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昭和53年/1978年下半期
(昭和54年/1979年1月19日決定発表/『オール讀物』昭和54年/1979年4月号選評掲載)
選考委員  城山三郎
男51歳
松本清張
男69歳
源氏鶏太
男66歳
今日出海
男75歳
新田次郎
男66歳
五木寛之
男46歳
村上元三
男68歳
川口松太郎
男79歳
水上勉
男59歳
司馬遼太郎
男55歳
選評総行数  68 56 52 38 56 52 52 39 57  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
宮尾登美子 『一絃の琴』
700
女52歳
18 35 14 22 0 0 7 15 35    
有明夏夫 『大浪花諸人往来』
594
男42歳
10 11 12 9 0 0 5 8 18    
阿刀田高 『冷蔵庫より愛をこめて』
639
男44歳
15 0 6 0 8 0 4 0 0    
古川薫 「野山獄相聞抄」
85
男53歳
7 6 9 0 0 0 5 17 4    
安達征一郎 『日出づる海 日沈む海』
409
男52歳
6 0 8 0 11 0 7 0 0    
小林信彦 「みずすましの街」
80
男46歳
4 0 0 0 0 10 5 0 4    
虫明亜呂無 「シャガールの馬」他
48
男55歳
5 5 0 0 0 12 5 0 4    
小関智弘 「地の息」
101
男45歳
4 0 0 0 19 0 2 0 4    
              欠席
書面回答
  欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和54年/1979年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
城山三郎男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
琴の音が聞える 総行数68 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
18 「たくましい筆力で、ひきこまれた。」「琴を聞きたい、いや琴の音が聞えてくるような、感動があった。」「重く読みづらいという声もあったが、わたしには、薪の山が消えかけてはまた華やいだ炎を上げるという感じが続き、一気に読むことができた。」
有明夏夫
男42歳
10 「時代・舞台・人物の設定が秀抜で、いわゆる大道具・小道具の類もよく書きこまれている。」「わたしには、ドラマが盛り上りかけたところで、ふいに終る感じがし、結びの新聞記事とのかね合いが、うまく成功しているとは思えなかった。」
阿刀田高
男44歳
15 「わたしには、いちばんおもしろく、現代を感じさせ、考えさせてくれた。」「北極からの風が吹き抜けて行くような新鮮さと戦慄がある。同工異曲の軽い思いつきのように見られ、損をしたが、その軽さ新しさは、相当に質のよいもので、こうした領域の仕事はもっと評価されていいと思う。」
古川薫
男53歳
7 「過不足なく描かれた好短篇だが、その過不足なくというところが、きれいごとのように見られ、物足りなさを与えた。どこまで歴史につくか、歴史から離れるか、難しい問題である。」
安達征一郎
男52歳
6 「汐の匂い立つような感じもあるが、やや古風なのと、話の先が見えてしまうようなところが、気になった。」
小林信彦
男46歳
4 「この作者の前向きな小説づくりの味が存分に発揮されたという形のものでなく、」
虫明亜呂無
男55歳
5 「新しい題材に挑んだ意欲的な小品群で、仕上りもわるくないのだが、やや説明に過ぎ、うならせるものが欲しいと思った。」
小関智弘
男45歳
4 「登場人物が多すぎ、話が少し拡散して、いまひとつ、きまるものがなかった。」
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他の選考委員
松本清張
源氏鶏太
今日出海
新田次郎
五木寛之
村上元三
川口松太郎
水上勉
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選考委員
松本清張男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
貴重な文体 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
35 「本命と見られていたようだが、選考委員会ではただちにこれに授賞が決定したのではない。多かったのは、読むのに骨が折れる、という声だった。」「しかし、一方から考えると、氏の文章は説話体であり、説話体なら饒舌が一つの特徴である。」「一絃の琴(今委員によれば、じっさいはそれほどでもない楽器だそうだが)を描写の上で芸術品にした文学的手腕を評価したい。」
