芥川賞のすべて・のようなもの
第23回
芥川賞-選評の概要 トップページ
直木賞・芥川賞受賞作一覧
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選考委員の群像
マップ

ページの最後へ
Last Update[H26]2014/6/20

23   一覧へ 22前の回へ 後の回へ24
昭和25年/1950年上半期
(昭和25年/1950年8月31日決定発表/『文藝春秋』昭和25年/1950年10月号選評掲載)
選考委員  瀧井孝作
男56歳
石川達三
男45歳
舟橋聖一
男45歳
丹羽文雄
男45歳
坂口安吾
男43歳
宇野浩二
男59歳
川端康成
男51歳
岸田國士
男59歳
佐藤春夫
男58歳
選評総行数  54 45 24 48 51 66 40 14 31
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
辻亮一 「異邦人」等
128
男35歳
17 16 14 11 7 20 14 0 23
堀田善衛 「祖国喪失」
106
男32歳
0 7 2 2 0 1 0 0 0
洲之内徹 「棗の木の下」
116
男37歳
0 6 0 5 0 2 0 0 0
久坂葉子 「ドミノのお告げ」
60
女19歳
0 0 0 3 0 2 0 0 0
田宮虎彦 「絵本」等
242
男39歳
37 7 7 22 45 35 24 0 10
森田幸之 「北江」等
118
男36歳
0 13 6 5 0 2 3 0 0
              欠席 欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和25年/1950年10月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
瀧井孝作男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
型破りに 総行数54 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
17 「「異邦人」は、(引用者中略)題材がまず面白いと思いました。」「庶民と共に浮世のドン底に入って、精神のやすらぎを得ようとする、脱落した心持がこの小説のテーマらしく、この意味では一種の思想小説ともとれました。亦、思想小説としても、主張のない何気ない点が好もしいと思いました。」「デッサンの確かりした、線のするどい筆つきで、これにユーモラスのやわらか味もあって、一種の持味のある好い作家のように思われました。」「それで私は、この「異邦人」を推しました。」
堀田善衛
男32歳
0  
洲之内徹
男37歳
0  
久坂葉子
女19歳
0  
田宮虎彦
男39歳
37 「当選しそうでしたが、しまいにはずされて、一寸心のこりもありました。」「新人ではないし、もう十分認められている人ですが、それはこのごろ沢山書いていても筆に流れた所がないし、投げやりでないし、そして新人のように熱中した仕事振だから、このような一生懸命の仕事振に対して、こんどは特別に、型破りに、賞を呈するのもよいかと考えました。」「殊に、田宮氏の歴史小説に感心しました」「腕前は水際立ってズバ抜けています。」「現代小説は見劣りがすると思いました。」
森田幸之
男36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
坂口安吾
宇野浩二
川端康成
岸田國士
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
石川達三男45歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選後に 総行数45 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
16 「(引用者注:授賞が)「異邦人」になるとは思わなかった。」「危険を感じる。「木枯国にて」というもう一つの作品は問題にならなかった。これで相当に減点された位で、人柄の良い作家らしいが、その人柄を頼りに書いてあるような所がある。」
堀田善衛
男32歳
7 「相当いいものだと私は思っていたが、こういう作品のもつ一種の臭いと、それらの類型とが選者たちの鼻につくのであろうか、これを推挙する人は意外に少なかった。前半にかなり退屈なところはあるが、書ける人だと思う。」
洲之内徹
男37歳
6 「正月の委員会にも候補作として提出されたが、一月号にのっているので今回に保留したものであった。」「前回候補に出ていたときには私は(引用者中略)第一に推そうと思っていた。しかし今回まで保留されて見ると何か色あせた感じがあって強く推せなかった。」
久坂葉子
女19歳
0  
田宮虎彦
男39歳
7 「候補になっていた「絵本」よりも他に佳作があるということで、委員会の第一日ならば決定を保留し、次回までに近作を読んで見ることになった。」「もはや立派な作家であって今さら芥川賞を贈ることはないという話にきまった。」「歴史小説に立派なものが幾つか有った。」
森田幸之
男36歳
13 「「断橋」は才気の切れ味を見せたもので、「文学」というものの考え方、主題を彫琢して作品を彫り上げる場合の計画と勘の鋭さを私は採る。」「将来立派に書いて行ける人だ。「北江」の方を見てもそれはわかる。」「多分何を書いてもまちがいの少い人だろうと思う。」「技術的に、あるいは作家的手腕としては(引用者注:辻亮一より)森田君の方がすぐれていると私は主張した。」
