岩井圭也（いわいけいや）-直木賞候補作家｜直木賞のすべて

直木賞のすべて

第171回

＝受賞者＝
一穂ミチ

＝候補者＝
青崎有吾
麻布競馬場
岩井圭也
柚木麻子

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Last Update●[R6]2024/9/26

	Iwai Keiya
	生没年月日【注】	昭和62年/1987年～
	経歴	大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。平成30年/2018年「永遠についての証明」で野性時代フロンティア文学賞を受賞、作家デビューする。
	受賞歴・候補歴	\|候補\| 第8回小説現代長編新人賞（平成25年/2013年）「決闘者の孤独」岩井啓庫名義 \|候補\| 第9回小説現代長編新人賞（平成26年/2014年）「竹の刃」岩井啓庫名義第8回野性時代フロンティア文学賞［奨励賞］（平成29年/2017年）「うつくしき屑」岩井圭吾名義第9回小島信夫文学賞（平成29年/2017年）「裂果」岩井圭吾名義 \|候補\| 第38回横溝正史ミステリ大賞（平成30年/2018年）「藍と茜」岩井圭吾名義 \|候補\| 第49回ノベル大賞（平成30年/2018年）「あの夏へ還る」岩井圭吾名義第9回野性時代フロンティア文学賞（平成30年/2018年）「永遠についての証明」 \|候補\| 第76回日本推理作家協会賞［長編および連作短編集部門］（令和4年/2022年）『最後の鑑定人』 \|候補\| 第36回山本周五郎賞（令和4年/2022年度）『完全なる白銀』 \|候補\| 第77回日本推理作家協会賞［長編および連作短編集部門］（令和5年/2023年）『楽園の犬』 \|候補\| 第171回直木賞（令和6年/2024年上期）『われは熊楠』
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『完全(かんぜん)なる白銀(はくぎん)』（令和5年/2023年2月・小学館刊）

山本周五郎賞 第36回候補

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　岩井圭也　35歳
選考委員		評価	行数	評言
伊坂幸太郎	51歳	■	50	「世間から疑いの目を向けられ、非難されている登山家の名誉を回復する、というストーリーは非常に面白く、わくわくさせられました。ただ、こちらが期待していたものよりは少しあっさりとしている、という印象を受けました。」「これまでに読んだことのある岩井圭也さんの別の作品（たとえば『水よ踊れ』や『竜血の山』）では、こちらの感情をつかんでくる丁寧さや、読み応えがありましたから、今回のこの小説については、あえて重厚感ではなく、読みやすさやスピード感を優先させたのだろうとも受け取りました。」
江國香織	59歳	■	32	「読者にまったく媚びていない点で、勇敢な小説だと思いました。」「が、社会における女性の扱われ方と環境問題（地球の温暖化）という二つの要素の取り入れ方がやや表層的で、小説全体の強度が下がってしまったのが残念でした。」「オーソドックスということの価値を思いださせてくれる佳作ではあったのですが、環境問題や女性の扱われ方を描くにはちょっと覚悟が足りなかったかな、という印象を持ちました。」
荻原浩	66歳	◎	41	「この人の文章には、言葉だけで読者を小説の中に引き込む力がある。」「環境問題も性差別の問題も盛り込まれていて、岩井さん、これはなんざます、と重箱の隅を突っつきたくても、隅々まで行き届いていて、突っつきにくい。優等生的というか。」「『木挽町のあだ討ち』とともにこの作品も推した。」
今野敏	67歳	△	29	「この作者は会話の呼吸がとてもうまい。それだけで感動させられる場面がしばしばあった。作者の持ち味だろう。」「ただ、女性目線にしたことが果たして成功しただろうかという疑問はある。」「岩井圭也は実は推理作家協会賞の最終候補にも残っており、そちらの選考委員でもある私はその作品を推していた。」「この作者の文章には北国の淡い青空のような爽やかさを感じる。どちらかの受賞を望んでいただけに、とても残念だ。」
三浦しをん	46歳	■	68	「硬質な文章がとてもいいと思ったし、山岳小説を通して女性の生きづらさを描くって斬新だなと目から鱗だった。」「私が気になったのは、女性同士の友情がちょっと淡泊かなという点だ。（引用者中略）私が女性同士の友情に激熱すぎるだけとも言えるが、平時における緑里が同性の友人とどういう距離感で関係性を築いているのか、もう少し塩梅を探ってもよかったのかもしれない。」
選評出典：『小説新潮』令和5年/2023年7月号