有明夏夫
男42歳
11 「まことに才筆である。文明開化の大阪ものだが、大佛次郎氏の開化の「横浜もの」と東西の対応になり得るかもしれない。」「探偵ものに見えるかもしれないが、真意はそうでなく、明治初期の市井風俗を描いたもの。この領域に進まれることを作者に望む。」
阿刀田高
男44歳
0  
古川薫
男53歳
6 「氏のこれまでの作品の中では秀作だった。しかし、獄中の吉田松陰の狂熱的な面を伝えてないのは、人物立体像の一方を欠落させている。」
安達征一郎
男52歳
0  
小林信彦
男46歳
0  
虫明亜呂無
男55歳
5 「描写的にすぐれている部分はあるが、従来のパターンを超えていないのが残念である。」
小関智弘
男45歳
0  
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他の選考委員
城山三郎
源氏鶏太
今日出海
新田次郎
五木寛之
村上元三
川口松太郎
水上勉
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選考委員
源氏鶏太男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
14 「いわゆる芸道物語を超えていた。文章が女の感傷を色濃く出しているがこの作家の場合、寧ろ長所になっていた。」「今のままの描写はすでにこの作家の身についたものであろうし、それを押し通した方がいいのでなかろうか。」
有明夏夫
男42歳
12 「まさに作者が自分の鉱脈をさぐりあてた感じである。こせこせしないでおおらかに描いていて、およそ「文学」とは無縁の作品を書いているようで、それなりに神経がゆきとどいていた。」「五木氏の、この作家は直木賞をあきらめたのでないか、そして、こういう作品が書けた、という意味の発言は印象に残った。」
阿刀田高
男44歳
6 「過去の直木賞候補になったことのない新しい分野である。ぞっとする恐怖感があって、うまい作家だと思った。」
古川薫
男53歳
9 「多くの票を集めたのだが、松陰の描き方に納得がいかないとの説に敗れた。」「私は、今でもこの作家は、「十三人の修羅」で授賞すべきであったと心が残っている。」
安達征一郎
男52歳
8 「今でも惜しかったと思っている。各章が感動的で、男っぽく、しかも、海を見事に描いていた。ただ、前回授賞の「深重の海」も海がテーマになっていたので、その点で多少損をしていたようだ。」
小林信彦
男46歳
0  
虫明亜呂無
男55歳
0  
小関智弘
男45歳
0  
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他の選考委員
城山三郎
松本清張
今日出海
新田次郎
五木寛之
村上元三
川口松太郎
水上勉
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選考委員
今日出海男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
高い水準 総行数38 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
22 「ほとんど全委員一致で授賞に賛成したのは当然の帰結ではあろう。ただ(引用者中略)長くて、重いので、読むのに骨が折れるものであった。」「作者の書きたい興味と読者の読みたい興味との合致というか、程合いが出来たら、自分はもっといい読者になるだろうとも思った。」
有明夏夫
男42歳
9 「軽くて読み易いが、それはあの中に登場する人々が、そしてその周囲が庶民的で、環境に溶けこんでいるせいだ。決して手軽な作品ではない。」
阿刀田高
男44歳
0  
古川薫
男53歳
0  
安達征一郎
男52歳
0  
小林信彦
男46歳
0  
虫明亜呂無
男55歳
0  
小関智弘
男45歳
0  
  「今度の候補作八篇はどれも読みっぱなしの出来ぬ佳作揃いだった。僅差で片附けられず、撰に困り、当惑もした。」
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他の選考委員
城山三郎
松本清張
源氏鶏太
新田次郎
五木寛之
村上元三
川口松太郎
水上勉
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選考委員
新田次郎男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力作ぞろい 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