  「(引用者注:田宮虎彦の)他の候補者のなかから、私は正直に言って一人の受賞者を決定しかねた。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
舟橋聖一
丹羽文雄
坂口安吾
宇野浩二
川端康成
岸田國士
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
舟橋聖一男45歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
煮え切らず 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
14 「坂口安吾が、口を極めて、「異邦人」を推すので、あいまい(原文傍点)な気持の私は、坂口の熱っぽさに捲きこまれ、坂口があんなに言うのでは、坂口を信用したいような気分になった。」「結論として、私は坂口のムキになった顔にのみ興味があり、「異邦人」イットセルフには、やっぱり興味がなかった。」
堀田善衛
男32歳
2  
洲之内徹
男37歳
0  
久坂葉子
女19歳
0  
田宮虎彦
男39歳
7 「田宮氏を推すか否か、委員の意見は区々であったが、芥川賞には新人の方がいいという話に、大勢が傾いた。」「(引用者注:銓衡委員会から)時がたつにつれ、ますます、あいまい模糊としてきた。こうなって見ると、やはり、田宮氏を推すべきではなかったかという振出しへ戻り、堂々めぐりになる。」
森田幸之
男36歳
6 「私は、(引用者注:辻亮一よりも)「断橋」の作者の方に、将来性が多いように思い、「断橋」を推した」
  「終戦後三回のうち、選者としての私はこんどが一番、歯切れが悪く、渋滞し、そして、あと味もサッパリしない。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
丹羽文雄
坂口安吾
宇野浩二
川端康成
岸田國士
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
丹羽文雄男45歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選後感 総行数48 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
11 「難はあるが、深刻な環境にあって、木枯国人とまじわり、素直に、あそこまであたたかく描き出したのはみごとだと思った。」「坂口君が推すほど私は買ってはいないにしろ、この持味は珍しいものである。小説技術で女の味を出しているのでなく、作者の人柄が滲み出ているという点で、今までの日本文学ではユニイクではないかと思った。」「「木枯国にて」は、「異邦人」の二番煎である。」
堀田善衛
男32歳
2 「推す人もあったが、読んでから一週間経った今は、私の頭には何も残っていない。」
洲之内徹
男37歳
5 「今度の候補の中でいちばん作家的手腕のあった」「この小説にはどうにもならない古さがある。宇野さんは自分ひとりを大切にしすぎると評していたが、この古さはどこから来るものか、私にはまだよく判らない。」
久坂葉子
女19歳
3 「チャーチル会の女優の静物画の程度である。瀧井さんが、ちょっと面白いと言ったのが私には興味があった。」
田宮虎彦
男39歳
22 「芥川賞としては異議があるが、受賞の方法を尾崎一雄的に解釈するというなら、田宮の内では歴史ものがよいと私は思った。」「「江上兄弟」「霧の中」上半期の歴史もの、それに最近の「鷺」「流転の剣客」と、田宮は一貫してきびしい眼をそだてている。漸く座を得たという感じになる。立派だと思った。その割に現代物があまいと委員達は言った。」「田宮虎彦はすでに自分らと同輩である。今更授賞など失礼にあたるという人も出た。」
森田幸之
男36歳
5 「(引用者注:「断橋」と「北江」は)まるで作風のちがったものだ。そのことに私は或る驚異を感じた。達者な筆である。「異邦人」についで「断橋」を推したい。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
舟橋聖一
坂口安吾
宇野浩二
川端康成
岸田國士
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
坂口安吾男43歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新人に 総行数51 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
7 「「異邦人」という作品の価値判断は、読者におまかせした方がいいだろう。これは理窟のいらない作品だ。読んで感動した人が、それだけ得をした、というそういう性質の作品なのだから。最も大衆的な作品でもある。この作品には一つの生命が具っているだけだ。」
堀田善衛
男32歳
0  
洲之内徹
男37歳
0  
久坂葉子
女19歳
0  
田宮虎彦
男39歳
