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第89回
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昭和58年/1983年上半期
(昭和58年/1983年7月14日決定発表/『オール讀物』昭和58年/1983年10月号選評掲載)
選考委員  山口瞳
男56歳
池波正太郎
男60歳
井上ひさし
男48歳
水上勉
男64歳
源氏鶏太
男71歳
村上元三
男73歳
五木寛之
男50歳
城山三郎
男55歳
選評総行数  58 45 58 63 50 51 53 39
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
胡桃沢耕史 『黒パン俘虜記』
507
男58歳
15 13 21 41 14 10 0 15
連城三紀彦 「紅き唇」
60
男35歳
19 6 20 7 6 3 15 0
高橋治 「地雷」
115
男54歳
15 0 3 0 5 7 0 0
杉本章子 『写楽まぼろし』
608
女30歳
0 0 3 0 4 6 0 0
山口洋子 「貢ぐ女」
97
女46歳
16 4 11 8 6 4 6 0
北方謙三 『檻』
661
男35歳
18 11 20 0 4 12 15 0
塩田丸男 「臆病者の空」等
211
男58歳
4 0 3 0 5 3 12 0
森瑤子 『風物語』
379
女42歳
4 15 3 12 6 6 0 0
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和58年/1983年10月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
山口瞳男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
余慶あり 総行数58 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
15 「ポルノのシミショウ(清水正二郎)から冒険小説の胡桃沢耕史への転身は容易なことではなかったはずだ。この痛快活劇の手法でもって「俘虜記」を書いたところに新味が生じた。」「とにかく面白い。爽快感がある。これは直木賞に求められていた一分野であることを疑わない。」
連城三紀彦
男35歳
19 「謎解き小説だが、説明過多。」「ちょっと叮嚀すぎた。また、この作者は、この方向で固まってもらいたくないという思いもあった。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
高橋治
男54歳
15 「地雷を踏んでしまうところの緊迫感は相当なものだが、その前後の状況がわかりにくい。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
杉本章子
女30歳
0  
山口洋子
女46歳
16 「なんと言っても元手が掛っている。ジゴロ小説という分野があるとすれば、これは傑作だと言っていい。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
北方謙三
男35歳
18 「筆力に圧倒された。二、三行で、パパッとその場の情景を的確に読者に提供する手腕はナミのものではない。候補作は筋を簡略にすべきだった。そうすれば描写力が活きてくる。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
塩田丸男
男58歳
4 「一種の習作と思って読んだ。塩田さんの才能・資質は、こんなところにとどまるものではない。」
森瑤子
女42歳
4 「森瑤子さんの小説の女主人公は、大人の女、自立した女が強調される割には行動が子供じみていると思った。」
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他の選考委員
池波正太郎
井上ひさし
水上勉
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
城山三郎
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選考委員
池波正太郎男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
森瑤子の進境 総行数45 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
13 「私はこの作を買っていない。」「この人には自分の作品に対する、もっとも肝心なものが欠けている。小説としての〔真実〕がないのである。ゆえにフィクション、ノン・フィクションにかかわらず〔こしらえもの〕になってしまうのだろう。」
連城三紀彦
男35歳
6 「おもしろく読めた。」「前途洋々といってよいだろう。」「この人ならではの力作を候補にしてほしい。」
高橋治
男54歳
0  
杉本章子
女30歳
0  
山口洋子
女46歳
4 「おもしろく読めた。」「前途洋々といってよいだろう。」
北方謙三
男35歳
11 「好感のもてるハード・ボイルドだが、この人の文体は、ダイナミックではあっても、状況と多くの登場人物をさばくのに苦渋を感じせしめる。読みすすんで、わからなくなり、また前のほうを読み返すことが何度かあった。」
塩田丸男
男58歳
0  
森瑤子
女42歳
15 「第一に推したが、最後の票決によって落ちたのは残念だった。」「前回の候補作における構成の失敗から脱している。そうなると、密度の濃い文章が生彩をはなつ。男から見て、この女主人公はイヤな女だけれども、つまり、それだけ深く女の性が描けているわけで、他の男たちのエゴも、うまくとらえられていた。」