0  
有明夏夫
男42歳
0  
阿刀田高
男44歳
8 「一篇一篇が斬新な素材を使ったしゃれた小説で、なによりも増して空想力が抜群だった。」
古川薫
男53歳
0  
安達征一郎
男52歳
11 「彼の前作「怨の儀式」「種族の歌」そして今回の作品は、消えて行こうとしている古きものへの郷愁を沖縄の糸満漁師に求めたものであり、海の描写のたくましさに感動させられた。」
小林信彦
男46歳
0  
虫明亜呂無
男55歳
0  
小関智弘
男45歳
19 「無駄な表現がなく、次々と出て来る脇役的人物の声色まではっきりと聞き取れるように書かれていた。」「主人公の魚屋夫婦の個性の書き分けは特に見事だった。この人の前作「錆色の町」も力作だったが、それよりも一段と出来栄えがいいと思った。」
  「残念ながら以上の三作(引用者注:「冷蔵庫より愛をこめて」「日出づる海日沈む海」「地の息」)は推す委員が少なかったから落ちてしまったが、力作ぞろいのときには止むを得ないことだと思っている。」
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他の選考委員
城山三郎
松本清張
源氏鶏太
今日出海
五木寛之
村上元三
川口松太郎
水上勉
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選考委員
五木寛之男46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
問われるのは…… 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
0  
有明夏夫
男42歳
0  
阿刀田高
男44歳
0  
古川薫
男53歳
0  
安達征一郎
男52歳
0  
小林信彦
男46歳
10 「私は〈虚栄の市〉以来の氏の熱心なファンであるので、今回の〈みずすましの街〉には、大いに不満であった。氏の純文学的作品群というか、ややうしろ向きの伝統的小説を、私は買わない。パロディーやナンセンスやスラップスティックものの大天才として尊敬しているのだ。」
虫明亜呂無
男55歳
12 「興味を持った。この短篇集の中では、候補になった作品よりも、巻末に収録されている〈ペケレットの夏〉のほうが、私は好きだ。虫明さんは若い作家ではないが、小説には新しいところがある。単なるモダニズムの作風と誤解されかねないところがあって、その辺がむずかしいのかもしれない。」
小関智弘
男45歳
0  
  「それぞれに一家をなす作風の持主揃いであることに感心した。」「自然、小説づくり(原文傍点)の腕以外の部分での作者の目が問われることになってくる。或はまた、選者の好みの問題になってくるのも仕方がない。」
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他の選考委員
城山三郎
松本清張
源氏鶏太
今日出海
新田次郎
村上元三
川口松太郎
水上勉
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選考委員
村上元三男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
対照的な二作 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
7 「「一絃の琴」の努力も買いたいので、(引用者注:「大浪花諸人往来」と併せて)二作ということにした。」「こつこつと調べた資料で丹念に書く地味な仕事を続けて行くと思う。」
有明夏夫
男42歳
5 「「大浪花諸人往来」一本にしぼる気で委員会へ出た」「これからも、多彩な「面白い」小説を書いて行くだろう」
阿刀田高
男44歳
4 「好きな作品だが、さてこの才能がどこまで伸びるか、今後の作品を待ちたい。」
古川薫
男53歳
5 「殻にとじこもったような気がするが、キャリアもある人なのだから、いまの殻を打ち破ってほしい。」
安達征一郎
男52歳
7 「蝶の群が海面を飛ぶ描写など、きらりと光るうまさはあり、ていねいに書きこんであるが、一面もっと省略をしてもらいたかった。省略して、かえって生きる部分もある。」
小林信彦
男46歳
5 「うまい作品だが、小味で物足りない。前作の「唐獅子シリーズ」のとぼけた面白さを、忘れないでほしい。」
虫明亜呂無
男55歳
5 「きれいな文章だが、そこに脆さがある。筆力のある人だから、こんどは手ごたえのある作品を期待する。」
小関智弘
男45歳
2 「前作の「錆色の町」よりも落ちる。」
  「こんどは八篇とも、それぞれ個性を持った作品ばかりで、読みでがあり、楽しかった。」
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他の選考委員
