芥川賞のすべて・のようなもの
第34回
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昭和30年/1955年下半期
(昭和31年/1956年1月23日決定発表/『文藝春秋』昭和31年/1956年3月号選評掲載)
選考委員  石川達三
男50歳
井上靖
男48歳
中村光夫
男44歳
丹羽文雄
男51歳
佐藤春夫
男63歳
瀧井孝作
男61歳
宇野浩二
男64歳
川端康成
男56歳
舟橋聖一
男51歳
選評総行数  25 37 39 38 37 44 89 28 47
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
石原慎太郎 「太陽の季節」
99
男23歳
16 17 24 7 25 32 38 13 47
中野繁雄 「暗い驟雨」
66
男40歳
0 4 9 3 0 0 4 0 0
佐村芳之 「残夢」
36
男(33歳)
9 5 9 6 0 0 6 7 0
小島直記 「人間勘定」
104
男36歳
0 3 8 4 0 0 6 7 0
藤枝静男 「瘠我慢の説」
57
男48歳
0 4 15 5 17 13 14 0 0
原誠 「春雷」
133
男28歳
0 4 10 4 3 0 12 0 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
石川達三男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
危険な新人 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
16 「推すならばこれだという気がした。」「欠点は沢山ある。気負ったところ、稚さの剥き出しになったところなど、非難を受けなくてはなるまい。」「倫理性について「美的節度」について、問題は残っている。しかし如何にも新人らしい新人である。危険を感じながら、しかし私は推薦していいと思った。」「芥川賞は完成した作品に贈られるものではなくて、すぐれた素質をもつ新人に贈られるものだと私は解釈している。」
中野繁雄
男40歳
0  
佐村芳之
男(33歳)
9 「一人称のかたちで書いているところに大きな疑問がある。」「もしも若い作家たちが好んで一人称で作品を書くような傾向があるならば、警戒しなくてはならないと私は思う。」「一人称という形は容易に誰でもが小説らしいものを書くことの出来る、危険な形式だ。」
小島直記
男36歳
0  
藤枝静男
男48歳
0  
原誠
男28歳
0  
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他の選考委員
井上靖
中村光夫
丹羽文雄
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
川端康成
舟橋聖一
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選考委員
井上靖男48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選後に 総行数37 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
17 「その力倆と新鮮なみずみずしさに於て抜群だと思った。」「問題になるものを沢山含みながら、やはりその達者さと新鮮さには眼を瞑ることはできないといった作品であった。」「戦後の若い男女の生態を描いた風俗小説ではあるが、ともかく一人の――こんな青年が現代沢山いるに違いない――青年を理窟なしに無造作に投げ出してみせた作品は他にないであろう。」
中野繁雄
男40歳
4 「素材をなまに出しているところが長所でもあると共に欠点にもなっている。それから言葉の遣い方が粗雑で、しっくりと坐っていないところが随処にあった。」
佐村芳之
男(33歳)
5 「死刑になる男が刑場への途上に於て物語るという形式を取っており、小説としてこの方法はいっこう構わないのだが、読後の感銘はやはりこのためにかなり減殺されていて、これを読者に造り物でなく感じさせるには、更に強力な筆力を必要とすると思った。」
小島直記
男36歳
3 「八分通りまでは非常に面白く読んだが、末尾に於て文学志望の青年が出て来るあたりから、主人公である語り手の性格が急にぐらぐらして来た。」
藤枝静男
男48歳
4 「最後で作品の主題がはっきりと出てみごとであり、これはこれで書き切った作品ではあったが、よく書けているというだけで強いて新人の作として推すだけの意義が認められなかった。」
原誠
男28歳
4 「ある新しさもあったが、登場人物の言動にぎこちなさがあって「太陽の季節」に見る闊達さを欠いていた。」
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他の選考委員
石川達三
中村光夫
丹羽文雄
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
川端康成
舟橋聖一
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選考委員
中村光夫男44歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
石原君、しっかり 総行数39 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