45 「候補にあげられたことは、甚しく意外であった。」「その作品が不当に埋れているわけではなくて、多くの読者の目にもふれ、評者の目にもふれている。」「芥川賞復活の時に、三島君まではすでに既成作家と認めて授賞しない、というのが既定の方針であったが、田宮君が授賞するとなると、三島君はむろんのこと、梅崎君でも武田君でももっと古狸の檀君でも候補にいれなければならないし、かく云う私も、候補に入れてもらわなければならない。」「私は田宮君を芥川賞の卒業生と判定して、授賞に反対した次第である。」
森田幸之
男36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
宇野浩二
川端康成
岸田國士
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
宇野浩二男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
銓衡感 総行数66 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
20 「私は、第一回の会のときも、第二回の会のときも、『異邦人』をみとめなかったが、今、ていねいに、よみかえしてみて、このくらいなら、おしてもよいか、と、思いなおした。」
堀田善衛
男32歳
1  
洲之内徹
男37歳
2  
久坂葉子
女19歳
2  
田宮虎彦
男39歳
35 「(引用者注:候補作の中で)『絵本』が一番ましである、と思った。」「『足摺岬』、『富士』、その他を考慮にいれて、十年以上も苦労をしているらしいこの作家に、そういう事で、芥川賞におしてもよいのではないか、と思った。」「田宮の作品をおすなら、『絵本』一聯の小説より歴史小説のほうがずっとよい、という説がちょっと強く出て、私も、『鷺』という歴史小説にいくらか感心したので、その説に賛成した。(しかし、私は、田宮の小説は、やはり、『絵本』の系統のものの方を、とる。)」
森田幸之
男36歳
2  
  「第一回の会の時から、「(引用者中略)今さら、田宮の小説を、芥川賞として、雑誌に、出しても、『文藝春秋』のテガラにならぬ、」とでも思って、もやもやしていたらしい、文藝春秋新社の係りの人たちは、坂口が、いきおいよく調子づいた声で、『異邦人』を激賞する説を述べはじめると、文字どおり、『愁眉』をひらいた顔つきになった。」「いろいろな話しのやりとりのなかで、「政治的……」というような言葉を、文藝春秋新社側の人たちがつかうのは仕方がないとしても、委員の人たちのなかに使った人があったので、私は、アッケにとられた。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
坂口安吾
川端康成
岸田國士
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
川端康成男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「異邦人」の善意 総行数40 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
14 「「木枯国にて」と「異邦人」とは、前後連絡がある。」「「木枯国にて」は感傷で手薄いようだ。しかし私はこの感傷もそう悪いとは思わないし、これが「異邦人」の善意に通じるところもあろう。「異邦人」の素朴な善意は第一に人を打つのだが、敗戦によって共産主義国に抑留されて服役するという、異常で最低の生活にあって、生命として流れる善意であるから、諧謔も悲哀も生じて、そう簡単ではない。」
堀田善衛
男32歳
0  
洲之内徹
男37歳
0  
久坂葉子
女19歳
0  
田宮虎彦
男39歳
24 「田宮虎彦氏の作品は七篇読んだ。この賞の期間に、田宮氏は七篇以上書いていて、それらがことごとく候補作または参考作となったわけである。」「田宮氏への授賞に私は無論異存はないが、しかしまた田宮氏をすでに芥川賞の新人の線を越えた作家とすることにも異存はない。」「その作品や作家が芥川賞に価しないのではなく、他の候補作品に劣るのではなく、その逆であって、田宮氏をすでに芥川賞による新人推薦を必要としない作家と認めたことは明らかにしたいものである。」
森田幸之
男36歳
3 「(引用者注:授賞に)そう反対ではないが、重感が不足であろう。」「この後が期待出来る。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
坂口安吾
宇野浩二
岸田國士
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
岸田國士男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
棄権 総行数14 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
0  
堀田善衛
男32歳
0  
洲之内徹
男37歳
0  
久坂葉子
女19歳
0  
田宮虎彦
男39歳
0  
森田幸之
男36歳
0  
  「今度の芥川賞の銓衡には、私は選者としての任務を果すことができなかった。」「どんな理由があったにせよ、二回開かれた委員会のいずれにも出席できなかったのは、私のやや勝手な都合であって、これは委員の一人として怠慢のそしりをまぬかれない。」「そういうわけで、今度だけは、責任をもって選評を書く資格が私にはないのである。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
坂口安吾
宇野浩二
川端康成
佐藤春夫
  ページの先頭へ