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他の選考委員
山口瞳
井上ひさし
水上勉
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
城山三郎
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選考委員
井上ひさし男48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
粒ぞろい 総行数58 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
21 「主人公がいくら単純でも無邪気でもかまわないが、それを見つめている作者に、主人公を戦場へ引きずり出した国家や、主人公にこれほどの苦しみを強いる戦争に対する勘考がほとんどない。このことにかすかに不審の念をいだいた。ただしこの気持は、作者の物語づくりにかける執念に圧倒されて、ときおりどこかへ消え去ってしまうのであるが。」
連城三紀彦
男35歳
20 「もっとも気に入った」「作者の作風の変化は、わたしには好ましくおもわれた。」「この作品では、トリックは低みから、武骨で(原文傍点)善良な老女の人柄から発せられている。このトリックの仕掛け方がじつにトリッキイであって、作品は厚みをもった。」
高橋治
男54歳
3 「スリリングな設定」「どの作品にも魅せられた。」
杉本章子
女30歳
3 「構えの大きさ」「どの作品にも魅せられた。」
山口洋子
女46歳
11 「むやみにうまい。女主人公をみつめる作者の目は、鋭さとあたたかさの両極を持ち合せており、うまさはそこから発しているようである。」
北方謙三
男35歳
20 「もっとも気に入った」「平明で速度感のある文体のせいで、彼(引用者注:主人公)の感慨には読者を吸い寄せる力がある。ただ結末が悲劇で終るのは「切ない」気もするが、とにかくこの作者の才能には敬意をもつ。」
塩田丸男
男58歳
3 「安定した語り口」「どの作品にも魅せられた。」
森瑤子
女42歳
3 「精巧でみずみずしい文体」「どの作品にも魅せられた。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
水上勉
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
城山三郎
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選考委員
水上勉男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数63 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
41 「他委員の票数も多く、満足したが、多少気にかかった文章の粗さが云々された。」「頁を追うほど興味がつのった。凡手でない。荒語りといっていい。正しくこれは兵卒が地べたから見た俘虜記である。」「ああ、戦争はいやだな、とつくづく思わせるのである。そういう感想は、過去の胡桃沢さんの候補作からは得られなかった。」「長い精進の日日も思われて、授賞に賛成する側にまわった。」
連城三紀彦
男35歳
7 「むかしのように、ぬきさしならぬつまり一枚看板となる作品をささげて登場する候補作家が少ない。その点からいえば、連城三紀彦さんの世界かとも思うが、どこか授賞に一歩の弱さがある。」
高橋治
男54歳
0  
杉本章子
女30歳
0  
山口洋子
女46歳
8 「なかなかに女の不思議さがさしだされていて魅かれた。相手の男はろくでもない様子だが、羨望さえおぼえたのは、女がよく描けたからだろう。こんな短篇をいくつも読みたいと思った。」
北方謙三
男35歳
0  
塩田丸男
男58歳
0  
森瑤子
女42歳
12 「達者である。子づれの勝気な女が、亭主と、べつの男とのあいだを揺れてくらす心象とは、こういうものかと納得させられたが、芥川賞の方にまわっていい素質である。房事の前後をじつにうまく描く人だ。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
井上ひさし
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
城山三郎
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選考委員
源氏鶏太男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
胡桃沢氏おめでとう 総行数50 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
14 「俘虜としての体験を克明に描いていて感動した。」「感傷をまじえず、時にユーモラスに、過不足なく書きつくしている。過去の実情からしても当然の受賞であろう。」「苦節四十年。心からおめでとうといいたい。」
連城三紀彦
男35歳
6 「最後の方がちょっと謎解きのようになっているところが気になったが、しかし、これだけの材料を巧みな構成で好短篇に仕上げているところに感心した。」
高橋治
男54歳
5 「映画のシナリオを小説にしたような作品である。作者が狙ったであろうスリルもサスペンスもこちらの胸に迫ってこなかった。」
杉本章子
女30歳
4 「写楽が重三郎の父親であったという設定に説得力が欠けていた。」