24 「未成品といえば一番ひどい未成品ですが、未完成がそのまま未知の生命力の激しさを感じさせる点で異彩を放っています。」「常識から云えば、この文脈もところどころ怪しい。「丁度」を「調度」と書くような学生に芥川賞をあたえることは、少なくも考えものでしょう。」「石原氏への授賞に賛成しながら、僕はなにかとりかえしのつかぬむごいことをしてしまったような、うしろめたさを一瞬感じました。」「しかしこういうむごさをそそるものがたしかにこの小説にはあります。おそらくそれが石原氏の才能でしょう。」
中野繁雄
男40歳
9 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」
佐村芳之
男(33歳)
9 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」
小島直記
男36歳
8 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」
藤枝静男
男48歳
15 「なかで一番しっかり書かれていて、(引用者中略)いわゆる戦後学生の生きかたを冷静に偏見なく理解しようとする作者の意図に同感できるのですが、作者を代弁する中年の医者が、もっともらしい顔をした狂言廻しの役しか振られていないので、その批判も対象の奥まで徹しない気がします。」
原誠
男28歳
10 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」「素直な感覚は、作者の資質に期待を抱かせる」
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他の選考委員
石川達三
井上靖
丹羽文雄
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
川端康成
舟橋聖一
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選考委員
丹羽文雄男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数38 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
7 「若さと新しさがあるというので、授賞となったが、この若さと新しさに安心して、手放しで持ちあげるわけにはいかなかった。才能は十分にあるが、同時に欠点もとり上げなければ、無責任な気がする。」「結局推す気にはなれなかった。私には何となくこの作者の手の内が判るような気がする。」
中野繁雄
男40歳
3 「小篇的なものである。不満の出るのも、結局この小説が小篇的であることによる。悪いものではないが。」
佐村芳之
男(33歳)
6 「これはまともすぎる小説である。類型的であるのが損である。しっかりとは描かれているが、もっと何かほしかった。」
小島直記
男36歳
4 「前半は、面白かった。前半の調子で最後まで押し切っていたならば、ユニークな作品になったろうと残念である。娘の良人の文学青年を持ち出したことが、作品の感じを二分してしまった。」
藤枝静男
男48歳
5 「いちばんがっちりとまとまっていた。が、力が弱い。それは叔父の立場からアプレ・ガールを描いているもどかしさにもよるのだろう。強いて授賞とまでは推せなかったが、好意のもてるものであった。」
原誠
男28歳
4 「あまり計算どおりにはこばれている。三十女の姉はかなりよく描かれているが、すこし泥くさい。姉以外の登場人物が作者の意のままにあやつられている感じが、いや味である。」
  「今度は七十五篇の中から六篇の作品が残された。」「七十五篇もよんで、六篇を残したのは、編輯者の努力であり、見識である。私は無条件に編輯部の努力と見識をみとめるものである。」
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他の選考委員
石川達三
井上靖
中村光夫
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
川端康成
舟橋聖一
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選考委員
佐藤春夫男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
飽くまで「痩我慢の説」を推す 総行数37 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
25 「反倫理的なのは必ずも排撃はしないが、こういう風俗小説一般を文芸として最も低級なものと見ている上、この作者の鋭敏げな時代感覚もジャナリストや興行者の域を出ず、決して文学者のものではないと思ったし、またこの作品から作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を禁じ得なかった。」「僕はまたしても小谷剛を世に送るのかとその経過を傍観しながらも、これに感心したとあっては恥しいから僕は選者でもこの当選には連帯責任は負わないよと念を押し宣言して置いた。」
中野繁雄
男40歳
0  
佐村芳之
男(33歳)
0  
小島直記
男36歳
0  
藤枝静男
男48歳
17 「二篇(引用者注:「痩我慢の説」と「太陽の季節」)の優劣を断じる結論に到って、僕は他の諸君、主として石川、舟橋の両君と対立して「痩我慢の説」を採ろうと云いつづけた。」「単純な風俗小説の域を超えた一個の文明批評を志しているところをおとなの文学(原文傍点)と思った。」「その立体的な描法、重厚な興味は当選作とは雲泥の相違があることは文学を理解するおとな(原文傍点)が虚心に見るなら誰にもわかると思う。僕は今も尚、この落選作を推す。」