第171回候補

『われは熊楠(くまぐす)』（令和6年/2024年5月・文藝春秋刊）

媒体・作品情報

作品名別表記	カバー・奥付ルビ有り「くまぐす」
印刷/発行年月日	発行令和6年/2024年5月13日（第1刷）
発行者等	発行者花田朋子　印刷・製本図書印刷　組版萩原印刷
発行所	株式会社文藝春秋（東京都）			形態	四六判　上製
装幀/装画等	装幀中川真吾　カバー装画池田学 Mother Tree／2009 紙にペン、インク／20×15cm 個人蔵／(c)IKEDA Manabu Courtesy of Mizuma Art Gallery
総ページ数	331	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	43字 ×18行 ×1段
本文ページ	5～328 （計324頁）	測定枚数	565枚

書誌

初出『別冊文藝春秋』令和5年/2023年9月号～令和6年/2024年1月号

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　岩井圭也　37歳
選考委員		評価	行数	評言
京極夏彦	61歳	■	24	「視点は主に熊楠に寄り添うものだが、熊楠の複雑な思考回路を本来意識の表層に上ってくるべくもない深層を明文化することで補完しようという試みは、大変に面白い。ただその試みが有機的に機能する場面は最後まで殆どない。その技法で立ち上がっていただろう景色を思うと極めて残念である。」
角田光代	57歳	△	18	「南方熊楠という得体の知れない人が、この作者の筆によって、じつに身近な存在になったと私は感じたのだが、それは同時に、得体の知れない人を矮小化してしまったことにもなる。」「熊楠の人間的弱さを、私はとても好ましく読んだのだけれど、熊楠という人から漂う異様さは消えてしまったのかもしれない。」
三浦しをん	47歳	■	23	「弟、息子、妻との関係に山場を置き、もっとつっこんで描いたほうが、新たな熊楠像がより際立ったのではないか。」「とはいえ、那智山中で採集する植物が如来の姿で現れるシーンなど、現実と幻想の境界が融けていくさまが素晴らしいと感じた。」
林真理子	70歳	■	23	「読み終わってみると、やはり熊楠が「大酒飲みの奇矯な爺さん」としか見えないのである。何をしたいのかもよくわからないし、何を成しとげたかったのかも伝わってこない。この小説のハイライトは、大英博物館の図書館に初めて入った時と、天皇に御進講した時だと思う。この二つが案外あっさりしている。」
宮部みゆき	63歳	△	8	「やや硬い感じの生真面目な筆致が、妻の松枝さんが出てくると俄然面白くなるのが印象に残りました。」
浅田次郎	72歳	△	15	「文章は堅実で読みやすく、この人ならばどんな話でもうまく書けるだろうと思った。だとすると、評伝ふうの本作で世に出るのは適切ではない。」「事実は小説より奇なりというが、事実より奇なる嘘をついてこその小説家である。」
高村薫	71歳	●	13	「狂気と紙一重の巨人を小説的に造形するにあたって、全体像を捉えるために整理しすぎたのだろう。」「言語化が難しい心身の混沌に十分踏み込まなかったことで、森羅万象を求める精神の彷徨も抽象的なものになり、ずいぶん小ぶりの熊楠になった。」
桐野夏生	72歳	◎	25	「私が推したのは『われは熊楠』だ。文章は簡潔ながらも刃が突き刺さるような鋭さがあり、語彙が豊富で愉しい読書だった。」「一生を追うには紙数が足りないようだ。（引用者中略）だが、まるで人間Googleを目指しているかのような、知識の所有に奔走した熊楠の狂的な一面は充分に描かれている。」
選評出典：『オール讀物』令和6年/2024年9・10月合併号

文量

長篇

章立て

「第一章　緑樹」「第二章　星火」「第三章　幽谷」「第四章　閑夜」「第五章　風雪」「最終章　紫花」

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