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第63回
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昭和45年/1970年上半期
(昭和45年/1970年7月18日決定発表/『オール讀物』昭和45年/1970年10月号選評掲載)
選考委員  川口松太郎
男70歳
石坂洋次郎
男70歳
海音寺潮五郎
男68歳
源氏鶏太
男58歳
柴田錬三郎
男53歳
村上元三
男60歳
今日出海
男66歳
水上勉
男51歳
松本清張
男60歳
司馬遼太郎
男46歳
大佛次郎
男72歳
選評総行数  52 57 78 54 35 54 47 55 52 61  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
結城昌治 「軍旗はためく下に」
367
男43歳
34 20 8 14 12 12 19 15 18 6    
渡辺淳一 「光と影」
135
男36歳
34 13 16 11 9 12 12 24 23 12    
林青梧 『南北朝の疑惑』
512
男40歳
0 0 18 7 0 5 0 13 6 15    
白石一郎 「孤島の騎士」
131
男38歳
0 0 23 5 0 10 0 0 0 11    
加藤薫 「遭難」
男36歳
0 8 4 8 0 0 0 0 6 5    
黒部亨 「十六夜」
93
男41歳
0 0 4 4 0 0 0 0 0 6    
福岡徹 『軍神』
563
男46歳
0 0 10 5 0 9 0 0 0 6    
                  欠席
書面回答
欠席
書面回答
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和45年/1970年10月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
川口松太郎男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二人の作家 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
34 「軍旗が神であった頃の兵たちが軍旗の下で虫けらのように死んで行ったいくつかの挿話は今更ながら戦争の痛ましさを覚えさせ、世界中の何処かでは今でもこの愚を繰り返しているのかと思い胸が痛かった。そんな実感を起させるまでに緊迫した実感に満ちて誇張しない文章が更に緊迫感を深めた。」
渡辺淳一
男36歳
34 「構成が巧みでうまく仕組まれた作品だ。」「二枚のカルテから始まる宿命の明暗を淡々と書き分ける描写力は非凡である。影にいる男が発狂して精神病院へ送られる肝心の最後が早口の説明に終ったのは残念だった。」
林青梧
男40歳
0  
白石一郎
男38歳
0  
加藤薫
男36歳
0  
黒部亨
男41歳
0  
福岡徹
男46歳
0  
  「作品の出来栄えからいっても文章の信頼度からいっても結城君の「軍旗はためく下に」と渡辺君の「光と影」とが群を抜いていた。」
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他の選考委員
石坂洋次郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
村上元三
今日出海
水上勉
松本清張
司馬遼太郎
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選考委員
石坂洋次郎男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
20 「一番ひかれた。」「日本は神国であるという背景を負って書かれたものではなく、無条件降伏後に書かれた作品だけに、「敵前逃亡」「司令官逃避」「上官殺害」などの題材がリアルに描かれて生彩がある。」
渡辺淳一
男36歳
13 「着実な筆致でよく描かれている。」
林青梧
男40歳
0  
白石一郎
男38歳
0  
加藤薫
男36歳
8 「私自身はほかに若者たち(女も一人混じっている)の登山を題材にした加藤薫氏の「遭難」が好きだった」
黒部亨
男41歳
0  
福岡徹
男46歳
0  
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他の選考委員
川口松太郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
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今日出海
水上勉
松本清張
司馬遼太郎
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選考委員
海音寺潮五郎男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
私の推す人 総行数78 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
8 「この狙いのものは戦後は一向にめずらしくない。しかし、こういう作品が必要であることは言うまでもない。」「授賞は遅すぎたといってよい。」
渡辺淳一
男36歳