原誠
男28歳
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他の選考委員
石川達三
井上靖
中村光夫
丹羽文雄
瀧井孝作
宇野浩二
川端康成
舟橋聖一
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選考委員
瀧井孝作男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「痩我慢の説」を推す 総行数44 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
32 「小説の構成組立に、たくみすぎ、ひねりすぎの所もあるが、若々しい情熱には、惹かれるものがあった。これはしかし読後、“わるふざけ”というような、感じのわるいものがあったが、二月号の「文學界」の「奪われぬもの」というスポーツ小説は、少し筆は弱いけれど、まともに描いた小説で、これならまあよかろうと思った。」「この作家は未だ若くこれからだが、只、器用と才気にまかせずに、尚勉強してもらいたい、と云いたい。」
中野繁雄
男40歳
0  
佐村芳之
男(33歳)
0  
小島直記
男36歳
0  
藤枝静男
男48歳
13 「一番よいと思った。」「「イペリット眼」(引用者中略)も一寸よかったが、こんどの方が、手法もずっと進歩して、筆もよく利いて、この人はやはり勉強しているのだと思われた。」「アプレ青年少女の行動がいきいきとして、よく分り、本当に深切に描いてあって、これは、大人の小説だと思った。しまいの所、医者が深酔して怪我して傷つく所なども、小説の末尾として感じのふかいものがあった。」
原誠
男28歳
0  
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他の選考委員
石川達三
井上靖
中村光夫
丹羽文雄
佐藤春夫
宇野浩二
川端康成
舟橋聖一
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選考委員
宇野浩二男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
独断的銓衡感 総行数89 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
38 「読みつづけてゆくうちに、私の気もちは、しだいに、索然として来た、味気なくなって来た、」「仮りに新奇な作品としても、しいて意地わるく云えば、一種の下らぬ通俗小説であり、又、作者が、あたかも時代に(あるいはジャナリズム)に迎合するように、(引用者中略)『拳闘』を取り入れたり、ほしいままな『性』の遊戯を出来るだけ淫猥に露骨に、(引用者中略)書きあらわしたり、しているからである、」
中野繁雄
男40歳
4 「題材がちょいと変ったものとしても、(だ、)取り留めがない。」
佐村芳之
男(33歳)
6 「随分かわった題材を取り扱っており、それを拈って書いたつもりであろうが、(それだけの取り得はあるとしても、)いろいろな事を書きすぎているので、散漫になった、殊に最後のところが成っていない。」
小島直記
男36歳
6 「題材は古めかしいけれど、書き方によっては幾らか興味のある物が出来るかもしれないが、その書き方がごたごたしているので、(それに悪達者なところが徒になって、)出来そこないの小説になった。」
藤枝静男
男48歳
14 「見方の程度を下げて云うと、(引用者中略)一番うまいかもしれない、」「登場人物も、まず手際よく書かれている上に、全体に心よい諧謔がゆきわたり、適度の諷刺もうかがわれるからである。(くりかえし云う、ここのところは点を甘くして書いたことを。)」
原誠
男28歳
12 「まず一と通りまとまってはいるけれど、それは「一と通り」であって、芸術品としては低調であり、それがどうにもならぬ『致命傷』である。」
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他の選考委員
石川達三
井上靖
中村光夫
丹羽文雄
佐藤春夫
瀧井孝作
川端康成
舟橋聖一
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選考委員
川端康成男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
多少の「ためらい」 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
13 「私は「太陽の季節」を推す選者に追随したし、このほかに推したい作品もなかった。」「第一に私は石原氏のような思い切り若い才能を推賞することが大好きである。」「極論すれば若気のでたらめとも言えるかもしれない。このほかにもいろいろなんでも出来るというような若さだ。なんでも勝手にすればいいが、なにかは出来る人にはちがいないだろう。」
中野繁雄
男40歳
0  
佐村芳之
男(33歳)
7 「芥川賞の候補になるほどの作品は、とにかくその作家の一生にもそう数多くは授からない材料と取り組んでいるので、読むのは楽しみであり、なにか教えられるところがある。」「しかし賞ということになると、(引用者中略)私は多少のためらいを感じた。」
小島直記
男36歳
7 「芥川賞の候補になるほどの作品は、とにかくその作家の一生にもそう数多くは授からない材料と取り組んでいるので、読むのは楽しみであり、なにか教えられるところがある。」「しかし賞ということになると、(引用者中略)私は多少のためらいを感じた。」