城山三郎
松本清張
源氏鶏太
今日出海
新田次郎
五木寛之
川口松太郎
水上勉
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選考委員
川口松太郎男79歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
古川薫を推す 総行数39 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
15 「初めから当選の判っているような作品だった。」「直木賞優等生の感がある。然し、第一部がずばぬけて面白く、二部三部となるとだんだん鈍くなり、類型的になり、つまらなくなる。(引用者中略)第一部だけ切りはなして独立させたいと今でも思う。」
有明夏夫
男42歳
8 「手頃な読物という気がする。」「器用な人ではあるし実力も十分だし、入賞に文句はないが、文学であるためにはやや不満である。」
阿刀田高
男44歳
0  
古川薫
男53歳
17 「推したが賛成者少数なのは残念だった。哀愁の深いラストもしみじみとして隙がなく私は大変に惚れたのだが、作品の評価というものは飽くまでも主観的で、同感者が少なくとも、自説を撤回する気にはなれない。」
安達征一郎
男52歳
0  
小林信彦
男46歳
0  
虫明亜呂無
男55歳
0  
小関智弘
男45歳
0  
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他の選考委員
城山三郎
松本清張
源氏鶏太
今日出海
新田次郎
五木寛之
村上元三
水上勉
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選考委員
水上勉男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
宮尾さんの力 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
宮尾登美子
女52歳
35 「いちばんきめこまかく、力のあるものと思えた。」「語りはこの人の吐く息であり、借りものでないことを証し、誰も真似できぬ芸境を確立しているのである。授賞のおそかったことを恨むものであるが、宮尾さんが、もう少しの文体の簡略化を完成された時、いくつもの名作が生れるだろうことを予言しておく。」
有明夏夫
男42歳
18 「達者すぎる文章で、おやと思った。(引用者中略)今回はぬきすぎたほど流暢である。」「松本委員の絶讃もあって家を出る時の考えがかわって、消極的ながら賛成側に廻った。」
阿刀田高
男44歳
0  
古川薫
男53歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
安達征一郎
男52歳
0  
小林信彦
男46歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
虫明亜呂無
男55歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
小関智弘
男45歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
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他の選考委員
城山三郎
松本清張
源氏鶏太
今日出海
新田次郎
五木寛之
村上元三
川口松太郎
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受賞者・作品
宮尾登美子女52歳×各選考委員 
『一絃の琴』
長篇 700
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
18 「たくましい筆力で、ひきこまれた。」「琴を聞きたい、いや琴の音が聞えてくるような、感動があった。」「重く読みづらいという声もあったが、わたしには、薪の山が消えかけてはまた華やいだ炎を上げるという感じが続き、一気に読むことができた。」
松本清張
男69歳
35 「本命と見られていたようだが、選考委員会ではただちにこれに授賞が決定したのではない。多かったのは、読むのに骨が折れる、という声だった。」「しかし、一方から考えると、氏の文章は説話体であり、説話体なら饒舌が一つの特徴である。」「一絃の琴(今委員によれば、じっさいはそれほどでもない楽器だそうだが)を描写の上で芸術品にした文学的手腕を評価したい。」
源氏鶏太
男66歳
14 「いわゆる芸道物語を超えていた。文章が女の感傷を色濃く出しているがこの作家の場合、寧ろ長所になっていた。」「今のままの描写はすでにこの作家の身についたものであろうし、それを押し通した方がいいのでなかろうか。」