16 「調べがよく行きとどいており、描写が的確であり、医学的面は作者の職業がら自信に満ちており、水際立って見事な作品になっている。これまで度々候補に上っている人だから、実力のほども信じてよい。」
林青梧
男40歳
18 「あらゆる点において未完成である。第一、散所というものがその学者の説そのままに抽象的で、生き生きとした具体化が行なわれていないから、少しも人を打たない。」「この作品は材料を集め、一応の構成をしてみたというまでのものである。」
白石一郎
男38歳
23 「この作品には大いに感心した。通事の立場から書いたのが、先ず巧みである。」「調子の高い文学といってよい。」「(引用者注:ぼくのように)高く買っている者もあるのだから、屈せず、さらに努力してほしい。」
加藤薫
男36歳
4 「いい気持で読了出来たが、(引用者中略)構成に必然性がない。」
黒部亨
男41歳
4 「いい気持で読了出来たが、(引用者中略)構成に必然性がない。」
福岡徹
男46歳
10 「この作品のよいところ(引用者中略)は、司馬遼太郎氏の「殉死」によって書かれている。これでは文学賞の対象にするわけには行かない。」
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他の選考委員
川口松太郎
石坂洋次郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
村上元三
今日出海
水上勉
松本清張
司馬遼太郎
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選考委員
源氏鶏太男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
異色な軍隊物 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
14 「選考委員会の空気は初めから結城昌治氏については問題がないというようであった。」「旧軍隊の最も暗い面を描いたものであるが、従来のそれをあばきたてるという手法でなく、冷静に寧ろ悲しんでいるようであった。」「文章は申し分がない。」
渡辺淳一
男36歳
11 「確実に腕を上げて来ているという点が大いに買われた。」「私にはもう一つ迫ってくるものが欲しかった。」
林青梧
男40歳
7 「意外に点が集まらなかったのは、楠正成に対する解釈がこれでは納得が出来ないということであったようだ。しかし、それとは別に私には結構面白かった。」
白石一郎
男38歳
5 「彼らしい題材をよくこなしているのだが、その文献について多く論じられた程度に終った。」
加藤薫
男36歳
8 「好きな作品であった。せんさいな描写で、遭難のときの心理を鮮やかに感じさせている。」
黒部亨
男41歳
4 「淡々と書いてあり、部分的に印象に残ったけれども、盛り上るものがなかった。」
福岡徹
男46歳
5 「すでに司馬氏の「殉死」その他がある以上、どうにもならなかった。」
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川口松太郎
石坂洋次郎
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柴田錬三郎
村上元三
今日出海
水上勉
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選考委員
柴田錬三郎男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文句なし、だが… 総行数35 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
12 「最も秀れている、と思った。しかし、作者は、すでに、評価さだまった地位にいて、今更直木賞を、という観がなくもない、と多少首をかしげたのも事実である。」
渡辺淳一
男36歳
9 「二枚のカルテが、先になるか、あとになるか、によって、その人生が大きく狂ってしまう、という思いつきが面白かった。しかし、この作家もまた、すでに、雑誌ジャーナリズムでは、大いに売れている人であった。」
林青梧
男40歳
0  
白石一郎
男38歳
0  
加藤薫
男36歳
0  
黒部亨
男41歳
0  
福岡徹
男46歳
0  
  「直木賞は、やはり、大衆小説に与えられるべき賞であり、ストーリーの奇抜さなど、最も重要視すべきか、と考える。」
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他の選考委員
川口松太郎
石坂洋次郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
村上元三
今日出海
水上勉
松本清張
司馬遼太郎
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選考委員
村上元三男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
運不運 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
12 「どの挿話も巧みな構成力で、立派な文学作品にしている。これは当然、直木賞に価すると思いながら、作者がすでに職業作家として立っている人だけに、いささか抵抗を感じた。」
渡辺淳一
男36歳