山口洋子
女46歳
6 「うまさに舌を巻いた。これは私なんかの想像もつかない男女の世界である。私は、こういう男女に好感を持つことが出来なかった。」
北方謙三
男35歳
4 「文句なしに面白かった。しかし、筋が複雑に過ぎて、感銘の度を浅くしているように思われた。」
塩田丸男
男58歳
5 「終戦直後のサラリーマンの世界を奥深く描いている。今様の小説ではないかも知れないが、決して古くない。」
森瑤子
女42歳
6 「大人たちの情事を描いてうまい。が、この小説の場合、題で損をしている。題が内容を活かしていない。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
井上ひさし
水上勉
村上元三
五木寛之
城山三郎
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選考委員
村上元三男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
揉めはしたものの 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
10 「相変らず文章が荒っぽいし、欠点がいくつも目立った。だがこの作品は、作者の胸の中にあるものを残らず吐き出したのだと思うし、こんどを逃しては受賞の機会はないだろう。これからの作品の新しい展開を期待し、従来の実績を加えて、受賞作に推した。」
連城三紀彦
男35歳
3 「わたしは高く評価できなかった。」
高橋治
男54歳
7 「作りものの面白さがあったし、犬の扱いかたなどもうまいが、戦争のむなしさを伝える前に、この作品は文章のうまさに自分で酔ってしまって、映像的なむなしさだけで終っている。」
杉本章子
女30歳
6 「若い女流作家が江戸の市井を扱った作品に取り組んだ努力は買いたい。だが江戸の風物や習慣を書くには、もっと雑学をやらなくてはいけない。」
山口洋子
女46歳
4 「ずいぶんうまくなったし、材料も面白い。だが小説の本道を外れて、材料に凭りかかりすぎている。」
北方謙三
男35歳
12 「文章はうまいし、面白いという点では候補作品のうちで最も高い点をつけた。」「胡桃沢氏のと併せて受賞にしてもいいと思ったが、わずかな点差で落ちた。しかし、やがては受賞する人だろう。」
塩田丸男
男58歳
3 「わたしは高く評価できなかった。」
森瑤子
女42歳
6 「大人の小説で、うまさは認めるが、ここに登場する人物が子供にいたるまで、揃ってエゴイストだというのは、どうも読後感がよくなかった。」
  「今回は選考が揉めて、張合いがあった。すらりと決まるより、毎回こうであってほしい。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
井上ひさし
水上勉
源氏鶏太
五木寛之
城山三郎
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選考委員
五木寛之男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
北方謙三氏を推す 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
連城三紀彦
男35歳
15 「おや、普通の小説になったな、という気がした。」「今回の作品には部分的に感心しながらも、ごく当たり前の大人となった小学校時代の早熟な同級生に再会したような印象をうけた。もっと氏の持ち味というか、癖のあるところを発揮した作品を読みたいと思うのは、こちらの勝手だろうか。」
高橋治
男54歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
杉本章子
女30歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
山口洋子
女46歳
6 「もう一歩で凄い小説になる気配があった。最後の一行に、「布施行」ということばを感じさせるものがあれば、私は躊躇なく脱帽しただろう。」
北方謙三
男35歳
15 「私は受賞者を北方謙三氏にしぼって推し続けたのだが、大多数の選考委員の賛同をうるにはいたらなかった。」「私はこの人の作家としての資質を高く評価している。」「たとえば野球の選手について「球筋が良い」という表現があるが、北方氏には作家としての球筋の良さがある。」
塩田丸男
男58歳
12 「私も同じ時代を生きてきた人間として惹かれるものがある。」「作者のふだんの軽やかなエッセイに隠された重いものを見たような気がした。」「ただ、「語ラザレバ憂ヒナキニニタリ」という生きかたも、作家としてはもう一方にあるのかもしれない。」
森瑤子
女42歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
井上ひさし
水上勉
源氏鶏太
村上元三
城山三郎
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選考委員
城山三郎男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数39 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史
男58歳
15 「胡桃沢氏の作品の持味は、天馬空を行くが如き奔放さに在った。」「ただ、今回の作品は自伝風のもの。(引用者中略)氏のいつもの持味がうすれ、一応の出来にとどまっている。」「十分筆力もある人だけに、この作で受賞されることは、氏の本懐ではないのではないか。」
連城三紀彦
男35歳
0  