藤枝静男
男48歳
0  
原誠
男28歳
0  
  「近年ますます芥川賞が重視されて来て、効果もいちじるしいのに、私は不安とまた不服を感じないではない。諸雑誌の編集者たちが、芥川賞は芥川賞という一つのものと見て、それとは別なそれぞれの自分の考えによって、もっと新人を発見し、支持してゆくべきではないのだろうか。」
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他の選考委員
石川達三
井上靖
中村光夫
丹羽文雄
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
舟橋聖一
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選考委員
舟橋聖一男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
快楽について 総行数47 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
石原慎太郎
男23歳
47 「今回はこの一作しかないと思って、委員会に出席した。」「この作品が私をとらえたのは、達者だとか手法が映画的だとかいうことではなくて、一番純粋な「快楽」と、素直にまっ正面から取組んでいる点だった。」「彼の描く「快楽」は、戦後の「無頼」とは、異質のものだ。」「佐藤春夫氏の指摘したような、押しつけがましい、これでもか、これでもかの、ハッタリや嫌味があっても、非常に明るくはっきりしているこの小説の目的が、それらの欠陥を補ってあまりあることが、授賞の理由である。」
中野繁雄
男40歳
0  
佐村芳之
男(33歳)
0  
小島直記
男36歳
0  
藤枝静男
男48歳
0  
原誠
男28歳
0  
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他の選考委員
石川達三
井上靖
中村光夫
丹羽文雄
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
川端康成
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受賞者・作品
石原慎太郎男23歳×各選考委員 
「太陽の季節」
短篇 99
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男50歳
16 「推すならばこれだという気がした。」「欠点は沢山ある。気負ったところ、稚さの剥き出しになったところなど、非難を受けなくてはなるまい。」「倫理性について「美的節度」について、問題は残っている。しかし如何にも新人らしい新人である。危険を感じながら、しかし私は推薦していいと思った。」「芥川賞は完成した作品に贈られるものではなくて、すぐれた素質をもつ新人に贈られるものだと私は解釈している。」
井上靖
男48歳
17 「その力倆と新鮮なみずみずしさに於て抜群だと思った。」「問題になるものを沢山含みながら、やはりその達者さと新鮮さには眼を瞑ることはできないといった作品であった。」「戦後の若い男女の生態を描いた風俗小説ではあるが、ともかく一人の――こんな青年が現代沢山いるに違いない――青年を理窟なしに無造作に投げ出してみせた作品は他にないであろう。」
中村光夫
男44歳
24 「未成品といえば一番ひどい未成品ですが、未完成がそのまま未知の生命力の激しさを感じさせる点で異彩を放っています。」「常識から云えば、この文脈もところどころ怪しい。「丁度」を「調度」と書くような学生に芥川賞をあたえることは、少なくも考えものでしょう。」「石原氏への授賞に賛成しながら、僕はなにかとりかえしのつかぬむごいことをしてしまったような、うしろめたさを一瞬感じました。」「しかしこういうむごさをそそるものがたしかにこの小説にはあります。おそらくそれが石原氏の才能でしょう。」
丹羽文雄
男51歳
7 「若さと新しさがあるというので、授賞となったが、この若さと新しさに安心して、手放しで持ちあげるわけにはいかなかった。才能は十分にあるが、同時に欠点もとり上げなければ、無責任な気がする。」「結局推す気にはなれなかった。私には何となくこの作者の手の内が判るような気がする。」
佐藤春夫
男63歳
25 「反倫理的なのは必ずも排撃はしないが、こういう風俗小説一般を文芸として最も低級なものと見ている上、この作者の鋭敏げな時代感覚もジャナリストや興行者の域を出ず、決して文学者のものではないと思ったし、またこの作品から作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を禁じ得なかった。」「僕はまたしても小谷剛を世に送るのかとその経過を傍観しながらも、これに感心したとあっては恥しいから僕は選者でもこの当選には連帯責任は負わないよと念を押し宣言して置いた。」
瀧井孝作
男61歳
32 「小説の構成組立に、たくみすぎ、ひねりすぎの所もあるが、若々しい情熱には、惹かれるものがあった。これはしかし読後、“わるふざけ”というような、感じのわるいものがあったが、二月号の「文學界」の「奪われぬもの」というスポーツ小説は、少し筆は弱いけれど、まともに描いた小説で、これならまあよかろうと思った。」「この作家は未だ若くこれからだが、只、器用と才気にまかせずに、尚勉強してもらいたい、と云いたい。」
宇野浩二
男64歳
