芥川賞のすべて・のようなもの
第35回
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昭和31年/1956年上半期
(昭和31年/1956年7月20日決定発表/『文藝春秋』昭和31年/1956年9月号選評掲載)
選考委員  丹羽文雄
男51歳
瀧井孝作
男62歳
中村光夫
男45歳
石川達三
男51歳
佐藤春夫
男64歳
井上靖
男49歳
舟橋聖一
男51歳
川端康成
男57歳
宇野浩二
男64歳
選評総行数  36 37 45 27 47 32 7 31 95
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
近藤啓太郎 「海人舟」
67
男36歳
10 6 5 11 29 7 3 10 19
有吉佐和子 「地唄」
69
女25歳
4 15 6 5 13 2 0 4 11
島尾敏雄 「鉄路に近く」
28
男39歳
2 4 7 0 7 4 0 2 24
葛城紀彦 「北の湖」
84
男50歳
3 2 3 0 0 7 0 2 8
深井迪子 「夏の嵐」
139
女24歳
11 3 16 7 7 8 0 7 16
小林勝 「フォード・一九二七年」
55
男28歳
3 2 5 0 8 8 0 3 11
津田信 「瞋恚の果て」
126
男30歳
3 1 2 4 0 4 0 2 7
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年9月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
丹羽文雄男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
健康な後味 総行数36 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
10 「「飛魚」「黒南風」の場合には、海に対する興味が強烈すぎて、小説の安定性を欠いていた。「海人舟」は、海と人間が渾然と一体となっている。」「新風というわけにはいかないが、健康な後味のよさである。永年小説を書いていて常に気にかかることは「童心」ということである。初心忘るべからずであるが、この小説の中から私はそれを強く感じた。」
有吉佐和子
女25歳
4 「前半女主人公、後半父親と分けて描いているのが弱い。渾然とした多元描写がいけなかったものか。構成の苦労が不足。文字の感覚が古い。」
島尾敏雄
男39歳
2 「何かを感じさせる小説であるが、これだけでは短かすぎる。このひとには期待がもてる。」
葛城紀彦
男50歳
3 「あんまりいろいろと書きすぎている。書きすぎの失敗である。作者が情緒におぼれすぎると、感銘がそれだけそがれてしまう例である。」
深井迪子
女24歳
11 「学生小説募集第一回の時、全委員一致で推薦したこの人の特色は、むざんに失われていた。」「作者の勉強ぶりが痛々しく感じられるが、こうした勉強も必要であるが、小説にはもう一つ別の勉強も要るのではないか。罪の意識ということばが出てくるが、全篇のぶっこわしである。」「この人は決して太陽族ではない。太陽族ぶることは、単に小説の上の技巧にすぎないようである。」
小林勝
男28歳
3 「この材料をものするには、もっと洗練された、いわゆるうまい文章でなければ、生きてこない。妙にたどたどしい。」
津田信
男30歳
3 「悪達者である。筆がすべりすぎる。あまりすべりすぎるので、作者は疑いをさしはさみ、立ちどまる時間をついみすごしてしまったのではないか。」
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他の選考委員
瀧井孝作
中村光夫
石川達三
佐藤春夫
井上靖
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川端康成
宇野浩二
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選考委員
瀧井孝作男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
有吉佐和子を推す 総行数37 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
6 「わるくはないけれど、このごろ流行のフィクションで、人物もはじめから終りまで二人きりの相対で、なかなか巧みなものだが、それだけに自然な新鮮な方では前の「飛魚」の方が佳かったが。」
有吉佐和子
女25歳
15 「(引用者注:初めて読んだ時)佳作だと思った。」「再読した所、またこの小説の中の人物の心持にひきこまれて、老父の心持、娘の心持に、同情しながら読んだ。このごろの大方の小説は、読んでその作中人物の心持にひきこまれる程に、心をこめて書かれたものはすくないようだが、これは、そのすくない中の一つだと思った。」
島尾敏雄