12 「結城氏に併せて授賞とわたしは推した。作者は医者だが、これから作家を兼業して行くには相当な努力が必要であろう。この作者の作品には、波があるし、そこに危険が感じられる。」
林青梧
男40歳
5 「べつに新しい解釈もないし、内容が題名にそぐわない。正成討死以後の南北朝の葛藤を書くべきであろう。」
白石一郎
男38歳
10 「近来の時代小説の中で珍しく清潔で、そして新人らしい懸命さがあった。だが資料を正確に書こうとして、それに追われすぎ、ヅーフの人間性を描き切る努力が足りなかった。」
加藤薫
男36歳
0  
黒部亨
男41歳
0  
福岡徹
男46歳
9 「読みながら、何べんも素朴な疑問をおぼえた。ここに書いてある乃木希典は、まことにつまらない人物だが、そういう個人像を死後六十年も経って、なぜこんなに筆を折って書かなくてはならないのだろうか、という疑問であった。」
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他の選考委員
川口松太郎
石坂洋次郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
今日出海
水上勉
松本清張
司馬遼太郎
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選考委員
今日出海男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二つの作品 総行数47 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
19 「見る角度や状況を異にしながら、その事実は様々な陰翳を帯びて浮き上がり、当事者の人間までがくっきり描かれ、状況の深刻さが深部にまで達し作者の眼が行き届いているのがわかる。」「未完成の感じを残していても、やはり文学だと思った。」
渡辺淳一
男36歳
12 「あり得る人生行路の両面を描いているが、そんな因果の図式を越えて、人間の、あるいは人生の明暗を語って作品を結晶させている作者の執拗な目を私は評価した。」
林青梧
男40歳
0  
白石一郎
男38歳
0  
加藤薫
男36歳
0  
黒部亨
男41歳
0  
福岡徹
男46歳
0  
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他の選考委員
川口松太郎
石坂洋次郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
村上元三
水上勉
松本清張
司馬遼太郎
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選考委員
水上勉男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
15 「全体を読了すれば、おのずから氏の文底に秘めたこころが感じられた。」「軍隊物の常道を踏まず、自己の土俵にもち来たって、重い記録を完了している。結城氏の諸作の中でも、第一等の作品と私は思う。」
渡辺淳一
男36歳
24 「今回の作品は「訪れ」「霰」の密度はない。しかし、カルテの置き順によって、人生が書き換えられてゆくという思いつきは卓抜だし、よく二軍人の人生を追跡し、文章も簡略なのがまた効を奏しているようにも思われた。」
林青梧
男40歳
13 「正成一族のことを知らなかったので興味ぶかく読んだ」「私は小説として読み、その力量を感じていた。だが、積極的に推せなかった。授賞二作に比べたせいである。」
白石一郎
男38歳
0  
加藤薫
男36歳
0  
黒部亨
男41歳
0  
福岡徹
男46歳
0  
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他の選考委員
川口松太郎
石坂洋次郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
村上元三
今日出海
松本清張
司馬遼太郎
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選考委員
松本清張男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
成熟と進行 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
18 「いまさらの感があるが、近ごろの直木賞に対する世間の関心からすると、やはり受賞はあったほうがよい。結城氏は控え目な作家で、作風も都会的な含羞をもっている。文章は練り上げられたものだが、決して自分の顔をつき出すことはない。」
渡辺淳一
男36歳
23 「これまでの氏の作品の中ではいちばん出来がよい。」「だが、委員会の席上で、私は渡辺氏のは今期を見送り、もっと長いのを期待したいと云った。」「この作品の短篇的な長所は、同時に欠点にもつながっている。」
林青梧
男40歳
6 「ベテランに似合わず生硬で、文章の大時代なのには当惑した。「新解釈」も目新しいものでなく、それほどの「史観」も感じさせなかった。」
白石一郎
男38歳
0  
加藤薫
男36歳
6 「内容がはっきりしない。最後の部分も遭難と有機的につながっていない。」
黒部亨
男41歳
0  
福岡徹
男46歳
0  
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他の選考委員