38 「読みつづけてゆくうちに、私の気もちは、しだいに、索然として来た、味気なくなって来た、」「仮りに新奇な作品としても、しいて意地わるく云えば、一種の下らぬ通俗小説であり、又、作者が、あたかも時代に(あるいはジャナリズム)に迎合するように、(引用者中略)『拳闘』を取り入れたり、ほしいままな『性』の遊戯を出来るだけ淫猥に露骨に、(引用者中略)書きあらわしたり、しているからである、」
川端康成
男56歳
13 「私は「太陽の季節」を推す選者に追随したし、このほかに推したい作品もなかった。」「第一に私は石原氏のような思い切り若い才能を推賞することが大好きである。」「極論すれば若気のでたらめとも言えるかもしれない。このほかにもいろいろなんでも出来るというような若さだ。なんでも勝手にすればいいが、なにかは出来る人にはちがいないだろう。」
舟橋聖一
男51歳
47 「今回はこの一作しかないと思って、委員会に出席した。」「この作品が私をとらえたのは、達者だとか手法が映画的だとかいうことではなくて、一番純粋な「快楽」と、素直にまっ正面から取組んでいる点だった。」「彼の描く「快楽」は、戦後の「無頼」とは、異質のものだ。」「佐藤春夫氏の指摘したような、押しつけがましい、これでもか、これでもかの、ハッタリや嫌味があっても、非常に明るくはっきりしているこの小説の目的が、それらの欠陥を補ってあまりあることが、授賞の理由である。」
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他の候補作
中野繁雄
「暗い驟雨」
佐村芳之
「残夢」
小島直記
「人間勘定」
藤枝静男
「瘠我慢の説」
原誠
「春雷」
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候補者・作品
中野繁雄男40歳×各選考委員 
「暗い驟雨」
短篇 66
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男50歳
0  
井上靖
男48歳
4 「素材をなまに出しているところが長所でもあると共に欠点にもなっている。それから言葉の遣い方が粗雑で、しっくりと坐っていないところが随処にあった。」
中村光夫
男44歳
9 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」
丹羽文雄
男51歳
3 「小篇的なものである。不満の出るのも、結局この小説が小篇的であることによる。悪いものではないが。」
佐藤春夫
男63歳
0  
瀧井孝作
男61歳
0  
宇野浩二
男64歳
4 「題材がちょいと変ったものとしても、(だ、)取り留めがない。」
川端康成
男56歳
0  
舟橋聖一
男51歳
0  
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他の候補作
石原慎太郎
「太陽の季節」
佐村芳之
「残夢」
小島直記
「人間勘定」
藤枝静男
「瘠我慢の説」
原誠
「春雷」
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候補者・作品
佐村芳之男(33歳)×各選考委員 
「残夢」
短篇 36
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男50歳
9 「一人称のかたちで書いているところに大きな疑問がある。」「もしも若い作家たちが好んで一人称で作品を書くような傾向があるならば、警戒しなくてはならないと私は思う。」「一人称という形は容易に誰でもが小説らしいものを書くことの出来る、危険な形式だ。」
井上靖
男48歳
5 「死刑になる男が刑場への途上に於て物語るという形式を取っており、小説としてこの方法はいっこう構わないのだが、読後の感銘はやはりこのためにかなり減殺されていて、これを読者に造り物でなく感じさせるには、更に強力な筆力を必要とすると思った。」
中村光夫
男44歳
9 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」
丹羽文雄
男51歳
6 「これはまともすぎる小説である。類型的であるのが損である。しっかりとは描かれているが、もっと何かほしかった。」
佐藤春夫
男63歳
0  
瀧井孝作
男61歳
0  
宇野浩二
男64歳
6 「随分かわった題材を取り扱っており、それを拈って書いたつもりであろうが、(それだけの取り得はあるとしても、)いろいろな事を書きすぎているので、散漫になった、殊に最後のところが成っていない。」
川端康成
男56歳
7 「芥川賞の候補になるほどの作品は、とにかくその作家の一生にもそう数多くは授からない材料と取り組んでいるので、読むのは楽しみであり、なにか教えられるところがある。」「しかし賞ということになると、(引用者中略)私は多少のためらいを感じた。」
舟橋聖一
男51歳
0  
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他の候補作
石原慎太郎
「太陽の季節」
中野繁雄
「暗い驟雨」
小島直記
「人間勘定」
藤枝静男
「瘠我慢の説」
原誠
「春雷」
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候補者・作品
小島直記男36歳×各選考委員 
「人間勘定」
短篇 104
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男50歳
0  
井上靖
男48歳
3 「八分通りまでは非常に面白く読んだが、末尾に於て文学志望の青年が出て来るあたりから、主人公である語り手の性格が急にぐらぐらして来た。」
中村光夫
男44歳
8 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」