男39歳
4 「書出しの夢の場面など味があったが、私小説ならば、もっと切実に迫ってこなければ、こんな風に淡い味でまとめただけでは、物足らない。島尾氏の作では、以前にもっと佳いのがあったと思う。」
葛城紀彦
男50歳
2 「一寸佳いが、すこしくだくだしかった。長ったらしくて弱かった。」
深井迪子
女24歳
3 「若い男女の心理の綾が巧みに描いてあるようだが、その心持が一寸わからない所もあった。この作は大衆小説の筆致と見えた。」
小林勝
男28歳
2 「幼稚な感じが一寸佳かった。」
津田信
男30歳
1 「達者すぎる。」
  「長篇なので今回の候補からはずされた、西野辰吉氏の「秩父困民党」は、佳作だと思った。小島直記氏の「人間の椅子」は、経済調査庁という役所の機構を主題にした小説が、すこし変ったものだと見た。」
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
石川達三
佐藤春夫
井上靖
舟橋聖一
川端康成
宇野浩二
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選考委員
中村光夫男45歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「夏の嵐」を推す 総行数45 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
5 「多年の努力がようやく描写の技巧で規格に達する作品を生んだというだけで、型にはまった空疎な物語という印象を受けました。」「一番小説臭すぎて詰らない小説と思っていたので、この授賞は僕には意外でした。」
有吉佐和子
女25歳
6 「文章の行間に作者の生きた心がにじんで作者の素質を感じさせますが、(引用者中略)素質に甘えすぎていると思われます。」「気持が少しいやらしいほど大人びているが、筆づかいと観察が幼稚です。」
島尾敏雄
男39歳
7 「文章の行間に作者の生きた心がにじんで作者の素質を感じさせますが、(引用者中略)素質に甘えすぎていると思われます。」「日記の一節のようなもので、ここで問題になるとは、氏自身も期待しなかったでしょう。」
葛城紀彦
男50歳
3 「発端は面白そうな国際愛の物語を途中から作者の回想らしいものが這入りすぎて冗長になっています。」
深井迪子
女24歳
16 「既成の小説の規格を破って、何か自分の云いたいことを云おうとする野心に燃えています。そしてその企図は必ずしも成功していないにせよ、作者が何を書きたかったかということは、はっきり伝わってくるし、現代の青年男女がかつてない新しい面から描かれています。」「作者の観察は未熟で一面的であり、近親相姦の設定など不必要と思われますが、とにかく若い精神が時代の無道徳にどうたえているかという大問題が正面から提起されています。」
小林勝
男28歳
5 「文章の行間に作者の生きた心がにじんで作者の素質を感じさせますが、(引用者中略)素質に甘えすぎていると思われます。」「子供っぽい回想を自分で面白がりすぎている」
津田信
男30歳
2 「現代を扱いながらひどく古風な感じのする風俗小説。」
  「(引用者注:候補作は)あまり不出来なものはない代りに際立った秀作も見当りませんでした。」
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他の選考委員
丹羽文雄
瀧井孝作
石川達三
佐藤春夫
井上靖
舟橋聖一
川端康成
宇野浩二
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選考委員
石川達三男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
自信のないまゝに 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
11 「面白いけれども、当選作とするには私は物足らなかった。」「こういう作品は珍しくはないし特に優れて居るとも思えなかった。」「もし他にこれという候補作があれば、私はもっと論争して見る気はあったが、残念ながらその他のどの作品をも推薦する自信がもてなかった。(引用者中略)従って「海人舟」に対して積極的に反対する気持にもなれなかった。」
有吉佐和子
女25歳
5 「幸田文さんを思わせるような綿密な描写でなかなか力のある人だとは思うが、義理人情の世界がいかにも古い。こういう世界が現代日本に生きていることも事実ではあろうが、(新人)の名を冠することには疑問がある。」
島尾敏雄
男39歳
0  
葛城紀彦
男50歳
0  
深井迪子
女24歳
7 「力作だと思うし、才能も優れた人だろうけれども、これは成功した作品とは思われない。」「作者の才気を濫費しているような作品でいささか無秩序な気がする。けれども、そうは言うけれども、この作者が自分の才気をいじけさせない事を望む。」
小林勝
男28歳
0  
津田信