川口松太郎
石坂洋次郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
村上元三
今日出海
水上勉
司馬遼太郎
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選考委員
司馬遼太郎男46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作を推す 総行数61 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
結城昌治
男43歳
6 「候補作を読みおわって、結城昌治氏の「軍旗はためく下に」が他より数等卓れていた。」
渡辺淳一
男36歳
12 「感服した。軍人というのはときに精神医学の対象になりうる職業で、その特有の出世欲がなにかの条件で絶たれざるをえなくなるばあい、他の職業人にないヒステリー症状をおこす症例が古くからヨーロッパで観察されているそうだが、この作品を読んでそのことを思い出した。」
林青梧
男40歳
15 「この人物をあつかおうとするかぎりは、たとえ小説であれ、何世紀かの日本の思想史そのものと対決して、それを打ちたおすほどの覚悟と準備が必要で、残念ながら、この作品はそれに至っていない。」
白石一郎
男38歳
11 「ヅーフの奇怪な政治的思考法を、人間観察のゆきとどいた筆で描かれている点、もし他にすぐれた候補作がなければ受賞にあたいする作品であるかもしれない。」
加藤薫
男36歳
5 「腕達者な板前の包丁芸といったうまさを見せてもらった。が、技術のわりには、主題が小さすぎるであろう。」
黒部亨
男41歳
6 「ぬめりがあって、作品にあざやかな現実感をもたせている。大げさにいえば芸術性というものは、こういうぬめりの有無にかかわるものかもしれない。」
福岡徹
男46歳
6 「小生もこれとよく似た題材で書いた経験があるため、評価の公正が期しにくく、この作品だけは評を避けさせてもらった。」
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他の選考委員
川口松太郎
石坂洋次郎
海音寺潮五郎
源氏鶏太
柴田錬三郎
村上元三
今日出海
水上勉
松本清張
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受賞者・作品
結城昌治男43歳×各選考委員 
「軍旗はためく下に」
連作5篇 367
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川口松太郎
男70歳
34 「軍旗が神であった頃の兵たちが軍旗の下で虫けらのように死んで行ったいくつかの挿話は今更ながら戦争の痛ましさを覚えさせ、世界中の何処かでは今でもこの愚を繰り返しているのかと思い胸が痛かった。そんな実感を起させるまでに緊迫した実感に満ちて誇張しない文章が更に緊迫感を深めた。」
石坂洋次郎
男70歳
20 「一番ひかれた。」「日本は神国であるという背景を負って書かれたものではなく、無条件降伏後に書かれた作品だけに、「敵前逃亡」「司令官逃避」「上官殺害」などの題材がリアルに描かれて生彩がある。」
海音寺潮五郎
男68歳
8 「この狙いのものは戦後は一向にめずらしくない。しかし、こういう作品が必要であることは言うまでもない。」「授賞は遅すぎたといってよい。」
源氏鶏太
男58歳
14 「選考委員会の空気は初めから結城昌治氏については問題がないというようであった。」「旧軍隊の最も暗い面を描いたものであるが、従来のそれをあばきたてるという手法でなく、冷静に寧ろ悲しんでいるようであった。」「文章は申し分がない。」
柴田錬三郎
男53歳
12 「最も秀れている、と思った。しかし、作者は、すでに、評価さだまった地位にいて、今更直木賞を、という観がなくもない、と多少首をかしげたのも事実である。」
村上元三
男60歳
12 「どの挿話も巧みな構成力で、立派な文学作品にしている。これは当然、直木賞に価すると思いながら、作者がすでに職業作家として立っている人だけに、いささか抵抗を感じた。」
今日出海
男66歳
19 「見る角度や状況を異にしながら、その事実は様々な陰翳を帯びて浮き上がり、当事者の人間までがくっきり描かれ、状況の深刻さが深部にまで達し作者の眼が行き届いているのがわかる。」「未完成の感じを残していても、やはり文学だと思った。」
水上勉
男51歳
15 「全体を読了すれば、おのずから氏の文底に秘めたこころが感じられた。」「軍隊物の常道を踏まず、自己の土俵にもち来たって、重い記録を完了している。結城氏の諸作の中でも、第一等の作品と私は思う。」
松本清張
男60歳
18 「いまさらの感があるが、近ごろの直木賞に対する世間の関心からすると、やはり受賞はあったほうがよい。結城氏は控え目な作家で、作風も都会的な含羞をもっている。文章は練り上げられたものだが、決して自分の顔をつき出すことはない。」
司馬遼太郎
男46歳
6 「候補作を読みおわって、結城昌治氏の「軍旗はためく下に」が他より数等卓れていた。」
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他の候補作
渡辺淳一
「光と影」
林青梧
『南北朝の疑惑』
白石一郎
「孤島の騎士」
加藤薫
「遭難」
黒部亨
「十六夜」
福岡徹
『軍神』
