉
「こころの匂い」
高橋三千綱
「五月の傾斜」
光岡明
「奥義」
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候補者・作品
高橋揆一郎男49歳×各選考委員 
「観音力疾走」
短篇 70
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
7 「前半は素直に読めたが、後半にいたって作者の解釈がつよく現われて、それまでの女主人公のイメージをこわしてしまった。」
中村光夫
男66歳
0  
永井龍男
男73歳
4 「短篇小説としては一番すぐれていると思った。題名が余りに直接的で、そぐわないのは残念である。」
大江健三郎
男42歳
0  
吉行淳之介
男53歳
7 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「語り手の女主人公も、その亭主になった炭坑夫も、魅力的に描けている。パターンになりかかる話の筋を、ふっくらとして同時に勁いところのある文章で救っている。」
瀧井孝作
男83歳
3 「この予選作を六月中に私は一番はじめに読んで、銓衡会のときは何が書いてあったか記憶がうすれていた。」
井上靖
男70歳
8 「一番面白く、読みごたえのあるものであった。人間の業を取り扱っているが、最後までその主題にしぼって作り、構成し、書いているところはみごとだと思った。無知と貧しさと悲惨さの中にいる女主人公の、周囲の者に対するそれぞれの気持も、まあ過不足なく書けていると言っていい。」
安岡章太郎
男57歳
0  
遠藤周作
男54歳
0  
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他の候補作
三田誠広
「僕って何」
池田満寿夫
「エーゲ海に捧ぐ」
小林信彦
「八月の視野」
上西晴治
「オコシップの遺品」
寺久保友哉
「こころの匂い」
高橋三千綱
「五月の傾斜」
光岡明
「奥義」
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候補者・作品
小林信彦男44歳×各選考委員 
「八月の視野」
短篇 137
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
0  
中村光夫
男66歳
5 「主人公の内面が深くやわらか味のある筆致で捕えられ、たんなる時代の記録や風俗小説を越えた感銘をあたえます。」
永井龍男
男73歳
1 「確りした作品だった。」
大江健三郎
男42歳
0  
吉行淳之介
男53歳
0  
瀧井孝作
男83歳
0  
井上靖
男70歳
0  
安岡章太郎
男57歳
0  
遠藤周作
男54歳
3 「私は(引用者中略)次点としていたが、小林氏が既に作家活動を盛んにされていることから、対象外になった」
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他の候補作
三田誠広
「僕って何」
池田満寿夫
「エーゲ海に捧ぐ」
高橋揆一郎
「観音力疾走」
上西晴治
「オコシップの遺品」
寺久保友哉
「こころの匂い」
高橋三千綱
「五月の傾斜」
光岡明
「奥義」
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候補者・作品
上西晴治男52歳×各選考委員 
「オコシップの遺品」
短篇 84
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
21 「いちばん気持よく読んだ。当然この作品を推したが、他の選者は抹殺した。」「アイヌの生活が描かれていて、しばらく忘れていたアイヌの社会的な問題が新しく思い出された。」「人物では母親のサトがよく描かれていた。そのわりに父親の描写は一面的であるが、幼い子供の目を通しての両親は、そう映るであろうかと思われた。」
中村光夫
男66歳
0  
永井龍男
男73歳
2 「長篇の発端というのが読後感であった。」
大江健三郎
男42歳
0  
吉行淳之介
男53歳
0  
瀧井孝作
男83歳
0  
井上靖
男70歳
0  
安岡章太郎
男57歳
0  
遠藤周作
男54歳
0  
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他の候補作
三田誠広
「僕って何」
池田満寿夫
「エーゲ海に捧ぐ」
高橋揆一郎
「観音力疾走」
小林信彦
「八月の視野」
寺久保友哉
「こころの匂い」
高橋三千綱
「五月の傾斜」
光岡明
「奥義」
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候補者・作品
寺久保友哉男40歳×各選考委員 
「こころの匂い」
短篇 135
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
0  
中村光夫
男66歳
0  
永井龍男
男73歳
5 「医師同士の葛藤で盛り上りを見せたが、主題に比べて作者の眼は、それほど深いところへは及んでいなかった。」
大江健三郎
男42歳
0  
吉行淳之介
男53歳
0  
瀧井孝作
男83歳
13 「前半はやわらかい筆にてこまかい心持が出て、(引用者中略)後半のヒドイ目にあう場面は自ずと急迫した筆にて、私はひきこまれた。人の心のあやふやな所がテーマと見えた。」
井上靖
男70歳
0  
安岡章太郎
男57歳
11 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「私の好みからいえば、「こころの匂い」であるが、これにも弱点は多かった。たとえば、長岡という主人公のライヴァルの医師が、ほんの少しでも具体的に表現されていれば、作品の骨格は余程シッカリしたものになりえたであろう。」「心理的なサスペンスは面白かった。」
遠藤周作
男54歳
0  
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他の候補作
三田誠広
「僕って何」
池田満寿夫
「エーゲ海に捧ぐ」
高橋揆一郎
「観音力疾走」
小林信彦
「八月の視野」
上西晴治
「オコシップの遺品」
高橋三千綱
「五月の傾斜」
光岡明
「奥義」
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候補者・作品
高橋三千綱男29歳×各選考委員 
「五月の傾斜」
短篇 108
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
0  
中村光夫
男66歳
0  
永井龍男
男73歳
3 「若さ、群集を書きまくるエネルギーに将来性を感じた。」「爽快であった」
大江健三郎
男42歳
11 「氏のこれまでのいかなる作品よりも、作者と主人公との距離が安定して、完成度も力もあった。」「このように構想の奥行きをはっきりさせながら創作をかさねてゆくことで、氏がひとつの飛躍をとげることはありえよう。」
吉行淳之介
男53歳
0  
瀧井孝作
男83歳
0  
井上靖
男70歳
0  
安岡章太郎
男57歳
0  
遠藤周作
男54歳
0  
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他の候補作
三田誠広
「僕って何」
池田満寿夫
「エーゲ海に捧ぐ」
高橋揆一郎
「観音力疾走」
小林信彦
「八月の視野」
上西晴治
「オコシップの遺品」
寺久保友哉
「こころの匂い」
光岡明
「奥義」
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候補者・作品
光岡明男44歳×各選考委員 
「奥義」
短篇 121
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男72歳
0  
中村光夫
男66歳
0  
永井龍男
男73歳
1 「確りした作品だった。」
大江健三郎
男42歳
0  
吉行淳之介
男53歳
0  
瀧井孝作
男83歳
4 「前半はくだくだしく長すぎて、後半になって小説らしくなったと見た。」
井上靖
男70歳
0  
安岡章太郎
男57歳
0  
遠藤周作
男54歳
0  
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他の候補作
三田誠広
「僕って何」
池田満寿夫
「エーゲ海に捧ぐ」
高橋揆一郎
「観音力疾走」
小林信彦
「八月の視野」
上西晴治
「オコシップの遺品」
寺久保友哉
「こころの匂い」
高橋三千綱
「五月の傾斜」
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