男30歳
4 「いかにも新聞記者らしい筆の荒さを感じた。多元描写も成功していないし末尾の一章は無駄である。小説を書くことの面白さに溺れて、苦労なしに書き飛ばしているのではないかという気がした。」
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他の選考委員
丹羽文雄
瀧井孝作
中村光夫
佐藤春夫
井上靖
舟橋聖一
川端康成
宇野浩二
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選考委員
佐藤春夫男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「海人舟」あるのみ 総行数47 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
29 「わたくしの心をひいた」「こういう古顔になると銓衡の側でも気分がだれて熱の入らないものだが今度に限って珍らしくそれがなかった。わたくしは近藤が以前の長所を能く保ち短所が補われた努力のあとを歴然と見た。今度のは書き出しの章魚の描写からすぐれている。」「この作の明朗で健康な作風とこの作者の努力とを認めてこれに限ると決めて愉快に場に臨んだ。」
有吉佐和子
女25歳
13 「大分好評らしかったがわたくしは全然耳を傾けなかった。」「表現力は全く不足と断じテーマの捉え方にも何人かの二番煎じらしい古さを感じた(何某の摸倣というのではないが)。「地唄」の人に喜ばれるのも要するに通俗な人情だと思うと盲人の世界をのぞかせてくれた有難味もうすれた。」「折角の才媛が再考し筆硯を改めて再び三度候補作品を提供することを期待して、今度は冷淡にこれを見送った。」
島尾敏雄
男39歳
7 「わたくしの心をひいた」「強い実感の人に迫るものがあって無視し難い」「しかし(引用者中略)小粒でまだ十分力量を発揮し尽さない憾がある。」
葛城紀彦
男50歳
0  
深井迪子
女24歳
7 「(引用者注:「海人舟」のことを)拵えものだと云って「夏の嵐」を挙げた人には「海人舟」より「夏の嵐」の方がこしらえもので無いとは云わせないと云い、小説とは所詮拵えものなので「海人舟」が「夏の嵐」などよりよくこしらえられていると思った。」「ジャーナリズム文学(編輯者向常識程度の文学の意味)」
小林勝
男28歳
8 「わたくしの心をひいた」「象徴的でハイカラな独自の美しさのなかに秘めてよく装われた内容を見逃せないと思った。」「しかし(引用者中略)小粒でまだ十分力量を発揮し尽さない憾がある。」
津田信
男30歳
0  
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他の選考委員
丹羽文雄
瀧井孝作
中村光夫
石川達三
井上靖
舟橋聖一
川端康成
宇野浩二
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選考委員
井上靖男49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作り物の「海人舟」 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
7 「この作品の持つ、つつ抜けに明るい健康さに、私はどうもついて行けなかった。人間の掴み方も素朴というより通俗的に思われ、海底の描写も作り物の感を払拭できなかった。併しまとまっているという点ではこの作品が一番まとまっていた。他の作品にみるような致命的な欠陥はない。」
有吉佐和子
女25歳
2 「達者でしみじみとしたものはあるが、併しこの古風さは推せないと思った。」
島尾敏雄
男39歳
4 「一息に読んだが、その惹かれ方は身につまされるといったていのもので文学的感動とは少し違うようである。島尾氏のものではもっとずば抜けていいものが何作かある。」
葛城紀彦
男50歳
7 「はっきりした欠点を持つが、問題にすれば問題にできるだろうぐらいの考え方で選考会へ臨んだ。」「落着いた気品ある文体だがこれも後半ひどく甘くなってしまっている。もう少し後半にきびしさがあったら、単なる純愛小説とは別のものになったろう。」
深井迪子
女24歳
8 「はっきりした欠点を持つが、問題にすれば問題にできるだろうぐらいの考え方で選考会へ臨んだ。」「作者の背伸びしている観念小説で、到るところやり切れないところはあったが、併しロマンが書ける才能といったものは、候補作家中でこの人が際立っていたと思う。」
小林勝
男28歳
8 「はっきりした欠点を持つが、問題にすれば問題にできるだろうぐらいの考え方で選考会へ臨んだ。」「前半は埃りのない文体で戦前の朝鮮の辺境の町の風物をかなりよく書いていたが、三分の二位からあとは単なるノートになって薄っぺらになり、構成の上でも混乱してしまったのは惜しい。」
津田信
男30歳
4 「三人の女のドンファンの主人公に対する見方が、単なる三様の解釈に終っている。主人公を浮彫りにしなければ作品にならないが、それにはまだ作者は非力であると思った。」