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受賞者・作品
渡辺淳一男36歳×各選考委員 
「光と影」
短篇 135
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川口松太郎
男70歳
34 「構成が巧みでうまく仕組まれた作品だ。」「二枚のカルテから始まる宿命の明暗を淡々と書き分ける描写力は非凡である。影にいる男が発狂して精神病院へ送られる肝心の最後が早口の説明に終ったのは残念だった。」
石坂洋次郎
男70歳
13 「着実な筆致でよく描かれている。」
海音寺潮五郎
男68歳
16 「調べがよく行きとどいており、描写が的確であり、医学的面は作者の職業がら自信に満ちており、水際立って見事な作品になっている。これまで度々候補に上っている人だから、実力のほども信じてよい。」
源氏鶏太
男58歳
11 「確実に腕を上げて来ているという点が大いに買われた。」「私にはもう一つ迫ってくるものが欲しかった。」
柴田錬三郎
男53歳
9 「二枚のカルテが、先になるか、あとになるか、によって、その人生が大きく狂ってしまう、という思いつきが面白かった。しかし、この作家もまた、すでに、雑誌ジャーナリズムでは、大いに売れている人であった。」
村上元三
男60歳
12 「結城氏に併せて授賞とわたしは推した。作者は医者だが、これから作家を兼業して行くには相当な努力が必要であろう。この作者の作品には、波があるし、そこに危険が感じられる。」
今日出海
男66歳
12 「あり得る人生行路の両面を描いているが、そんな因果の図式を越えて、人間の、あるいは人生の明暗を語って作品を結晶させている作者の執拗な目を私は評価した。」
水上勉
男51歳
24 「今回の作品は「訪れ」「霰」の密度はない。しかし、カルテの置き順によって、人生が書き換えられてゆくという思いつきは卓抜だし、よく二軍人の人生を追跡し、文章も簡略なのがまた効を奏しているようにも思われた。」
松本清張
男60歳
23 「これまでの氏の作品の中ではいちばん出来がよい。」「だが、委員会の席上で、私は渡辺氏のは今期を見送り、もっと長いのを期待したいと云った。」「この作品の短篇的な長所は、同時に欠点にもつながっている。」
司馬遼太郎
男46歳
12 「感服した。軍人というのはときに精神医学の対象になりうる職業で、その特有の出世欲がなにかの条件で絶たれざるをえなくなるばあい、他の職業人にないヒステリー症状をおこす症例が古くからヨーロッパで観察されているそうだが、この作品を読んでそのことを思い出した。」
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他の候補作
結城昌治
「軍旗はためく下に」
林青梧
『南北朝の疑惑』
白石一郎
「孤島の騎士」
加藤薫
「遭難」
黒部亨
「十六夜」
福岡徹
『軍神』
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候補者・作品
林青梧男40歳×各選考委員 
『南北朝の疑惑』
長篇 512
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川口松太郎
男70歳
0  
石坂洋次郎
男70歳
0  
海音寺潮五郎
男68歳
18 「あらゆる点において未完成である。第一、散所というものがその学者の説そのままに抽象的で、生き生きとした具体化が行なわれていないから、少しも人を打たない。」「この作品は材料を集め、一応の構成をしてみたというまでのものである。」
源氏鶏太
男58歳
7 「意外に点が集まらなかったのは、楠正成に対する解釈がこれでは納得が出来ないということであったようだ。しかし、それとは別に私には結構面白かった。」
柴田錬三郎
男53歳
0  
村上元三
男60歳
5 「べつに新しい解釈もないし、内容が題名にそぐわない。正成討死以後の南北朝の葛藤を書くべきであろう。」
今日出海
男66歳
0  
水上勉
男51歳
13 「正成一族のことを知らなかったので興味ぶかく読んだ」「私は小説として読み、その力量を感じていた。だが、積極的に推せなかった。授賞二作に比べたせいである。」
松本清張
男60歳
6 「ベテランに似合わず生硬で、文章の大時代なのには当惑した。「新解釈」も目新しいものでなく、それほどの「史観」も感じさせなかった。」
司馬遼太郎
男46歳
15 「この人物をあつかおうとするかぎりは、たとえ小説であれ、何世紀かの日本の思想史そのものと対決して、それを打ちたおすほどの覚悟と準備が必要で、残念ながら、この作品はそれに至っていない。」
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他の候補作
結城昌治
「軍旗はためく下に」
渡辺淳一
「光と影」
白石一郎
「孤島の騎士」
加藤薫
「遭難」
黒部亨
「十六夜」
福岡徹
『軍神』
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候補者・作品
白石一郎男38歳×各選考委員 
「孤島の騎士」
短篇 131
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川口松太郎
男70歳
0  
石坂洋次郎
男70歳
0  
海音寺潮五郎
男68歳
