坂上弘（さかがみひろし）-芥川賞候補作家｜芥川賞のすべて・のようなもの

第33回

＝受賞者＝
遠藤周作

Last Update●[R3]2021/8/19

	Sakagami Hiroshi
	生没年月日【注】	昭和11年/1936年2月13日～令和3年/2021年8月16日
	経歴	東京府生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。大学在学中に芥川賞候補となる。卒業後、理研化学（現・リコー）入社。
	受賞歴・候補歴	\|候補\| 第33回芥川賞（昭和30年/1955年上期）「息子と恋人」第4回中央公論新人賞（昭和34年/1959年）「ある秋の出来事」 \|候補\| 第42回芥川賞（昭和34年/1959年下期）「ある秋の出来事」 \|候補\| 第62回芥川賞（昭和44年/1969年下期）「コスモスの咲く町」 \|候補\| 第3回平林たい子文学賞［小説部門］（昭和50年/1975年）「枇杷の季節」「白い道」 \|候補\| 第4回平林たい子文学賞［小説部門］（昭和51年/1976年）「優しい人々」 \|候補\| 第30回毎日出版文化賞（昭和51年/1976年）『優しい人々』 \|候補\| 第8回平林たい子文学賞［小説部門］（昭和55年/1980年）『故人』第31回芸術選奨文部大臣新人賞［文学部門］（昭和55年/1980年度）『初めの愛』 \|候補\| 第12回川端康成文学賞（昭和60年/1985年）「音の無い光景」第43回読売文学賞［小説賞］（平成3年/1991年）『優しい碇泊地』 \|候補\| 第18回川端康成文学賞（平成3年/1991年）「向かいて聞く」第42回芸術選奨文部大臣賞［文学部門］（平成3年/1991年度）『優しい碇泊地』第45回野間文芸賞（平成4年/1992年）『田園風景』第24回川端康成文学賞（平成9年/1997年）「台所」
	サブサイトリンク	文学賞の世界▼全15件同人雑誌評の記録▼全2件

第33回候補

「息子(むすこ)と恋人(こいびと)」（『三田文學』昭和30年/1955年6月号）

媒体・作品情報

誌名	「三田文学」別表記表紙ロゴ「三田文學」　目次・奥付「三田文学」
巻号	第45巻第6号別表記6月号
作品名別表記	「息子と戀人」
印刷/発行年月日	発行昭和30年/1955年6月1日
発行者等	編輯兼発行人奥野信太郎　編輯所三田文学編輯部（東京都）　印刷所株式会社五峰堂（東京都）
発行所	三田文学会（東京都）
総ページ数	80	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	29字 ×25行 ×2段
本文ページ	2～18 （計17頁）	測定枚数	56枚

書誌

昭和35年/1960年1月・中央公論社刊『ある秋の出来事』所収

昭和53年/1978年7月・中央公論社／中公文庫『ある秋の出来事』所収

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　坂上弘　19歳
選考委員		評価	行数	評言
石川達三	50歳	○	11	「第二候補（引用者中略）という心づもりで、私は委員会に出て行った。」「疑問の多い作品であるが、同時に独自なものがあり、新しいものもある。それだけに一致した推薦が得られなかったのも致し方ないことだと思う。」「今日は疑問に感じられたものが、立派に成長するか馬脚を現わすか、そういう心配と期待とがあるのだ。」
井上靖	48歳	●	3	「書き方がそれが一つの試みであるとしても、私にはごたごたして煩わしく感じられた。」
佐藤春夫	63歳	―	0
丹羽文雄	50歳	―	0
宇野浩二	63歳	●	9	「初めはちょいとしゃれた書き方がしてあって、こんなのがモダアンとでもいうのかな、とも思ったが、その次ぎの息子の父と母の事を書いたところはあまりに古風であり旧式すぎるので、私は、惘れかえった。」「全体から云って、これからは、小説についての考え方をすっかり改めて、『新規蒔き直し』で、勉強すべきであろう。」
瀧井孝作	61歳	○	6	「カンワ゛スに絵画をぶちまけたような荒っぽい、テンポの早い、無造作な軽い筆触に、何か新味があるようで、私は注目した。」「未だ十九歳だから、今後なお注目したいと思った。」
舟橋聖一	50歳	□	7	「瀧井さん一人推していたが、最近の新人小説の傾向が、超現実風に、飛躍しているのにくらべて、質実な作風だと思い、僕も半票を投じた。」「僕たちも大てい過去に一度は、こういう作品を書いているので、ちょっとしたノスタルジアを感じたのかもしれない。」
川端康成	56歳	―	0
選評出典：『芥川賞全集　第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和30年/1955年9月号）