  「こんどの候補作の中で、特に推したいと思った作品はなかった。」
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他の選考委員
丹羽文雄
瀧井孝作
中村光夫
石川達三
佐藤春夫
舟橋聖一
川端康成
宇野浩二
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選考委員
舟橋聖一男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
低調と見る 総行数7 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
3 「該当ナシでもよかったが、委員の中で強く推している近藤の授賞を認めてもいいという位の、気乗り薄な気持で、終始した。」
有吉佐和子
女25歳
0  
島尾敏雄
男39歳
0  
葛城紀彦
男50歳
0  
深井迪子
女24歳
0  
小林勝
男28歳
0  
津田信
男30歳
0  
  「特に推したいと思う作がないと同時に、特に忌みきらう作もなかった。大体六、七十点程度と見た。」
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他の選考委員
丹羽文雄
瀧井孝作
中村光夫
石川達三
佐藤春夫
井上靖
川端康成
宇野浩二
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選考委員
川端康成男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
純愛物語多し 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
10 「私も推した。それに理窟はない。また、この作品に格別の新味があるとも思わない。しかし、一つの小説の形として成功しているし、部分にすぐれたところもある。また作者に好感を持てる。」「ただ、この形の小説として、途中から結末が見えてしまう欠点はやむを得ない。そのやむを得ないものを作者が乗り越えているかどうかは、多少疑わしい。」
有吉佐和子
女25歳
4 「劇的に達者であり、感動も伴う。親子の人情話であっても悪くはないと思うが、効果を計算し過ぎ、また知識が衒気となりかねない。しかし、この人も盛んに書いてゆくだろう。」
島尾敏雄
男39歳
2 「短いがすぐれている。」
葛城紀彦
男50歳
2 「はじめがよく、なかほどがだれている。」
深井迪子
女24歳
7 「前作「秋から冬へ」(「文藝」学生小説入選)とは著しくちがう。「夏の嵐」に対する私の批評は不安定である。」「こういう試作を推すのはためらわれるし、今後を見た方がよい。また、この作品が作者のほんとうなら、作者は芥川賞よりも先きに出てゆくだろう。」
小林勝
男28歳
3 「いいけれども、少し調子が上らない。」
津田信
男30歳
2 「達者だが、いじくり過ぎではないか。」
  「今回の候補作は短編小説の首尾の整ったのが多く、純愛物語、美談の多かったのが特色である。」
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他の選考委員
丹羽文雄
瀧井孝作
中村光夫
石川達三
佐藤春夫
井上靖
舟橋聖一
宇野浩二
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選考委員
宇野浩二男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
成行的詮衡譚 総行数95 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男36歳
19 「以前の作品には無駄なところや欠点もあったが、こんどの小説にはそれがわりに少ない、というハンディキャップの反対のような条件があった、それには私は大たい同感である。」「作者がそれほど力を入れていない漁師町が案外よく出ているけれど、女主人公のナギが、よく書けばよいのに、殆んど書かれていないのが、私には、大へん物足りない、結局、「前の三つの候補作品より増しになった」ということで、この小説を芥川賞に推すのである。」
有吉佐和子
女25歳
11 「新人らしいところが殆んど全くなく、古風な作品である。」「この小説に書かれている人情はありふれたものであり、書き方にも新味がないからである。もとより作り物であろうが、それが見えすいているのが失敗である。」
島尾敏雄
男39歳
24 「文字どおりの一人称小説である。」「この小説は、失敗しているけれど、一風かわった文章で損もし得もしているのと、形やぶりの心理小説のようなところもあった」
葛城紀彦
男50歳