選考委員
佐藤春夫男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
手紙を兼ねた選評 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
辻亮一
男35歳
23 「人生に対処する、この作者の態度、あの素材に向っての作者の目の角度にある特色とあの独特なスタイルに出来上っている表現力は珍重すべく当選に値するものでしょう。」「云わば実直な戯作(原文傍点)とでもいう観で、自然主義風の純客観や描写万能から一歩突きぬけた境地(これを邪道とする人もあるかも知れないが、自分は一詩情と思う)この点、多分坂口君あたりの共鳴が多かったろうか。」
堀田善衛
男32歳
0  
洲之内徹
男37歳
0  
久坂葉子
女19歳
0  
田宮虎彦
男39歳
10 「最初はひとりを選べとの仰せ故田宮虎彦氏を挙げ」「仰せの如く田宮氏は既に流行作家の観あり、芥川賞作家の域を出ている上、当選作品で特にどれという一篇を決めにくい点、編輯部の意見が田宮氏を喜ばなかったのではありますまいか。それも認めます。しかし実のところは、あまり編輯部が強硬に主張されるのは、(もしそういう事実がありとすれば)御遠慮願いたいのですが。」
森田幸之
男36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
坂口安吾
宇野浩二
川端康成
岸田國士
  ページの先頭へ


受賞者・作品
辻亮一男35歳×各選考委員 
「異邦人」等
短篇 128
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男56歳
17 「「異邦人」は、(引用者中略)題材がまず面白いと思いました。」「庶民と共に浮世のドン底に入って、精神のやすらぎを得ようとする、脱落した心持がこの小説のテーマらしく、この意味では一種の思想小説ともとれました。亦、思想小説としても、主張のない何気ない点が好もしいと思いました。」「デッサンの確かりした、線のするどい筆つきで、これにユーモラスのやわらか味もあって、一種の持味のある好い作家のように思われました。」「それで私は、この「異邦人」を推しました。」
石川達三
男45歳
16 「(引用者注:授賞が)「異邦人」になるとは思わなかった。」「危険を感じる。「木枯国にて」というもう一つの作品は問題にならなかった。これで相当に減点された位で、人柄の良い作家らしいが、その人柄を頼りに書いてあるような所がある。」
舟橋聖一
男45歳
14 「坂口安吾が、口を極めて、「異邦人」を推すので、あいまい(原文傍点)な気持の私は、坂口の熱っぽさに捲きこまれ、坂口があんなに言うのでは、坂口を信用したいような気分になった。」「結論として、私は坂口のムキになった顔にのみ興味があり、「異邦人」イットセルフには、やっぱり興味がなかった。」
丹羽文雄
男45歳
11 「難はあるが、深刻な環境にあって、木枯国人とまじわり、素直に、あそこまであたたかく描き出したのはみごとだと思った。」「坂口君が推すほど私は買ってはいないにしろ、この持味は珍しいものである。小説技術で女の味を出しているのでなく、作者の人柄が滲み出ているという点で、今までの日本文学ではユニイクではないかと思った。」「「木枯国にて」は、「異邦人」の二番煎である。」
坂口安吾
男43歳
7 「「異邦人」という作品の価値判断は、読者におまかせした方がいいだろう。これは理窟のいらない作品だ。読んで感動した人が、それだけ得をした、というそういう性質の作品なのだから。最も大衆的な作品でもある。この作品には一つの生命が具っているだけだ。」
宇野浩二
男59歳
20 「私は、第一回の会のときも、第二回の会のときも、『異邦人』をみとめなかったが、今、ていねいに、よみかえしてみて、このくらいなら、おしてもよいか、と、思いなおした。」
川端康成
男51歳
14 「「木枯国にて」と「異邦人」とは、前後連絡がある。」「「木枯国にて」は感傷で手薄いようだ。しかし私はこの感傷もそう悪いとは思わないし、これが「異邦人」の善意に通じるところもあろう。「異邦人」の素朴な善意は第一に人を打つのだが、敗戦によって共産主義国に抑留されて服役するという、異常で最低の生活にあって、生命として流れる善意であるから、諧謔も悲哀も生じて、そう簡単ではない。」
岸田國士
男59歳
0  
佐藤春夫
男58歳
23 「人生に対処する、この作者の態度、あの素材に向っての作者の目の角度にある特色とあの独特なスタイルに出来上っている表現力は珍重すべく当選に値するものでしょう。」「云わば実直な戯作(原文傍点)とでもいう観で、自然主義風の純客観や描写万能から一歩突きぬけた境地(これを邪道とする人もあるかも知れないが、自分は一詩情と思う)この点、多分坂口君あたりの共鳴が多かったろうか。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
堀田善衛
「祖国喪失」
洲之内徹
「棗の木の下」
久坂葉子
「ドミノのお告げ」
田宮虎彦
「絵本」等
森田幸之
「北江」等
  ページの先頭へ

