長浦京（ながうらきょう）-直木賞候補作家

第164回

＝受賞者＝
西條奈加

Last Update●[R6]2024/10/04

	Nagaura Kyo
	生没年月日【注】	昭和42年/1967年～
	経歴	埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒。出版社勤務などを経て放送作家。その後、闘病生活を送り、平成23年/2011年に小説現代長編新人賞を受賞。
	受賞歴・候補歴	第6回小説現代長編新人賞（平成23年/2011年）「赤刃」第19回大藪春彦賞（平成28年/2016年度）『リボルバー・リリー』 \|候補\| 第73回日本推理作家協会賞［長編および連作短編集部門］（令和2年/2020年）『マーダーズ』 \|候補\| 第164回直木賞（令和2年/2020年下期）『アンダードッグス』 \|候補\| 第74回日本推理作家協会賞［長編及び連作短編集部門］（令和2年/2020年）『アンダードッグス』 \|候補\| 第44回吉川英治文学新人賞（令和4年/2022年度）『プリンシパル』 \|候補\| 第76回日本推理作家協会賞［長編及び連作短編集部門］（令和4年/2022年）『プリンシパル』 \|候補\| 第15回山田風太郎賞（令和6年/2024年）『１９４７』
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『赤刃(せきじん)』（平成24年/2012年1月・講談社刊）

書誌

平成27年/2015年11月・講談社／講談社文庫『赤刃』

第147回推薦候補

大衆選考会での推薦

推薦者	推薦日	推薦文
リンドル	平成24年/2012年6月30日	「活劇」の名にふさわしいスピード感。読んでいると映像が次々と浮かんでくる。野蛮で生々しいのにグロテスクじゃない。義理と人情、武士の忠義や信念ばかりが取り上げられる時代小説に、新しい風を吹き込む作品。このデビユー作でいきなり受賞して、賛否両論巻き起こせ。

第164回候補

『アンダードッグス』（令和2年/2020年8月・KADOKAWA刊）

媒体・作品情報

作品名別表記	カバー「UNDER DOGS」併記
印刷/発行年月日	発行令和2年/2020年8月19日（初版）
発行者等	発行者青柳昌行　印刷所大日本印刷株式会社　製本所本間製本株式会社
発行所	株式会社KADOKAWA（東京都）			形態	四六判　上製
装幀/装画等	装丁國枝達也　地図デザイン BELL'S GRAPHICS　Cover Photo (c)MR.Cole_Photographer / Moment / Getty Images
総ページ数	393	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	44字 ×21行 ×1段
本文ページ	5～397 （計393頁）	測定枚数	820枚

書誌

令和5年/2023年9月・KADOKAWA／角川文庫『アンダードッグス』

初出『小説野性時代』平成31年/2019年2月号～令和2年/2020年1月号「ルーザーズ1997」/単行本化にあたり加筆修正・改題

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　長浦京　53歳
選考委員		評価	行数	評言
北方謙三	73歳	●	13	「ストーリーが入り組んでいて、テンポが速い。このアップテンポは、人が死ぬことによって勢いをつけるというところがあり、読んでいて逆に私は感興を削がれた。」
宮部みゆき	60歳	―	0
林真理子	66歳	■	12	「スピード感に溢れた作品であるが、そのせわしないことといったらない。」「読者には思考する時間も必要だ。」
角田光代	53歳	■	42	「ストーリーがどこに転がっていくのか予測不可能なことが牽引力となって、よく消化しきれない描写も読み進めていくことができる。ただひとつ、ストーリーが進むにつれて、こんなにも多くの屈強な人たちが死んでいくのに、この古葉慶太という男はなぜ死なないのか、そのことが信じられなくなってくる。」「最後のうつくしい嘘には、「嘘だ……」と私はつぶやいてしまった。最後までなんとしてもだまされたかった。」
桐野夏生	69歳	■	17	「最初は面白くて夢中になって読んでいたのだが、登場人物が増えて見分けがつかなくなったあたりから息苦しくなってきた。」「とはいえ、九七年頃のアクションを考えて描写するだけでも、大変な作業だったと思うし、その作業への愉楽も充分伝わってくる。」
浅田次郎	69歳	□	16	「小説の面白さについては抜きん出ていた。そのことだけでも受賞に価するとは思ったのだが、やはり登場人物に文学的な深みが読み取れず、強く推すことはためらわれた。」
高村薫	67歳	■	16	「本作は一昔前の裏世界を２０２０年にリメイクした、言うなればユーズド感満載の世界であり、その感覚の古さには終始困惑を禁じ得なかった。」
三浦しをん	44歳	■	32	「スケールの大きなスパイ活劇で楽しく拝読したが、中盤以降、「作中で直接書かれていない場面で、実はあらかじめこういう思惑を抱いていた」と説明する展開が多くなり、そこが気になってストーリーにうまく乗りきれなかった。」
伊集院静	70歳	―	0
選評出典：『オール讀物』令和3年/2021年3・4月合併号

文量
長篇
章立て
「1」～「22」
時代設定	場所設定
1996年・97年～2018年	東京～香港～ベトナム
登場人物
●古葉慶太（元農林水産省官僚の証券マン） ●古葉瑛美（慶太の義理の娘） ●マッシモ・ジョルジアンニ（イタリア人富豪） ●クラエス・アイマーロ（マッシモの女性秘書） ●林彩華（政府機関に勤める香港人） ●ミア・リーダス（古葉チームの警護役） ●雷楚雄（皇家香港警察總部の督察） ●オルロフ（在香港ロシア総領事館政務部部長） ●ケイト・アストレイ（英国ＳＩＳ職員） ●フランク・ベロ―（合衆国通商代表部スタッフを水嶋名乗るアメリカ人）

『プリンシパル』（令和4年/2022年7月・新潮社刊）

吉川英治文学新人賞 第44回候補

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　長浦京　55歳
選考委員		評価	行数	評言
朝井まかて	63歳	■	17	「説明が必要な戦前と敗戦直後、戦後の事情を巧く挿入し、読むリズムと心地よさを乱れさせない。」「ただ、中盤以降は想像を超えるものではなく、情景も浮かびにくくなる。同程度の重さの波が手を変え品を変え押し寄せるので、読み手はそのリズムに悪く慣れてしまうのだ。」
大沢在昌	66歳	◎	8	「私は賞をさしあげたかった。虚実とりまぜた戦後の暗黒史をヒロインの一視点で描き切った筆力はみごとだった。最後、よってたかって刺されるその姿には、一視点ゆえに怪物化した己に気づかぬヒロインの悲しみがあった。」
京極夏彦	59歳	■	17	「史実と、史実を元にした虚構との作中バランスは最適とは言い難いかもしれない。時代が近いこともありモデルもほぼ特定出来てしまう。リアリティを保証するために選び取られた手法が、不要な構造を形成してしまう恰好になっている。」
辻村深月	43歳	■	13	「主人公綾女が憑りつかれている亡霊が可視化される描写には、小説としてゾクッとするような奥行きを感じた。ただ、クライマックスにあたる場面の連続で、それは多くの読者を楽しませる要素だと理解しつつも、展開に伴う描写がやや似た感情の繰り返しに見えてしまった。」
村山由佳	58歳	■	16	「文章のほとんどが描写ではなく説明であり、さらにその文中にも語句の解説が随所に挿入された結果、全編通して書き手の気配が消えてくれなかった。凄惨な場面もヒロインの苦悩も、どこか絵空事に感じられたのはそのせいだろう。」
選評出典：『小説現代』令和5年/2023年5月号