8 「しいてヒイキして云えば、『地唄』よりはいくらか新味はあるけれど、よく読めば、全体に古風である。これが(引用者注:文學界新人賞に)授賞されたのは、ちょいと新鮮に見え、ほんの少しの甘さと近頃めずらしい情緒と「感じは悪くないなあ」とでもいうところか。」
深井迪子
女24歳
16 「アケスケな、いたずら(原文傍点)好きな、蓮葉女の稜子と、純情で単純なようで、心底は図々しくて不敵で異常な好色漢である明と、(引用者中略)この二人(あるいは作者)の見方と考え方と感じ方とで、この百五十枚ぐらいの小説の殆んど全部を充たしている。が、その書き方が粗雑で上ずっているので、肝心のこの二人の主人公の姿が殆んど全く浮かんで来ない。つまり、この小説は、いたずらに長いだけで、はなはだ空しい作品である。」
小林勝
男28歳
11 「一見すると幼稚なように見えるけれど、『フォード・一九二七年』というものに目をつけたのもちょいと面白いし、ほめ過ぎるのを覚悟で云えば、書き方と物の見方にちょっとシャレたところも少しあり、朝鮮人の出るところなど、作者はそんなつもりではないかもしれないが、捨てたものではない。」「簡単に結論を述べると「未だし未だし」である。」
津田信
男30歳
7 「書かれてあることは別として、下品で、通俗小説としても悪趣味であり、こういう小説を推薦した人を軽蔑したい程である、強いて取り得をいえば、文章が悪達者であるという事だけである。」
  「最後に、口さがない京童部が、『「文學界」高等学校――「文藝春秋」大学校』と、聞きずてにならぬ事を、云った、『聞きずてならぬ』と云ったのは、「文學界」(学校)を出た物は「文藝春秋」(学校)に採用される、という意味らしいからである。」
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他の選考委員
丹羽文雄
瀧井孝作
中村光夫
石川達三
佐藤春夫
井上靖
舟橋聖一
川端康成
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受賞者・作品
近藤啓太郎男36歳×各選考委員 
「海人舟」
短篇 67
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男51歳
10 「「飛魚」「黒南風」の場合には、海に対する興味が強烈すぎて、小説の安定性を欠いていた。「海人舟」は、海と人間が渾然と一体となっている。」「新風というわけにはいかないが、健康な後味のよさである。永年小説を書いていて常に気にかかることは「童心」ということである。初心忘るべからずであるが、この小説の中から私はそれを強く感じた。」
瀧井孝作
男62歳
6 「わるくはないけれど、このごろ流行のフィクションで、人物もはじめから終りまで二人きりの相対で、なかなか巧みなものだが、それだけに自然な新鮮な方では前の「飛魚」の方が佳かったが。」
中村光夫
男45歳
5 「多年の努力がようやく描写の技巧で規格に達する作品を生んだというだけで、型にはまった空疎な物語という印象を受けました。」「一番小説臭すぎて詰らない小説と思っていたので、この授賞は僕には意外でした。」
石川達三
男51歳
11 「面白いけれども、当選作とするには私は物足らなかった。」「こういう作品は珍しくはないし特に優れて居るとも思えなかった。」「もし他にこれという候補作があれば、私はもっと論争して見る気はあったが、残念ながらその他のどの作品をも推薦する自信がもてなかった。(引用者中略)従って「海人舟」に対して積極的に反対する気持にもなれなかった。」
佐藤春夫
男64歳
29 「わたくしの心をひいた」「こういう古顔になると銓衡の側でも気分がだれて熱の入らないものだが今度に限って珍らしくそれがなかった。わたくしは近藤が以前の長所を能く保ち短所が補われた努力のあとを歴然と見た。今度のは書き出しの章魚の描写からすぐれている。」「この作の明朗で健康な作風とこの作者の努力とを認めてこれに限ると決めて愉快に場に臨んだ。」
井上靖
男49歳
7 「この作品の持つ、つつ抜けに明るい健康さに、私はどうもついて行けなかった。人間の掴み方も素朴というより通俗的に思われ、海底の描写も作り物の感を払拭できなかった。併しまとまっているという点ではこの作品が一番まとまっていた。他の作品にみるような致命的な欠陥はない。」
舟橋聖一
男51歳
3 「該当ナシでもよかったが、委員の中で強く推している近藤の授賞を認めてもいいという位の、気乗り薄な気持で、終始した。」
川端康成
男57歳
10 「私も推した。それに理窟はない。また、この作品に格別の新味があるとも思わない。しかし、一つの小説の形として成功しているし、部分にすぐれたところもある。また作者に好感を持てる。」「ただ、この形の小説として、途中から結末が見えてしまう欠点はやむを得ない。そのやむを得ないものを作者が乗り越えているかどうかは、多少疑わしい。」
宇野浩二
男64歳