候補者・作品
堀田善衛男32歳×各選考委員 
「祖国喪失」
短篇 106
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男56歳
0  
石川達三
男45歳
7 「相当いいものだと私は思っていたが、こういう作品のもつ一種の臭いと、それらの類型とが選者たちの鼻につくのであろうか、これを推挙する人は意外に少なかった。前半にかなり退屈なところはあるが、書ける人だと思う。」
舟橋聖一
男45歳
2  
丹羽文雄
男45歳
2 「推す人もあったが、読んでから一週間経った今は、私の頭には何も残っていない。」
坂口安吾
男43歳
0  
宇野浩二
男59歳
1  
川端康成
男51歳
0  
岸田國士
男59歳
0  
佐藤春夫
男58歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
辻亮一
「異邦人」等
洲之内徹
「棗の木の下」
久坂葉子
「ドミノのお告げ」
田宮虎彦
「絵本」等
森田幸之
「北江」等
  ページの先頭へ

候補者・作品
洲之内徹男37歳×各選考委員 
「棗の木の下」
短篇 116
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男56歳
0  
石川達三
男45歳
6 「正月の委員会にも候補作として提出されたが、一月号にのっているので今回に保留したものであった。」「前回候補に出ていたときには私は(引用者中略)第一に推そうと思っていた。しかし今回まで保留されて見ると何か色あせた感じがあって強く推せなかった。」
舟橋聖一
男45歳
0  
丹羽文雄
男45歳
5 「今度の候補の中でいちばん作家的手腕のあった」「この小説にはどうにもならない古さがある。宇野さんは自分ひとりを大切にしすぎると評していたが、この古さはどこから来るものか、私にはまだよく判らない。」
坂口安吾
男43歳
0  
宇野浩二
男59歳
2  
川端康成
男51歳
0  
岸田國士
男59歳
0  
佐藤春夫
男58歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
辻亮一
「異邦人」等
堀田善衛
「祖国喪失」
久坂葉子
「ドミノのお告げ」
田宮虎彦
「絵本」等
森田幸之
「北江」等
  ページの先頭へ

候補者・作品
久坂葉子女19歳×各選考委員 
「ドミノのお告げ」
短篇 60
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男56歳
0  
石川達三
男45歳
0  
舟橋聖一
男45歳
0  
丹羽文雄
男45歳
3 「チャーチル会の女優の静物画の程度である。瀧井さんが、ちょっと面白いと言ったのが私には興味があった。」
坂口安吾
男43歳
0  
宇野浩二
男59歳
2  
川端康成
男51歳
0  
岸田國士
男59歳
0  
佐藤春夫
男58歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
辻亮一
「異邦人」等
堀田善衛
「祖国喪失」
洲之内徹
「棗の木の下」
田宮虎彦
「絵本」等
森田幸之
「北江」等
  ページの先頭へ