丹羽文雄
男51歳
4 「前半は、面白かった。前半の調子で最後まで押し切っていたならば、ユニークな作品になったろうと残念である。娘の良人の文学青年を持ち出したことが、作品の感じを二分してしまった。」
佐藤春夫
男63歳
0  
瀧井孝作
男61歳
0  
宇野浩二
男64歳
6 「題材は古めかしいけれど、書き方によっては幾らか興味のある物が出来るかもしれないが、その書き方がごたごたしているので、(それに悪達者なところが徒になって、)出来そこないの小説になった。」
川端康成
男56歳
7 「芥川賞の候補になるほどの作品は、とにかくその作家の一生にもそう数多くは授からない材料と取り組んでいるので、読むのは楽しみであり、なにか教えられるところがある。」「しかし賞ということになると、(引用者中略)私は多少のためらいを感じた。」
舟橋聖一
男51歳
0  
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他の候補作
石原慎太郎
「太陽の季節」
中野繁雄
「暗い驟雨」
佐村芳之
「残夢」
藤枝静男
「瘠我慢の説」
原誠
「春雷」
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候補者・作品
藤枝静男男48歳×各選考委員 
「瘠我慢の説」
短篇 57
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男50歳
0  
井上靖
男48歳
4 「最後で作品の主題がはっきりと出てみごとであり、これはこれで書き切った作品ではあったが、よく書けているというだけで強いて新人の作として推すだけの意義が認められなかった。」
中村光夫
男44歳
15 「なかで一番しっかり書かれていて、(引用者中略)いわゆる戦後学生の生きかたを冷静に偏見なく理解しようとする作者の意図に同感できるのですが、作者を代弁する中年の医者が、もっともらしい顔をした狂言廻しの役しか振られていないので、その批判も対象の奥まで徹しない気がします。」
丹羽文雄
男51歳
5 「いちばんがっちりとまとまっていた。が、力が弱い。それは叔父の立場からアプレ・ガールを描いているもどかしさにもよるのだろう。強いて授賞とまでは推せなかったが、好意のもてるものであった。」
佐藤春夫
男63歳
17 「二篇(引用者注:「痩我慢の説」と「太陽の季節」)の優劣を断じる結論に到って、僕は他の諸君、主として石川、舟橋の両君と対立して「痩我慢の説」を採ろうと云いつづけた。」「単純な風俗小説の域を超えた一個の文明批評を志しているところをおとなの文学(原文傍点)と思った。」「その立体的な描法、重厚な興味は当選作とは雲泥の相違があることは文学を理解するおとな(原文傍点)が虚心に見るなら誰にもわかると思う。僕は今も尚、この落選作を推す。」
瀧井孝作
男61歳
13 「一番よいと思った。」「「イペリット眼」(引用者中略)も一寸よかったが、こんどの方が、手法もずっと進歩して、筆もよく利いて、この人はやはり勉強しているのだと思われた。」「アプレ青年少女の行動がいきいきとして、よく分り、本当に深切に描いてあって、これは、大人の小説だと思った。しまいの所、医者が深酔して怪我して傷つく所なども、小説の末尾として感じのふかいものがあった。」
宇野浩二
男64歳
14 「見方の程度を下げて云うと、(引用者中略)一番うまいかもしれない、」「登場人物も、まず手際よく書かれている上に、全体に心よい諧謔がゆきわたり、適度の諷刺もうかがわれるからである。(くりかえし云う、ここのところは点を甘くして書いたことを。)」
川端康成
男56歳
0  
舟橋聖一
男51歳
0  
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他の候補作
石原慎太郎
「太陽の季節」
中野繁雄
「暗い驟雨」
佐村芳之
「残夢」
小島直記
「人間勘定」
原誠
「春雷」
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候補者・作品
原誠男28歳×各選考委員 
「春雷」
中篇 133
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男50歳
0  
井上靖
男48歳
4 「ある新しさもあったが、登場人物の言動にぎこちなさがあって「太陽の季節」に見る闊達さを欠いていた。」
中村光夫
男44歳
10 「作者の態度も真面目で、或る才能や誠実はむろん感じられるのですが、結局小説としては未成品であり、新鮮味のない未成品というほかないのが大部分でした。」「素直な感覚は、作者の資質に期待を抱かせる」
丹羽文雄
男51歳
4 「あまり計算どおりにはこばれている。三十女の姉はかなりよく描かれているが、すこし泥くさい。姉以外の登場人物が作者の意のままにあやつられている感じが、いや味である。」
佐藤春夫
男63歳
3  
瀧井孝作
男61歳
0  
宇野浩二
男64歳
12 「まず一と通りまとまってはいるけれど、それは「一と通り」であって、芸術品としては低調であり、それがどうにもならぬ『致命傷』である。」
川端康成
男56歳
0  
舟橋聖一
男51歳
0  
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他の候補作
石原慎太郎
「太陽の季節」
中野繁雄
「暗い驟雨」
佐村芳之
「残夢」
小島直記
「人間勘定」
藤枝静男
「瘠我慢の説」
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