19 「以前の作品には無駄なところや欠点もあったが、こんどの小説にはそれがわりに少ない、というハンディキャップの反対のような条件があった、それには私は大たい同感である。」「作者がそれほど力を入れていない漁師町が案外よく出ているけれど、女主人公のナギが、よく書けばよいのに、殆んど書かれていないのが、私には、大へん物足りない、結局、「前の三つの候補作品より増しになった」ということで、この小説を芥川賞に推すのである。」
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他の候補作
有吉佐和子
「地唄」
島尾敏雄
「鉄路に近く」
葛城紀彦
「北の湖」
深井迪子
「夏の嵐」
小林勝
「フォード・一九二七年」
津田信
「瞋恚の果て」
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候補者・作品
有吉佐和子女25歳×各選考委員 
「地唄」
短篇 69
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男51歳
4 「前半女主人公、後半父親と分けて描いているのが弱い。渾然とした多元描写がいけなかったものか。構成の苦労が不足。文字の感覚が古い。」
瀧井孝作
男62歳
15 「(引用者注:初めて読んだ時)佳作だと思った。」「再読した所、またこの小説の中の人物の心持にひきこまれて、老父の心持、娘の心持に、同情しながら読んだ。このごろの大方の小説は、読んでその作中人物の心持にひきこまれる程に、心をこめて書かれたものはすくないようだが、これは、そのすくない中の一つだと思った。」
中村光夫
男45歳
6 「文章の行間に作者の生きた心がにじんで作者の素質を感じさせますが、(引用者中略)素質に甘えすぎていると思われます。」「気持が少しいやらしいほど大人びているが、筆づかいと観察が幼稚です。」
石川達三
男51歳
5 「幸田文さんを思わせるような綿密な描写でなかなか力のある人だとは思うが、義理人情の世界がいかにも古い。こういう世界が現代日本に生きていることも事実ではあろうが、(新人)の名を冠することには疑問がある。」
佐藤春夫
男64歳
13 「大分好評らしかったがわたくしは全然耳を傾けなかった。」「表現力は全く不足と断じテーマの捉え方にも何人かの二番煎じらしい古さを感じた(何某の摸倣というのではないが)。「地唄」の人に喜ばれるのも要するに通俗な人情だと思うと盲人の世界をのぞかせてくれた有難味もうすれた。」「折角の才媛が再考し筆硯を改めて再び三度候補作品を提供することを期待して、今度は冷淡にこれを見送った。」
井上靖
男49歳
2 「達者でしみじみとしたものはあるが、併しこの古風さは推せないと思った。」
舟橋聖一
男51歳
0  
川端康成
男57歳
4 「劇的に達者であり、感動も伴う。親子の人情話であっても悪くはないと思うが、効果を計算し過ぎ、また知識が衒気となりかねない。しかし、この人も盛んに書いてゆくだろう。」
宇野浩二
男64歳
11 「新人らしいところが殆んど全くなく、古風な作品である。」「この小説に書かれている人情はありふれたものであり、書き方にも新味がないからである。もとより作り物であろうが、それが見えすいているのが失敗である。」
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他の候補作
近藤啓太郎
「海人舟」
島尾敏雄
「鉄路に近く」
葛城紀彦
「北の湖」
深井迪子
「夏の嵐」
小林勝
「フォード・一九二七年」
津田信
「瞋恚の果て」
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候補者・作品
島尾敏雄男39歳×各選考委員 
「鉄路に近く」
短篇 28
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男51歳
2 「何かを感じさせる小説であるが、これだけでは短かすぎる。このひとには期待がもてる。」
瀧井孝作
男62歳
4 「書出しの夢の場面など味があったが、私小説ならば、もっと切実に迫ってこなければ、こんな風に淡い味でまとめただけでは、物足らない。島尾氏の作では、以前にもっと佳いのがあったと思う。」
中村光夫
男45歳
7 「文章の行間に作者の生きた心がにじんで作者の素質を感じさせますが、(引用者中略)素質に甘えすぎていると思われます。」「日記の一節のようなもので、ここで問題になるとは、氏自身も期待しなかったでしょう。」
石川達三
男51歳
0  
佐藤春夫
男64歳
7 「わたくしの心をひいた」「強い実感の人に迫るものがあって無視し難い」「しかし(引用者中略)小粒でまだ十分力量を発揮し尽さない憾がある。」
井上靖
男49歳
4 「一息に読んだが、その惹かれ方は身につまされるといったていのもので文学的感動とは少し違うようである。島尾氏のものではもっとずば抜けていいものが何作かある。」
舟橋聖一
男51歳
0  
川端康成
男57歳
2 「短いがすぐれている。」
宇野浩二
男64歳