高橋治
男54歳
0  
杉本章子
女30歳
0  
山口洋子
女46歳
0  
北方謙三
男35歳
0  
塩田丸男
男58歳
0  
森瑤子
女42歳
0  
  「わたしは今回限りで選考委員を退きたいと思う。」「直木賞は年一回でよいという声が、委員の中からも出ている。年に二度だと、候補作の点数をそろえるために無理に候補にされる作品が出てくる。(引用者中略)また候補回数の多いひとをどう遇するか、という問題が起る。(いずれも今回のことではない。(引用者中略))」「ただ、わたしがこれ以上続ける自信と気力を失くした、というだけのことである。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
井上ひさし
水上勉
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
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受賞者・作品
胡桃沢耕史男58歳×各選考委員 
『黒パン俘虜記』
長篇 507
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
15 「ポルノのシミショウ(清水正二郎)から冒険小説の胡桃沢耕史への転身は容易なことではなかったはずだ。この痛快活劇の手法でもって「俘虜記」を書いたところに新味が生じた。」「とにかく面白い。爽快感がある。これは直木賞に求められていた一分野であることを疑わない。」
池波正太郎
男60歳
13 「私はこの作を買っていない。」「この人には自分の作品に対する、もっとも肝心なものが欠けている。小説としての〔真実〕がないのである。ゆえにフィクション、ノン・フィクションにかかわらず〔こしらえもの〕になってしまうのだろう。」
井上ひさし
男48歳
21 「主人公がいくら単純でも無邪気でもかまわないが、それを見つめている作者に、主人公を戦場へ引きずり出した国家や、主人公にこれほどの苦しみを強いる戦争に対する勘考がほとんどない。このことにかすかに不審の念をいだいた。ただしこの気持は、作者の物語づくりにかける執念に圧倒されて、ときおりどこかへ消え去ってしまうのであるが。」
水上勉
男64歳
41 「他委員の票数も多く、満足したが、多少気にかかった文章の粗さが云々された。」「頁を追うほど興味がつのった。凡手でない。荒語りといっていい。正しくこれは兵卒が地べたから見た俘虜記である。」「ああ、戦争はいやだな、とつくづく思わせるのである。そういう感想は、過去の胡桃沢さんの候補作からは得られなかった。」「長い精進の日日も思われて、授賞に賛成する側にまわった。」
源氏鶏太
男71歳
14 「俘虜としての体験を克明に描いていて感動した。」「感傷をまじえず、時にユーモラスに、過不足なく書きつくしている。過去の実情からしても当然の受賞であろう。」「苦節四十年。心からおめでとうといいたい。」
村上元三
男73歳
10 「相変らず文章が荒っぽいし、欠点がいくつも目立った。だがこの作品は、作者の胸の中にあるものを残らず吐き出したのだと思うし、こんどを逃しては受賞の機会はないだろう。これからの作品の新しい展開を期待し、従来の実績を加えて、受賞作に推した。」
五木寛之
男50歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
城山三郎
男55歳
15 「胡桃沢氏の作品の持味は、天馬空を行くが如き奔放さに在った。」「ただ、今回の作品は自伝風のもの。(引用者中略)氏のいつもの持味がうすれ、一応の出来にとどまっている。」「十分筆力もある人だけに、この作で受賞されることは、氏の本懐ではないのではないか。」
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他の候補作
連城三紀彦
「紅き唇」
高橋治
「地雷」
杉本章子
『写楽まぼろし』
山口洋子
「貢ぐ女」
北方謙三
『檻』
塩田丸男
「臆病者の空」等
森瑤子
『風物語』
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候補者・作品
連城三紀彦男35歳×各選考委員 
「紅き唇」
短篇 60
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
19 「謎解き小説だが、説明過多。」「ちょっと叮嚀すぎた。また、この作者は、この方向で固まってもらいたくないという思いもあった。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
池波正太郎
男60歳
6 「おもしろく読めた。」「前途洋々といってよいだろう。」「この人ならではの力作を候補にしてほしい。」
井上ひさし
男48歳
20 「もっとも気に入った」「作者の作風の変化は、わたしには好ましくおもわれた。」「この作品では、トリックは低みから、武骨で(原文傍点)善良な老女の人柄から発せられている。このトリックの仕掛け方がじつにトリッキイであって、作品は厚みをもった。」
水上勉
男64歳
7 「むかしのように、ぬきさしならぬつまり一枚看板となる作品をささげて登場する候補作家が少ない。その点からいえば、連城三紀彦さんの世界かとも思うが、どこか授賞に一歩の弱さがある。」
源氏鶏太
男71歳
6 「最後の方がちょっと謎解きのようになっているところが気になったが、しかし、これだけの材料を巧みな構成で好短篇に仕上げているところに感心した。」
村上元三
男73歳
3 「わたしは高く評価できなかった。」
五木寛之
男50歳