今日出海
男75歳
22 「ほとんど全委員一致で授賞に賛成したのは当然の帰結ではあろう。ただ(引用者中略)長くて、重いので、読むのに骨が折れるものであった。」「作者の書きたい興味と読者の読みたい興味との合致というか、程合いが出来たら、自分はもっといい読者になるだろうとも思った。」
新田次郎
男66歳
0  
五木寛之
男46歳
0  
村上元三
男68歳
7 「「一絃の琴」の努力も買いたいので、(引用者注:「大浪花諸人往来」と併せて)二作ということにした。」「こつこつと調べた資料で丹念に書く地味な仕事を続けて行くと思う。」
川口松太郎
男79歳
15 「初めから当選の判っているような作品だった。」「直木賞優等生の感がある。然し、第一部がずばぬけて面白く、二部三部となるとだんだん鈍くなり、類型的になり、つまらなくなる。(引用者中略)第一部だけ切りはなして独立させたいと今でも思う。」
水上勉
男59歳
35 「いちばんきめこまかく、力のあるものと思えた。」「語りはこの人の吐く息であり、借りものでないことを証し、誰も真似できぬ芸境を確立しているのである。授賞のおそかったことを恨むものであるが、宮尾さんが、もう少しの文体の簡略化を完成された時、いくつもの名作が生れるだろうことを予言しておく。」
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他の候補作
有明夏夫
『大浪花諸人往来』
阿刀田高
『冷蔵庫より愛をこめて』
古川薫
「野山獄相聞抄」
安達征一郎
『日出づる海 日沈む海』
小林信彦
「みずすましの街」
虫明亜呂無
「シャガールの馬」他
小関智弘
「地の息」
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受賞者・作品
有明夏夫男42歳×各選考委員 
『大浪花諸人往来』
連作6篇 594
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
10 「時代・舞台・人物の設定が秀抜で、いわゆる大道具・小道具の類もよく書きこまれている。」「わたしには、ドラマが盛り上りかけたところで、ふいに終る感じがし、結びの新聞記事とのかね合いが、うまく成功しているとは思えなかった。」
松本清張
男69歳
11 「まことに才筆である。文明開化の大阪ものだが、大佛次郎氏の開化の「横浜もの」と東西の対応になり得るかもしれない。」「探偵ものに見えるかもしれないが、真意はそうでなく、明治初期の市井風俗を描いたもの。この領域に進まれることを作者に望む。」
源氏鶏太
男66歳
12 「まさに作者が自分の鉱脈をさぐりあてた感じである。こせこせしないでおおらかに描いていて、およそ「文学」とは無縁の作品を書いているようで、それなりに神経がゆきとどいていた。」「五木氏の、この作家は直木賞をあきらめたのでないか、そして、こういう作品が書けた、という意味の発言は印象に残った。」
今日出海
男75歳
9 「軽くて読み易いが、それはあの中に登場する人々が、そしてその周囲が庶民的で、環境に溶けこんでいるせいだ。決して手軽な作品ではない。」
新田次郎
男66歳
0  
五木寛之
男46歳
0  
村上元三
男68歳
5 「「大浪花諸人往来」一本にしぼる気で委員会へ出た」「これからも、多彩な「面白い」小説を書いて行くだろう」
川口松太郎
男79歳
8 「手頃な読物という気がする。」「器用な人ではあるし実力も十分だし、入賞に文句はないが、文学であるためにはやや不満である。」
水上勉
男59歳
18 「達者すぎる文章で、おやと思った。(引用者中略)今回はぬきすぎたほど流暢である。」「松本委員の絶讃もあって家を出る時の考えがかわって、消極的ながら賛成側に廻った。」
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他の候補作
宮尾登美子
『一絃の琴』
阿刀田高
『冷蔵庫より愛をこめて』
古川薫
「野山獄相聞抄」
安達征一郎
『日出づる海 日沈む海』
小林信彦
「みずすましの街」
虫明亜呂無
「シャガールの馬」他
小関智弘
「地の息」
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候補者・作品
阿刀田高男44歳×各選考委員 
『冷蔵庫より愛をこめて』
短篇集18篇 639
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
15 「わたしには、いちばんおもしろく、現代を感じさせ、考えさせてくれた。」「北極からの風が吹き抜けて行くような新鮮さと戦慄がある。同工異曲の軽い思いつきのように見られ、損をしたが、その軽さ新しさは、相当に質のよいもので、こうした領域の仕事はもっと評価されていいと思う。」