24 「文字どおりの一人称小説である。」「この小説は、失敗しているけれど、一風かわった文章で損もし得もしているのと、形やぶりの心理小説のようなところもあった」
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他の候補作
近藤啓太郎
「海人舟」
有吉佐和子
「地唄」
葛城紀彦
「北の湖」
深井迪子
「夏の嵐」
小林勝
「フォード・一九二七年」
津田信
「瞋恚の果て」
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候補者・作品
葛城紀彦男50歳×各選考委員 
「北の湖」
短篇 84
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男51歳
3 「あんまりいろいろと書きすぎている。書きすぎの失敗である。作者が情緒におぼれすぎると、感銘がそれだけそがれてしまう例である。」
瀧井孝作
男62歳
2 「一寸佳いが、すこしくだくだしかった。長ったらしくて弱かった。」
中村光夫
男45歳
3 「発端は面白そうな国際愛の物語を途中から作者の回想らしいものが這入りすぎて冗長になっています。」
石川達三
男51歳
0  
佐藤春夫
男64歳
0  
井上靖
男49歳
7 「はっきりした欠点を持つが、問題にすれば問題にできるだろうぐらいの考え方で選考会へ臨んだ。」「落着いた気品ある文体だがこれも後半ひどく甘くなってしまっている。もう少し後半にきびしさがあったら、単なる純愛小説とは別のものになったろう。」
舟橋聖一
男51歳
0  
川端康成
男57歳
2 「はじめがよく、なかほどがだれている。」
宇野浩二
男64歳
8 「しいてヒイキして云えば、『地唄』よりはいくらか新味はあるけれど、よく読めば、全体に古風である。これが(引用者注:文學界新人賞に)授賞されたのは、ちょいと新鮮に見え、ほんの少しの甘さと近頃めずらしい情緒と「感じは悪くないなあ」とでもいうところか。」
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他の候補作
近藤啓太郎
「海人舟」
有吉佐和子
「地唄」
島尾敏雄
「鉄路に近く」
深井迪子
「夏の嵐」
小林勝
「フォード・一九二七年」
津田信
「瞋恚の果て」
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候補者・作品
深井迪子女24歳×各選考委員 
「夏の嵐」
中篇 139
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男51歳
11 「学生小説募集第一回の時、全委員一致で推薦したこの人の特色は、むざんに失われていた。」「作者の勉強ぶりが痛々しく感じられるが、こうした勉強も必要であるが、小説にはもう一つ別の勉強も要るのではないか。罪の意識ということばが出てくるが、全篇のぶっこわしである。」「この人は決して太陽族ではない。太陽族ぶることは、単に小説の上の技巧にすぎないようである。」
瀧井孝作
男62歳
3 「若い男女の心理の綾が巧みに描いてあるようだが、その心持が一寸わからない所もあった。この作は大衆小説の筆致と見えた。」
中村光夫
男45歳
16 「既成の小説の規格を破って、何か自分の云いたいことを云おうとする野心に燃えています。そしてその企図は必ずしも成功していないにせよ、作者が何を書きたかったかということは、はっきり伝わってくるし、現代の青年男女がかつてない新しい面から描かれています。」「作者の観察は未熟で一面的であり、近親相姦の設定など不必要と思われますが、とにかく若い精神が時代の無道徳にどうたえているかという大問題が正面から提起されています。」
石川達三
男51歳
7 「力作だと思うし、才能も優れた人だろうけれども、これは成功した作品とは思われない。」「作者の才気を濫費しているような作品でいささか無秩序な気がする。けれども、そうは言うけれども、この作者が自分の才気をいじけさせない事を望む。」
佐藤春夫
男64歳
7 「(引用者注:「海人舟」のことを)拵えものだと云って「夏の嵐」を挙げた人には「海人舟」より「夏の嵐」の方がこしらえもので無いとは云わせないと云い、小説とは所詮拵えものなので「海人舟」が「夏の嵐」などよりよくこしらえられていると思った。」「ジャーナリズム文学(編輯者向常識程度の文学の意味)」
井上靖
男49歳
8 「はっきりした欠点を持つが、問題にすれば問題にできるだろうぐらいの考え方で選考会へ臨んだ。」「作者の背伸びしている観念小説で、到るところやり切れないところはあったが、併しロマンが書ける才能といったものは、候補作家中でこの人が際立っていたと思う。」
舟橋聖一
男51歳
0  
川端康成
男57歳
7 「前作「秋から冬へ」(「文藝」学生小説入選)とは著しくちがう。「夏の嵐」に対する私の批評は不安定である。」「こういう試作を推すのはためらわれるし、今後を見た方がよい。また、この作品が作者のほんとうなら、作者は芥川賞よりも先きに出てゆくだろう。」