23 「この作品には大いに感心した。通事の立場から書いたのが、先ず巧みである。」「調子の高い文学といってよい。」「(引用者注:ぼくのように)高く買っている者もあるのだから、屈せず、さらに努力してほしい。」
源氏鶏太
男58歳
5 「彼らしい題材をよくこなしているのだが、その文献について多く論じられた程度に終った。」
柴田錬三郎
男53歳
0  
村上元三
男60歳
10 「近来の時代小説の中で珍しく清潔で、そして新人らしい懸命さがあった。だが資料を正確に書こうとして、それに追われすぎ、ヅーフの人間性を描き切る努力が足りなかった。」
今日出海
男66歳
0  
水上勉
男51歳
0  
松本清張
男60歳
0  
司馬遼太郎
男46歳
11 「ヅーフの奇怪な政治的思考法を、人間観察のゆきとどいた筆で描かれている点、もし他にすぐれた候補作がなければ受賞にあたいする作品であるかもしれない。」
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他の候補作
結城昌治
「軍旗はためく下に」
渡辺淳一
「光と影」
林青梧
『南北朝の疑惑』
加藤薫
「遭難」
黒部亨
「十六夜」
福岡徹
『軍神』
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候補者・作品
加藤薫男36歳×各選考委員 
「遭難」
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川口松太郎
男70歳
0  
石坂洋次郎
男70歳
8 「私自身はほかに若者たち(女も一人混じっている)の登山を題材にした加藤薫氏の「遭難」が好きだった」
海音寺潮五郎
男68歳
4 「いい気持で読了出来たが、(引用者中略)構成に必然性がない。」
源氏鶏太
男58歳
8 「好きな作品であった。せんさいな描写で、遭難のときの心理を鮮やかに感じさせている。」
柴田錬三郎
男53歳
0  
村上元三
男60歳
0  
今日出海
男66歳
0  
水上勉
男51歳
0  
松本清張
男60歳
6 「内容がはっきりしない。最後の部分も遭難と有機的につながっていない。」
司馬遼太郎
男46歳
5 「腕達者な板前の包丁芸といったうまさを見せてもらった。が、技術のわりには、主題が小さすぎるであろう。」
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他の候補作
結城昌治
「軍旗はためく下に」
渡辺淳一
「光と影」
林青梧
『南北朝の疑惑』
白石一郎
「孤島の騎士」
黒部亨
「十六夜」
福岡徹
『軍神』
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候補者・作品
黒部亨男41歳×各選考委員 
「十六夜」
短篇 93
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川口松太郎
男70歳
0  
石坂洋次郎
男70歳
0  
海音寺潮五郎
男68歳
4 「いい気持で読了出来たが、(引用者中略)構成に必然性がない。」
源氏鶏太
男58歳
4 「淡々と書いてあり、部分的に印象に残ったけれども、盛り上るものがなかった。」
柴田錬三郎
男53歳
0  
村上元三
男60歳
0  
今日出海
男66歳
0  
水上勉
男51歳
0  
松本清張
男60歳
0  
司馬遼太郎
男46歳
6 「ぬめりがあって、作品にあざやかな現実感をもたせている。大げさにいえば芸術性というものは、こういうぬめりの有無にかかわるものかもしれない。」
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他の候補作
結城昌治
「軍旗はためく下に」
渡辺淳一
「光と影」
林青梧
『南北朝の疑惑』
白石一郎
「孤島の騎士」
加藤薫
「遭難」
福岡徹
『軍神』
  ページの先頭へ

候補者・作品
福岡徹男46歳×各選考委員 
『軍神』
長篇 563
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川口松太郎
男70歳
0  
石坂洋次郎
男70歳
0  
海音寺潮五郎
男68歳
10 「この作品のよいところ(引用者中略)は、司馬遼太郎氏の「殉死」によって書かれている。これでは文学賞の対象にするわけには行かない。」
源氏鶏太
男58歳
5 「すでに司馬氏の「殉死」その他がある以上、どうにもならなかった。」
柴田錬三郎
男53歳
0  
村上元三
男60歳
9 「読みながら、何べんも素朴な疑問をおぼえた。ここに書いてある乃木希典は、まことにつまらない人物だが、そういう個人像を死後六十年も経って、なぜこんなに筆を折って書かなくてはならないのだろうか、という疑問であった。」
今日出海
男66歳
0  
水上勉
男51歳
0  
松本清張
男60歳
0  
司馬遼太郎
男46歳
6 「小生もこれとよく似た題材で書いた経験があるため、評価の公正が期しにくく、この作品だけは評を避けさせてもらった。」
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他の候補作
結城昌治
「軍旗はためく下に」
渡辺淳一
「光と影」
林青梧
『南北朝の疑惑』
白石一郎
「孤島の騎士」
加藤薫
「遭難」
黒部亨
「十六夜」
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