松本清張
男69歳
0  
源氏鶏太
男66歳
6 「過去の直木賞候補になったことのない新しい分野である。ぞっとする恐怖感があって、うまい作家だと思った。」
今日出海
男75歳
0  
新田次郎
男66歳
8 「一篇一篇が斬新な素材を使ったしゃれた小説で、なによりも増して空想力が抜群だった。」
五木寛之
男46歳
0  
村上元三
男68歳
4 「好きな作品だが、さてこの才能がどこまで伸びるか、今後の作品を待ちたい。」
川口松太郎
男79歳
0  
水上勉
男59歳
0  
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他の候補作
宮尾登美子
『一絃の琴』
有明夏夫
『大浪花諸人往来』
古川薫
「野山獄相聞抄」
安達征一郎
『日出づる海 日沈む海』
小林信彦
「みずすましの街」
虫明亜呂無
「シャガールの馬」他
小関智弘
「地の息」
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候補者・作品
古川薫男53歳×各選考委員 
「野山獄相聞抄」
短篇 85
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
7 「過不足なく描かれた好短篇だが、その過不足なくというところが、きれいごとのように見られ、物足りなさを与えた。どこまで歴史につくか、歴史から離れるか、難しい問題である。」
松本清張
男69歳
6 「氏のこれまでの作品の中では秀作だった。しかし、獄中の吉田松陰の狂熱的な面を伝えてないのは、人物立体像の一方を欠落させている。」
源氏鶏太
男66歳
9 「多くの票を集めたのだが、松陰の描き方に納得がいかないとの説に敗れた。」「私は、今でもこの作家は、「十三人の修羅」で授賞すべきであったと心が残っている。」
今日出海
男75歳
0  
新田次郎
男66歳
0  
五木寛之
男46歳
0  
村上元三
男68歳
5 「殻にとじこもったような気がするが、キャリアもある人なのだから、いまの殻を打ち破ってほしい。」
川口松太郎
男79歳
17 「推したが賛成者少数なのは残念だった。哀愁の深いラストもしみじみとして隙がなく私は大変に惚れたのだが、作品の評価というものは飽くまでも主観的で、同感者が少なくとも、自説を撤回する気にはなれない。」
水上勉
男59歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
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他の候補作
宮尾登美子
『一絃の琴』
有明夏夫
『大浪花諸人往来』
阿刀田高
『冷蔵庫より愛をこめて』
安達征一郎
『日出づる海 日沈む海』
小林信彦
「みずすましの街」
虫明亜呂無
「シャガールの馬」他
小関智弘
「地の息」
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候補者・作品
安達征一郎男52歳×各選考委員 
『日出づる海 日沈む海』
長篇 409
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
6 「汐の匂い立つような感じもあるが、やや古風なのと、話の先が見えてしまうようなところが、気になった。」
松本清張
男69歳
0  
源氏鶏太
男66歳
8 「今でも惜しかったと思っている。各章が感動的で、男っぽく、しかも、海を見事に描いていた。ただ、前回授賞の「深重の海」も海がテーマになっていたので、その点で多少損をしていたようだ。」
今日出海
男75歳
0  
新田次郎
男66歳
11 「彼の前作「怨の儀式」「種族の歌」そして今回の作品は、消えて行こうとしている古きものへの郷愁を沖縄の糸満漁師に求めたものであり、海の描写のたくましさに感動させられた。」
五木寛之
男46歳
0  
村上元三
男68歳
7 「蝶の群が海面を飛ぶ描写など、きらりと光るうまさはあり、ていねいに書きこんであるが、一面もっと省略をしてもらいたかった。省略して、かえって生きる部分もある。」
川口松太郎
男79歳
0  
水上勉
男59歳
0  
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他の候補作
宮尾登美子
『一絃の琴』
有明夏夫
『大浪花諸人往来』
阿刀田高
『冷蔵庫より愛をこめて』
古川薫
「野山獄相聞抄」
小林信彦
「みずすましの街」
虫明亜呂無
「シャガールの馬」他
小関智弘
「地の息」
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候補者・作品