候補者・作品
田宮虎彦男39歳×各選考委員 
「絵本」等
短篇6篇 242
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男56歳
37 「当選しそうでしたが、しまいにはずされて、一寸心のこりもありました。」「新人ではないし、もう十分認められている人ですが、それはこのごろ沢山書いていても筆に流れた所がないし、投げやりでないし、そして新人のように熱中した仕事振だから、このような一生懸命の仕事振に対して、こんどは特別に、型破りに、賞を呈するのもよいかと考えました。」「殊に、田宮氏の歴史小説に感心しました」「腕前は水際立ってズバ抜けています。」「現代小説は見劣りがすると思いました。」
石川達三
男45歳
7 「候補になっていた「絵本」よりも他に佳作があるということで、委員会の第一日ならば決定を保留し、次回までに近作を読んで見ることになった。」「もはや立派な作家であって今さら芥川賞を贈ることはないという話にきまった。」「歴史小説に立派なものが幾つか有った。」
舟橋聖一
男45歳
7 「田宮氏を推すか否か、委員の意見は区々であったが、芥川賞には新人の方がいいという話に、大勢が傾いた。」「(引用者注:銓衡委員会から)時がたつにつれ、ますます、あいまい模糊としてきた。こうなって見ると、やはり、田宮氏を推すべきではなかったかという振出しへ戻り、堂々めぐりになる。」
丹羽文雄
男45歳
22 「芥川賞としては異議があるが、受賞の方法を尾崎一雄的に解釈するというなら、田宮の内では歴史ものがよいと私は思った。」「「江上兄弟」「霧の中」上半期の歴史もの、それに最近の「鷺」「流転の剣客」と、田宮は一貫してきびしい眼をそだてている。漸く座を得たという感じになる。立派だと思った。その割に現代物があまいと委員達は言った。」「田宮虎彦はすでに自分らと同輩である。今更授賞など失礼にあたるという人も出た。」
坂口安吾
男43歳
45 「候補にあげられたことは、甚しく意外であった。」「その作品が不当に埋れているわけではなくて、多くの読者の目にもふれ、評者の目にもふれている。」「芥川賞復活の時に、三島君まではすでに既成作家と認めて授賞しない、というのが既定の方針であったが、田宮君が授賞するとなると、三島君はむろんのこと、梅崎君でも武田君でももっと古狸の檀君でも候補にいれなければならないし、かく云う私も、候補に入れてもらわなければならない。」「私は田宮君を芥川賞の卒業生と判定して、授賞に反対した次第である。」
宇野浩二
男59歳
35 「(引用者注:候補作の中で)『絵本』が一番ましである、と思った。」「『足摺岬』、『富士』、その他を考慮にいれて、十年以上も苦労をしているらしいこの作家に、そういう事で、芥川賞におしてもよいのではないか、と思った。」「田宮の作品をおすなら、『絵本』一聯の小説より歴史小説のほうがずっとよい、という説がちょっと強く出て、私も、『鷺』という歴史小説にいくらか感心したので、その説に賛成した。(しかし、私は、田宮の小説は、やはり、『絵本』の系統のものの方を、とる。)」
川端康成
男51歳
24 「田宮虎彦氏の作品は七篇読んだ。この賞の期間に、田宮氏は七篇以上書いていて、それらがことごとく候補作または参考作となったわけである。」「田宮氏への授賞に私は無論異存はないが、しかしまた田宮氏をすでに芥川賞の新人の線を越えた作家とすることにも異存はない。」「その作品や作家が芥川賞に価しないのではなく、他の候補作品に劣るのではなく、その逆であって、田宮氏をすでに芥川賞による新人推薦を必要としない作家と認めたことは明らかにしたいものである。」
岸田國士
男59歳
0  
佐藤春夫
男58歳
10 「最初はひとりを選べとの仰せ故田宮虎彦氏を挙げ」「仰せの如く田宮氏は既に流行作家の観あり、芥川賞作家の域を出ている上、当選作品で特にどれという一篇を決めにくい点、編輯部の意見が田宮氏を喜ばなかったのではありますまいか。それも認めます。しかし実のところは、あまり編輯部が強硬に主張されるのは、(もしそういう事実がありとすれば)御遠慮願いたいのですが。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
辻亮一
「異邦人」等
堀田善衛
「祖国喪失」
洲之内徹
「棗の木の下」
久坂葉子
「ドミノのお告げ」
森田幸之
「北江」等
  ページの先頭へ

候補者・作品
森田幸之男36歳×各選考委員 
「北江」等
短篇2篇 118
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男56歳
0  
石川達三
男45歳
13 「「断橋」は才気の切れ味を見せたもので、「文学」というものの考え方、主題を彫琢して作品を彫り上げる場合の計画と勘の鋭さを私は採る。」「将来立派に書いて行ける人だ。「北江」の方を見てもそれはわかる。」「多分何を書いてもまちがいの少い人だろうと思う。」「技術的に、あるいは作家的手腕としては(引用者注:辻亮一より)森田君の方がすぐれていると私は主張した。」
舟橋聖一
男45歳
6 「私は、(引用者注:辻亮一よりも)「断橋」の作者の方に、将来性が多いように思い、「断橋」を推した」
丹羽文雄
男45歳
5 「(引用者注:「断橋」と「北江」は)まるで作風のちがったものだ。そのことに私は或る驚異を感じた。達者な筆である。「異邦人」についで「断橋」を推したい。」
坂口安吾
男43歳
0  
宇野浩二
男59歳
2  
川端康成
男51歳
3 「(引用者注:授賞に)そう反対ではないが、重感が不足であろう。」「この後が期待出来る。」
岸田國士
男59歳
0  
佐藤春夫
男58歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
辻亮一
「異邦人」等
堀田善衛
「祖国喪失」
洲之内徹
「棗の木の下」
久坂葉子
「ドミノのお告げ」
田宮虎彦
「絵本」等
  ページの先頭へ



ページの先頭へ

トップページ直木賞・芥川賞受賞作一覧受賞作・候補作一覧受賞作家の群像候補作家の群像
選考委員の群像マップ