15 「おや、普通の小説になったな、という気がした。」「今回の作品には部分的に感心しながらも、ごく当たり前の大人となった小学校時代の早熟な同級生に再会したような印象をうけた。もっと氏の持ち味というか、癖のあるところを発揮した作品を読みたいと思うのは、こちらの勝手だろうか。」
城山三郎
男55歳
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他の候補作
胡桃沢耕史
『黒パン俘虜記』
高橋治
「地雷」
杉本章子
『写楽まぼろし』
山口洋子
「貢ぐ女」
北方謙三
『檻』
塩田丸男
「臆病者の空」等
森瑤子
『風物語』
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候補者・作品
高橋治男54歳×各選考委員 
「地雷」
短篇 115
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
15 「地雷を踏んでしまうところの緊迫感は相当なものだが、その前後の状況がわかりにくい。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
池波正太郎
男60歳
0  
井上ひさし
男48歳
3 「スリリングな設定」「どの作品にも魅せられた。」
水上勉
男64歳
0  
源氏鶏太
男71歳
5 「映画のシナリオを小説にしたような作品である。作者が狙ったであろうスリルもサスペンスもこちらの胸に迫ってこなかった。」
村上元三
男73歳
7 「作りものの面白さがあったし、犬の扱いかたなどもうまいが、戦争のむなしさを伝える前に、この作品は文章のうまさに自分で酔ってしまって、映像的なむなしさだけで終っている。」
五木寛之
男50歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
城山三郎
男55歳
0  
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他の候補作
胡桃沢耕史
『黒パン俘虜記』
連城三紀彦
「紅き唇」
杉本章子
『写楽まぼろし』
山口洋子
「貢ぐ女」
北方謙三
『檻』
塩田丸男
「臆病者の空」等
森瑤子
『風物語』
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候補者・作品
杉本章子女30歳×各選考委員 
『写楽まぼろし』
長篇 608
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
0  
池波正太郎
男60歳
0  
井上ひさし
男48歳
3 「構えの大きさ」「どの作品にも魅せられた。」
水上勉
男64歳
0  
源氏鶏太
男71歳
4 「写楽が重三郎の父親であったという設定に説得力が欠けていた。」
村上元三
男73歳
6 「若い女流作家が江戸の市井を扱った作品に取り組んだ努力は買いたい。だが江戸の風物や習慣を書くには、もっと雑学をやらなくてはいけない。」
五木寛之
男50歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
城山三郎
男55歳
0  
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他の候補作
胡桃沢耕史
『黒パン俘虜記』
連城三紀彦
「紅き唇」
高橋治
「地雷」
山口洋子
「貢ぐ女」
北方謙三
『檻』
塩田丸男
「臆病者の空」等
森瑤子
『風物語』
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候補者・作品
山口洋子女46歳×各選考委員 
「貢ぐ女」
短篇 97
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
16 「なんと言っても元手が掛っている。ジゴロ小説という分野があるとすれば、これは傑作だと言っていい。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
池波正太郎
男60歳
4 「おもしろく読めた。」「前途洋々といってよいだろう。」
井上ひさし
男48歳
11 「むやみにうまい。女主人公をみつめる作者の目は、鋭さとあたたかさの両極を持ち合せており、うまさはそこから発しているようである。」
水上勉
男64歳
8 「なかなかに女の不思議さがさしだされていて魅かれた。相手の男はろくでもない様子だが、羨望さえおぼえたのは、女がよく描けたからだろう。こんな短篇をいくつも読みたいと思った。」
源氏鶏太
男71歳
6 「うまさに舌を巻いた。これは私なんかの想像もつかない男女の世界である。私は、こういう男女に好感を持つことが出来なかった。」
村上元三
男73歳
4 「ずいぶんうまくなったし、材料も面白い。だが小説の本道を外れて、材料に凭りかかりすぎている。」
五木寛之
男50歳
6 「もう一歩で凄い小説になる気配があった。最後の一行に、「布施行」ということばを感じさせるものがあれば、私は躊躇なく脱帽しただろう。」
城山三郎
男55歳
0  
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他の候補作
胡桃沢耕史
『黒パン俘虜記』
連城三紀彦
「紅き唇」
高橋治
「地雷」
杉本章子
『写楽まぼろし』
北方謙三
『檻』
塩田丸男
「臆病者の空」等
森瑤子
『風物語』
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候補者・作品
北方謙三男35歳×各選考委員 
『檻』
長篇 661