第42回候補

「ある秋(あき)の出来事(できごと)」（『中央公論』昭和34年/1959年11月号）

媒体・作品情報

誌名	「中央公論」
巻号	第74年第16号別表記11月号
発行所	中央公論社（東京都）
装幀/装画等	カット石川滋彦
総ページ数	384	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	31字 ×25行 ×2段
本文ページ	304～331 （計28頁）	測定枚数	97枚

書誌

昭和35年/1960年1月・中央公論社刊『ある秋の出来事』所収

昭和47年/1972年☆月・河出書房新社／新鋭作家叢書『坂上弘集』所収

昭和48年/1973年3月・講談社刊『現代の文学35　古山高麗雄・清岡卓行・阿部昭・坂上弘』所収

昭和49年/1974年☆月・旺文社／旺文社文庫『ある秋の出来事　他6編』所収

昭和53年/1978年7月・中央公論社／中公文庫『ある秋の出来事』所収

平成28年/2016年1月・講談社／講談社文芸文庫『「内向の世代」初期作品アンソロジー』所収

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　坂上弘　23歳
選考委員		評価	行数	評言
石川達三	54歳	■	3	「読者の理解をもり上げて行かないで、却って理解をはぐらかすような所があり、努力の効果がうすれている。」
中村光夫	48歳	■	8	「フォークナーの「響と怒」の一部に似すぎているという噂でしたが、僕が読みくらべた感じでは、道具立てはたしかに借りたところがあっても、換骨奪胎で、完全に坂上氏の作品になっていると思われました。」「ただしそういう問題を度外視しても、この小説は高く買えません。」
佐藤春夫	67歳	―	0
瀧井孝作	65歳	■	3	「一寸よい所もあるが、中央公論新人賞になったものを、更にまた採り上げる必要はないと思った。」
川端康成	60歳	―	0
丹羽文雄	55歳	■	4	「家族というものにきびしい目を向けているのはいいのだが、その裏打がされていない。父も母もひどく概念的である。兄や妹も、近ごろの小説にその類似を多く見うける。」
井上靖	52歳	■	5	「レベルに達した作品ではあるが、積極的に推す気にはなれなかった。」「大変難しいところで仕事をしており、それだけに野心的ではあるが、よほどぴったりと焦点が合わぬ限り失敗作になりがちである。」
永井龍男	55歳	―	0
井伏鱒二	61歳	―	0
舟橋聖一	55歳	―	0
宇野浩二	68歳	■	6	「一気に息もつかさず読めるようなところがあるけれど、それは、小説がすぐれているからでなく、作者が設定した事を気負って書いているからであり、平凡な事をちょいと捻ったところもあるので、面白いように思われるだけである。」
選評出典：『芥川賞全集　第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和35年/1960年3月号）

第62回候補

「コスモスの咲(さ)く町(まち)」（『新潮』昭和44年/1969年9月号）

媒体・作品情報

誌名	「新潮」別表記表紙「THE SHINCHO^」併記
巻号	第66巻第9号別表記9月号/773号
作品名別表記	「コスモスの咲く町」
印刷/発行年月日	発行昭和44年/1969年9月1日
発行者等	編集兼発行者酒井健次郎　印刷者高橋武夫　印刷所大日本印刷株式会社（東京都）
発行所	株式会社新潮社（東京都）
総ページ数	260	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	26字 ×24行 ×2段
本文ページ	75～103 （計29頁）	測定枚数	87枚

上記のうち紫の太字はブラウザでの表示が困難な異体字（主に正字など）

書誌

昭和46年/1971年4月・新潮社刊『早春の記憶』所収

昭和53年/1978年7月・集英社／集英社文庫『早春の記憶』所収

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　坂上弘　33歳
選考委員		評価	行数	評言
三島由紀夫	45歳	―	0
石川達三	64歳	―	0
舟橋聖一	65歳	■	3	「ちょっと興味を惹き、選考中、授賞圏内に入ったこともあったが、伸び悩んだ。」
丹羽文雄	65歳	―	0
井上靖	62歳	―	0
瀧井孝作	75歳	△	6	「若夫婦の心持は十分描ききってはないが、これだけでも何かウソでないものがあった。」
大岡昇平	60歳	―	0
石川淳	70歳	―	0
永井龍男	65歳	■	3	「静かな筆致は、地方のある特殊な小都市と、社宅生活者を浮き出していた。それがなければ、この作品はうわついたものになっていたろう。」
中村光夫	58歳	―	0
川端康成	70歳	■	5	「意図、手法に特色も長所も見えるが、成功作、いやな言い方をすれば、芥川賞の当選作とするには、いずれももう一歩、二歩というところがあったようである。」
選評出典：『芥川賞全集　第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和45年/1970年3月号）