小林信彦男46歳×各選考委員 
「みずすましの街」
短篇 80
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
4 「この作者の前向きな小説づくりの味が存分に発揮されたという形のものでなく、」
松本清張
男69歳
0  
源氏鶏太
男66歳
0  
今日出海
男75歳
0  
新田次郎
男66歳
0  
五木寛之
男46歳
10 「私は〈虚栄の市〉以来の氏の熱心なファンであるので、今回の〈みずすましの街〉には、大いに不満であった。氏の純文学的作品群というか、ややうしろ向きの伝統的小説を、私は買わない。パロディーやナンセンスやスラップスティックものの大天才として尊敬しているのだ。」
村上元三
男68歳
5 「うまい作品だが、小味で物足りない。前作の「唐獅子シリーズ」のとぼけた面白さを、忘れないでほしい。」
川口松太郎
男79歳
0  
水上勉
男59歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
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他の候補作
宮尾登美子
『一絃の琴』
有明夏夫
『大浪花諸人往来』
阿刀田高
『冷蔵庫より愛をこめて』
古川薫
「野山獄相聞抄」
安達征一郎
『日出づる海 日沈む海』
虫明亜呂無
「シャガールの馬」他
小関智弘
「地の息」
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候補者・作品
虫明亜呂無男55歳×各選考委員 
「シャガールの馬」他
短篇 48
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
5 「新しい題材に挑んだ意欲的な小品群で、仕上りもわるくないのだが、やや説明に過ぎ、うならせるものが欲しいと思った。」
松本清張
男69歳
5 「描写的にすぐれている部分はあるが、従来のパターンを超えていないのが残念である。」
源氏鶏太
男66歳
0  
今日出海
男75歳
0  
新田次郎
男66歳
0  
五木寛之
男46歳
12 「興味を持った。この短篇集の中では、候補になった作品よりも、巻末に収録されている〈ペケレットの夏〉のほうが、私は好きだ。虫明さんは若い作家ではないが、小説には新しいところがある。単なるモダニズムの作風と誤解されかねないところがあって、その辺がむずかしいのかもしれない。」
村上元三
男68歳
5 「きれいな文章だが、そこに脆さがある。筆力のある人だから、こんどは手ごたえのある作品を期待する。」
川口松太郎
男79歳
0  
水上勉
男59歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
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他の候補作
宮尾登美子
『一絃の琴』
有明夏夫
『大浪花諸人往来』
阿刀田高
『冷蔵庫より愛をこめて』
古川薫
「野山獄相聞抄」
安達征一郎
『日出づる海 日沈む海』
小林信彦
「みずすましの街」
小関智弘
「地の息」
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候補者・作品
小関智弘男45歳×各選考委員 
「地の息」
短篇 101
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
城山三郎
男51歳
4 「登場人物が多すぎ、話が少し拡散して、いまひとつ、きまるものがなかった。」
松本清張
男69歳
0  
源氏鶏太
男66歳
0  
今日出海
男75歳
0  
新田次郎
男66歳
19 「無駄な表現がなく、次々と出て来る脇役的人物の声色まではっきりと聞き取れるように書かれていた。」「主人公の魚屋夫婦の個性の書き分けは特に見事だった。この人の前作「錆色の町」も力作だったが、それよりも一段と出来栄えがいいと思った。」
五木寛之
男46歳
0  
村上元三
男68歳
2 「前作の「錆色の町」よりも落ちる。」
川口松太郎
男79歳
0  
水上勉
男59歳
4 「個性あふれる世界ながら、もう一つの力が不足していた。」
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他の候補作
宮尾登美子
『一絃の琴』
有明夏夫
『大浪花諸人往来』
阿刀田高
『冷蔵庫より愛をこめて』
古川薫
「野山獄相聞抄」
安達征一郎
『日出づる海 日沈む海』
小林信彦
「みずすましの街」
虫明亜呂無
「シャガールの馬」他
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