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
18 「筆力に圧倒された。二、三行で、パパッとその場の情景を的確に読者に提供する手腕はナミのものではない。候補作は筋を簡略にすべきだった。そうすれば描写力が活きてくる。」「以上四氏(引用者注:北方謙三、山口洋子、連城三紀彦、高橋治)、なにか、近々満期になる定期預金を四口座持っている感じで、リッチな気分になった。」
池波正太郎
男60歳
11 「好感のもてるハード・ボイルドだが、この人の文体は、ダイナミックではあっても、状況と多くの登場人物をさばくのに苦渋を感じせしめる。読みすすんで、わからなくなり、また前のほうを読み返すことが何度かあった。」
井上ひさし
男48歳
20 「もっとも気に入った」「平明で速度感のある文体のせいで、彼(引用者注:主人公)の感慨には読者を吸い寄せる力がある。ただ結末が悲劇で終るのは「切ない」気もするが、とにかくこの作者の才能には敬意をもつ。」
水上勉
男64歳
0  
源氏鶏太
男71歳
4 「文句なしに面白かった。しかし、筋が複雑に過ぎて、感銘の度を浅くしているように思われた。」
村上元三
男73歳
12 「文章はうまいし、面白いという点では候補作品のうちで最も高い点をつけた。」「胡桃沢氏のと併せて受賞にしてもいいと思ったが、わずかな点差で落ちた。しかし、やがては受賞する人だろう。」
五木寛之
男50歳
15 「私は受賞者を北方謙三氏にしぼって推し続けたのだが、大多数の選考委員の賛同をうるにはいたらなかった。」「私はこの人の作家としての資質を高く評価している。」「たとえば野球の選手について「球筋が良い」という表現があるが、北方氏には作家としての球筋の良さがある。」
城山三郎
男55歳
0  
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他の候補作
胡桃沢耕史
『黒パン俘虜記』
連城三紀彦
「紅き唇」
高橋治
「地雷」
杉本章子
『写楽まぼろし』
山口洋子
「貢ぐ女」
塩田丸男
「臆病者の空」等
森瑤子
『風物語』
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候補者・作品
塩田丸男男58歳×各選考委員 
「臆病者の空」等
短篇2篇 211
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
4 「一種の習作と思って読んだ。塩田さんの才能・資質は、こんなところにとどまるものではない。」
池波正太郎
男60歳
0  
井上ひさし
男48歳
3 「安定した語り口」「どの作品にも魅せられた。」
水上勉
男64歳
0  
源氏鶏太
男71歳
5 「終戦直後のサラリーマンの世界を奥深く描いている。今様の小説ではないかも知れないが、決して古くない。」
村上元三
男73歳
3 「わたしは高く評価できなかった。」
五木寛之
男50歳
12 「私も同じ時代を生きてきた人間として惹かれるものがある。」「作者のふだんの軽やかなエッセイに隠された重いものを見たような気がした。」「ただ、「語ラザレバ憂ヒナキニニタリ」という生きかたも、作家としてはもう一方にあるのかもしれない。」
城山三郎
男55歳
0  
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他の候補作
胡桃沢耕史
『黒パン俘虜記』
連城三紀彦
「紅き唇」
高橋治
「地雷」
杉本章子
『写楽まぼろし』
山口洋子
「貢ぐ女」
北方謙三
『檻』
森瑤子
『風物語』
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候補者・作品
森瑤子女42歳×各選考委員 
『風物語』
長篇 379
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男56歳
4 「森瑤子さんの小説の女主人公は、大人の女、自立した女が強調される割には行動が子供じみていると思った。」
池波正太郎
男60歳
15 「第一に推したが、最後の票決によって落ちたのは残念だった。」「前回の候補作における構成の失敗から脱している。そうなると、密度の濃い文章が生彩をはなつ。男から見て、この女主人公はイヤな女だけれども、つまり、それだけ深く女の性が描けているわけで、他の男たちのエゴも、うまくとらえられていた。」
井上ひさし
男48歳
3 「精巧でみずみずしい文体」「どの作品にも魅せられた。」
水上勉
男64歳
12 「達者である。子づれの勝気な女が、亭主と、べつの男とのあいだを揺れてくらす心象とは、こういうものかと納得させられたが、芥川賞の方にまわっていい素質である。房事の前後をじつにうまく描く人だ。」
源氏鶏太
男71歳
6 「大人たちの情事を描いてうまい。が、この小説の場合、題で損をしている。題が内容を活かしていない。」
村上元三
男73歳
6 「大人の小説で、うまさは認めるが、ここに登場する人物が子供にいたるまで、揃ってエゴイストだというのは、どうも読後感がよくなかった。」
五木寛之
男50歳
0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
城山三郎
男55歳
0  
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他の候補作
胡桃沢耕史
『黒パン俘虜記』
連城三紀彦
「紅き唇」
高橋治
「地雷」
杉本章子
『写楽まぼろし』
山口洋子
「貢ぐ女」
北方謙三
『檻』
塩田丸男
「臆病者の空」等
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