宇野浩二
男64歳
16 「アケスケな、いたずら(原文傍点)好きな、蓮葉女の稜子と、純情で単純なようで、心底は図々しくて不敵で異常な好色漢である明と、(引用者中略)この二人(あるいは作者)の見方と考え方と感じ方とで、この百五十枚ぐらいの小説の殆んど全部を充たしている。が、その書き方が粗雑で上ずっているので、肝心のこの二人の主人公の姿が殆んど全く浮かんで来ない。つまり、この小説は、いたずらに長いだけで、はなはだ空しい作品である。」
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他の候補作
近藤啓太郎
「海人舟」
有吉佐和子
「地唄」
島尾敏雄
「鉄路に近く」
葛城紀彦
「北の湖」
小林勝
「フォード・一九二七年」
津田信
「瞋恚の果て」
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候補者・作品
小林勝男28歳×各選考委員 
「フォード・一九二七年」
短篇 55
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男51歳
3 「この材料をものするには、もっと洗練された、いわゆるうまい文章でなければ、生きてこない。妙にたどたどしい。」
瀧井孝作
男62歳
2 「幼稚な感じが一寸佳かった。」
中村光夫
男45歳
5 「文章の行間に作者の生きた心がにじんで作者の素質を感じさせますが、(引用者中略)素質に甘えすぎていると思われます。」「子供っぽい回想を自分で面白がりすぎている」
石川達三
男51歳
0  
佐藤春夫
男64歳
8 「わたくしの心をひいた」「象徴的でハイカラな独自の美しさのなかに秘めてよく装われた内容を見逃せないと思った。」「しかし(引用者中略)小粒でまだ十分力量を発揮し尽さない憾がある。」
井上靖
男49歳
8 「はっきりした欠点を持つが、問題にすれば問題にできるだろうぐらいの考え方で選考会へ臨んだ。」「前半は埃りのない文体で戦前の朝鮮の辺境の町の風物をかなりよく書いていたが、三分の二位からあとは単なるノートになって薄っぺらになり、構成の上でも混乱してしまったのは惜しい。」
舟橋聖一
男51歳
0  
川端康成
男57歳
3 「いいけれども、少し調子が上らない。」
宇野浩二
男64歳
11 「一見すると幼稚なように見えるけれど、『フォード・一九二七年』というものに目をつけたのもちょいと面白いし、ほめ過ぎるのを覚悟で云えば、書き方と物の見方にちょっとシャレたところも少しあり、朝鮮人の出るところなど、作者はそんなつもりではないかもしれないが、捨てたものではない。」「簡単に結論を述べると「未だし未だし」である。」
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他の候補作
近藤啓太郎
「海人舟」
有吉佐和子
「地唄」
島尾敏雄
「鉄路に近く」
葛城紀彦
「北の湖」
深井迪子
「夏の嵐」
津田信
「瞋恚の果て」
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候補者・作品
津田信男30歳×各選考委員 
「瞋恚の果て」
短篇 126
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男51歳
3 「悪達者である。筆がすべりすぎる。あまりすべりすぎるので、作者は疑いをさしはさみ、立ちどまる時間をついみすごしてしまったのではないか。」
瀧井孝作
男62歳
1 「達者すぎる。」
中村光夫
男45歳
2 「現代を扱いながらひどく古風な感じのする風俗小説。」
石川達三
男51歳
4 「いかにも新聞記者らしい筆の荒さを感じた。多元描写も成功していないし末尾の一章は無駄である。小説を書くことの面白さに溺れて、苦労なしに書き飛ばしているのではないかという気がした。」
佐藤春夫
男64歳
0  
井上靖
男49歳
4 「三人の女のドンファンの主人公に対する見方が、単なる三様の解釈に終っている。主人公を浮彫りにしなければ作品にならないが、それにはまだ作者は非力であると思った。」
舟橋聖一
男51歳
0  
川端康成
男57歳
2 「達者だが、いじくり過ぎではないか。」
宇野浩二
男64歳
7 「書かれてあることは別として、下品で、通俗小説としても悪趣味であり、こういう小説を推薦した人を軽蔑したい程である、強いて取り得をいえば、文章が悪達者であるという事だけである。」
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他の候補作
近藤啓太郎
「海人舟」
有吉佐和子
「地唄」
島尾敏雄
「鉄路に近く」
葛城紀彦
「北の湖」
深井迪子
「夏の嵐」
小林勝
「フォード・一九二七年」
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